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謎は解けない

凄い勢いで吠えられている。

ワンワンガウガウ五月蝿い。

檻に体当たりしてくるな。壊れたらどうするんだ。

あ、そうか、俺が襲われるだけか。

なんつー待合室。


「お待たせしましたー!」

「待ちました」


どんなところで客を待たせるんだ。と言ってやりたいが、悪びれる様子もなくここの店主がやって来たので言う気が失せた。

七三眼鏡の痩せ男。

サラリーマンにいそうな風貌のこの男が店主か。

ギャップが酷い。


「だいぶ時間が掛かりましたね」


部屋を見回せば、全部檻。

その中には猛獣がわんさかいて、グルグルと唸り声を上げては敵意をむき出しにしている。待たされている間頭の中にずっと圧迫面接という文字が浮かび上がっていたが、正直、慣れてしまって今は五月蝿いという感想しかない。


「いやいやいや、此処んところちょっと忙しくてですね?でー、えと聞きたいことと言うのは?」

「魔物の生態についてです。人の姿に成れる魔物を教えてください」

「ふむ、人型の魔物…ですか」


少し考える。


「ハルピュイア等の魔物寄りから、バンシーのような人に近いモノも色々いますからな」

「その中にアイトヴィラスはいますか?」

「アイトヴィラス??」


目をぱちくりとする魔物屋店主。


「場所によって姿を変える魔物をですが、人型はなかったはずです」

「場所によって姿を変えるとは、具体的には」

「ええ、外ですと尾に火が灯る大蛇。またはドラゴン。室内に入れば黒猫、もしくは鶏。面白い生き物ですよ」

「…共通点が殆どないな」


なんだその不思議生物。

だが、アイリの姿を思い返せば、その要素全て含まれている。


「出会えればラッキーというレアものです。あえて憑かれたいという方もいるほどです」

「どういうことだ?」


わざわざ魔物に憑かれたいとか。


「アイトヴィラスは別名幸運の魔物です。なんと金と運が沸き出してくるらしいのです。というのも、実は隣の家が貧しくなることから盗んでいるのではという噂があるのですが、まぁ、他人ですし、自分は金持ちになりますのでこぞって探し回っておりますよ。……まさかお客様、持ってらっしゃるので?」


目付きが変わったな。

引くか。


「いいや。とある知り合いが聞いた噂だ。魔物が人になったと。アイトヴィラスは聞き間違いだったかもしれん」

「おやまぁ、そうですか…。残念です」


しかし、アイトヴィラスは人型にならないのか。

ますます謎が深まったぞ。


懐から金を出して手渡す。


「また何か聞きに来るかもしれん。そんときはよろしく頼む」


その金を受け取り、魔物屋はとても嬉しそうな顔で頷いた。


「ええ!ええ!また聞きに来てください!ついでに何か購入もしていただけたらサービス致します!」

「考えとくよ」


戦闘に使えそうなものがいたらな。


五月蝿い店を出た。

あー、耳がキンキンする。


にしてもあの店主、見掛けによらず警戒心の凄いこと。

ポケットの中に何かの小型機械を持っていた。恐らく、俺が危害を食わせそうと思った瞬間、全部の檻が開くんだろう。


「さて、どうするか」


結局アイリの謎は解けなかった。

もしかして新種とかなのかもしれない。なにせ賢者がお手上げ状態なのだ。これはもうその都度俺が観察して対処するしかないな。


「一度戻るか」


長く目を離しているのも心配なので宿に戻った。

取り敢えずなにも騒ぎにはなってない。


鍵を開けて入る。


すると、ベッドで二人仲良く寝ていた。


「……またでかくなってる…」


この体型は八歳くらいか?

まだ半日も経ってないぞ。


途中で寄った店で買った食料を入れた袋を下ろすと、その音でジキルが目を覚ました。


「おかえり、まこっちゃぁああーぅ」


欠伸。


「なんか分かった?」

「謎が深まっただけだった」

「なにそれ笑う」


よいしょとベッドからジキルが下りてやって来る。


「アイリに異常は?」

「んー、翼が動かせるようになったくらい?飛べはしなかったけど」

「そうか」


翼は鶏部分か。なら、飛べてもそんなに長くは飛べないだろう。


「ん?今度は神父服でどこ行くの?」

「図書館だ」

「図書館!?なんで!?」

「ちょっと調べものだ」


《賢者》スキルがな。


「お留守番かぁ」

「行きたいのか?」

「んー…、いや別に」


本好きじゃないと首を横に振る。

そう言えばジキルが本読んでいるところを見たことがない。

文字が羅列しているのが嫌いなのか?


「できるだけすぐ戻ってくる。その時にアイリが起きたら少し運動しよう」

「ほんと!?じゃあ気を付けて早く帰ってきてね!」

「はいはい」


アイリの頭を撫で、ジキルに買ってきたお菓子を渡してまた町へと繰り出した。

さて、図書館は何処だろうか。


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