とうとう自我が芽生えた
神父スタイルのお陰で楽に図書館を探し当てることができた。
ついでに女性の方に送ってもらった。胸が凄い腕に押し付けられていたが、すいませんね、神父なので、とお断りしたらしぶしぶ離れてくれた。
女性が来てくれるのは嬉しくはあるが、ちょっとある事情でしばらくは距離を置きたいので申し訳ない。
「ここか」
平屋の建物。
平屋にしては少し天井が高い。
中に入ると、受付の人が俺を見て吃驚したようにやって来た。なんだ?
「ししししし神父様、どうされたのです!?」
なんでそんなに焦っているんだ?
神父が来たら駄目なのか?
「調べものをしに来ただけです。それとも何か許可書等が要るのでしょうか?それでしたら、その許可書を修得してから参りますので何処で修得できるのか教えてもらっても?」
そう言うと、受付の人はまた吃驚した顔をした。だが、今度は呆気にとられたような顔だ。
「どうかされました?」
「いえ、あの。…、あ、クリミアではないのですね」
「?」
クリミア?
「失礼しました。どうぞ好きにお使いください」
先程とは打って変わった様に態度が軟化した。
クリミアとはなんだ?
「ありがとうございます」
受付の人が戻っていく。
俺は内心首を傾げながら本棚へと向かった。
そう言えば視線が俺の十字架に向いていたな。とすると、宗派関係か。
「………、《賢者》」
呼び掛けてみた。
【《賢者》スキル起動しました。なんですか?】
やっぱり気のせいじゃない。
この賢者スキル、レベルアップする度に対応が人間みたいになってきている。
あれ?そう言えば《賢者》スキル今のレベルなんだ?
ウィンドウを開いてみて調べると、なんとレベル10だった。
いつの間に!?
【あの謎生物を血眼になって解析しておりましたらいつの間にかレベルが10になっておりました】
「………そうですか」
確かに時々errorの合間にレベルが上がりましたって表示が出ていた気がする。
てか《賢者》も血眼になって解析してたんだな。アイリ恐ろしい子。
「で?俺は何をすれば良いんだ?」
そもそもはこの賢者に言われて来ただけなのだが。
【魔物学、生物学、自然学、薬学、魔法学、これ関連の本を片っ端から見付けてください】
「なるほど、俺を手足として使いたいのか」
賢者は一人では動けないから。
【ご安心下さい。その苦労の果てに得られるものはありますから】
「はいはい」
言われた通りの本を片っ端から机に積んでいく。
受付の人がギョッとした顔をしているが、気付いてない振りしてどんどん積み上げる。気付けば本のタワーが五つ出来ていた。
「まさか《目星》と《鑑定(書物)》スキルが増えるとは。図書館バカにできないな」
なんに使うのかさっぱりだが。
【ご苦労様でした。それでは席に座り、本を開いて下さい】
言われた通りに座り、本を一つ取って開く。
「こうか?」
【ありがとうございます】
すると、突然目の前にウィンドウが開いた。
──【《賢者》から特殊スキル、《感覚共有》の使用許可申請がされています。許可しますか?】
特殊スキルか。
また知らないスキルが出たな。
まぁ、いいか。
許可します、と。
──【許可されました。それでは接続します】
頭が一瞬フワリと浮いたような感覚がした。
次の瞬間、手が勝手に本をバララララララと物凄い勢いで捲り始める。
え!?なになになにこわっ!!
頭の中にポンポンと新しいスキルが発生する。特にいの一で発生したスキル、《速読術》があっという間にレベル7まで跳ね上がり、次々に本に目を通すなり、次の本へと手を伸ばす。
それを見て受付の人が思わず腰をあげ、身を乗り出す格好で固まっている。
周りの人も俺の速読スピードに驚き、凝視していた。が、手は止まらない。
賢者の感覚共有ってこういうことか!!
そうしている間にも五つあったタワーは残り三つになり、二つになり、一つになり、最後の一冊になる。
パタン。
本が閉じられて我に返った。
あ、目が辛い。
思わず目を押さえる。賢者よ。瞬きはしてくれ。
【ありがとうございました。これで何とかなりそうです】
そうですか。良かったですね。
それだけ言い残して賢者は沈黙した。
隣を見ればビシッと並べられた本のタワーが五つ。
これをまた元に戻すのか。
ため息をつきつつ、新しく発生した《目星》のお陰で元の場所が分かり、すぐに全部戻すと受付の人に会釈して図書館を出た。
目薬がほしい。
帰りに薬屋に行って、あったら買おう。
「あの神父すげえ…」
その、後ろで受付の人が呟いた言葉に、図書館にいて神父の凄技をみた人たちはうんうんと頷いたのだった。
薬屋を見付けて目薬を探した。
だが、見付からなかった。
何故だ。この世界の人たちは眼精疲労にならないのか?
その代わりよくわからない薬がたくさん置かれていた。
主だったのは回復薬だが、値段がピンキリで、もう目に直接回復魔法を掛けようと思ってしまった。
というか、薬がみんな高い。
こんなもんなのか?
「何かお探しですか?」
「目薬はないか?」
「なにか呪いでも掛けられたのですか?」
「本を読みすぎてしまって、疲れ目になってしまったのです」
そう答えると、バカじゃないのかみたいな目を向けられた。
が、神父服を見て、今度は哀れみの目を向けられた。
聖書を読みすぎたんじゃないからな。
「目を暖められてはどうですか?なんなら懐熱石などがありますよ」
と、ザルに入れられた丸石を指差される。
確かカイロのような使い方をする石だったな。
「じゃあ、それ下さい」
石を目に当てると凄い勢いで疲れが抜けた。
これは便利だ。買ってよかった。
「ただいま」
「おかえりー!」
「おかえいー!!みてみて!」
アイリがジキルの元から走ってきて、俺の足にしがみつく。
「あ!まこっちゃん気を付けて!」
「?」
なにが?と言い切る前にアイリの髪が燃え上がった。
「アイリ!?」
慌てて水魔法で火を消した。
「ん?」
だが、不思議なことにアイリの髪の毛は焦げ一つ無かった。
なんだこれ。
「アイリね!ほのぉー出せるようになった!」
「自前か…」
吃驚した。そう言えばくしゃみで火を吹いていたっけか。
アイリの髪を撫でてやる。
「凄いぞアイリ。だが、部屋のなかでやったらダメだからな。火事になる」
「あーい」
誉めてもらえて嬉しかったのかウサギみたいにジャンプをしながらジキルの方へと跳んでいく。
こんだけ動けるのなら、少しはどんな力を持っているのかみた方がいいな。
「ジキル、アイリ。ちょっと門の外で力試しをしよう」




