三人目の
しくじったな。
ジキルと二人縛られて木に繋がれている。
目の前で盗賊なのか山賊なのか知らんが、とにかく賊八人が俺達の倒したモザイク彪をどうやって売れば高く売れるかを話している。
どうやらこいつらは元々俺達の手柄を横取りする気だったようだ。
でなければあんなに用意周到なわけない。
「ちっ、なんだこの銃。弾入れるところ無いじゃないか」
「魔銃ってやつか?」
「知らん。こりゃ価値が下がるな。分解して売るか」
ガチャガチャとジキルの銃を弄り回している。
弾を入れるところがないなんて、ますます変な武器だ。
「うー…、やっちゃった…。ごめんまこっちゃん」
「なんで謝るんだ」
「だって、もっと慎重にしてればよかった…。あー、ついかっこよく決めようと思ってたわたしのバカ」
「………」
隣で唸りながら一人反省会をしているジキルを放置して、俺は少し体を動かして縄を確かめていた。
ダリルのスキルに《捕縛術》なるものを見つけていた。レベルが低くて縄脱けは出来なさそうだが、少なくとも縛り方の種類の特定とどのくらいの可動域があるのかは分かった。
あとはどうやって切り抜けるかだが。
奴等は俺がファムルスだとは気付いていないようだ。服装で神父と思っているから、十字架も首に掛けられたままである。
まさか神父服がこんな役に立つとはな。ますます手離せなくなってきたぞ。
「──という感じにしよう」
賊達はおおよそ話が纏まってきたようだ。
俺は間違いなく奴隷として売られる。ジキルはあっち系の奴隷だ。
もう奴隷紋はこりごりなので、ここはもう覚悟を決めるしかないだろう。
(本当は、もっとしっかり見極めてからやりたかったんだが…)
一度契約してしまえば、簡単に切れない。
だが、こんなところで大人しくやられっぱなしで終わると言うのは無理だった。
「…………ジキル…」
「……ふぇ?」
半泣きのジキルがこっちを向く。
「…お前、ファムルスの契約するときの詠唱は知ってるか…?」
俺の言葉に、ジキルは目をしばたたせる。
「…それって、…でもまこっちゃん。一度結んだら…」
「…ああ。どっちか死なない限りは切れない。お前はファムルスじゃないと言った。なら、俺と契約できるはずだ…」
くそ女神の情報によればファムルス同士では契約出来ないらしいからな。
だが、こいつは本当にファムルスじゃないのか怪しい。だから一種の賭けでもある。ダメだったら、諦めて次の手を考えるつもりでいた。
たが、ジキルは一度口を引き結び、口を開く。
真剣な眼差しで。
「でも…、まこっちゃんはいいの?私で…」
真っ直ぐな瞳だった。
ジキルは得体の知れない奴だが、ダリルに比べれば全然良い。
「このまま大人しく奴隷にされるのは、癪に触るだろ?」
そう笑いかければ、ジキルも納得がいったように悪戯っ子の様に笑い返した。
賊はまだこちらの意図に気付いていない。
やるなら、今だ。
ジキルが息を吸い込み、言葉を紡ぐ。
「…告げる」
ぶわりとジキルの方から魔力の帯が溢れ出す。
「海の向こう 空の彼方 星の膜 天の理を超えて
七つの王冠 49の翼を持つ光の主よ
汝の片割れを 刻を駆ける翼を授けて 今古き盟約に従い 我が元に授けたまえ」
凄い量の魔力だ。こいつ、どんな魔力量してんだ?
「契約せよ 汝は我が牙 我は汝の爪である
三つの星と一つの星 交わり 我が力と成せ」
その時、賊が気付いて声を上げた。
「おい!お前達何をしている!?」
「待て…、この言葉…。お前、まさか!!」
賊が“ある事”に気付いて驚き、怯えの表情を見せた。
何とかして詠唱を止めようと、何人かの賊がナイフを取り出し構えようとしている。
それを薄く笑いながら見た。
もう遅い。
「並び立て!!共に世界を救うものよ!!」
ジキルの魔力が流れ込む。
──【相棒契約を確認しました。
バディ・システム起動します】
覚悟しろ、お前ら。
胸元の十字架が輝き、剣へと姿を変えた。
剣へと姿を変えた余波で縄が弾け飛び、立ち上がって剣を手に取った。
体が軽い。力がみなぎる。
やっぱりこうでなくちゃ。
ジキルの縄を撫でるように切断した。
十字架の調子もいい。
「さて、と」
剣から身長ほどの細長の十字架へと変えながら、ゆっくりと賊達に向かって歩いていく。
「もう一度教えてくれないか?
俺達を、どうするって? 」
俺のその質問に足を震わせ顔色を悪くさせていた賊の一人が勇気を振り絞った。
「あ、相手は一人だ!!!一斉に掛かれー!!!!」
賊達は、恐怖を誤魔化すように大声を上げてこちらへと突っ込んでくる。
さて、やるか。
八人全員をハムを作るように、木に逆さに吊ってやった。
ははは!良い眺め。
ジキルを拘束していた恰幅のいい男なんて、ボンレスハムのようじゃないか?ほれほれ、回れ回れ。
と、十字架でつついて遊んでいるとジキルがやって来た。
「まこっちゃんって、強かったんだね!」
「…人間相手はな」
始めに急所を狙えば一発よ。
だが獣は何処が急所かわからん。
「銃は無事か?」
「うん。完全無傷」
あんだけトンカチで殴られていたのに、スゲー強度。
「?」
ジキルの視線がずっとこちらを向いてる。
「一応殺してはないぞ」
強制されてなければ殺さん。
「じゃなくて、ええと」
もじもじとしているジキルの手の甲に契約印が浮かび上がっていた。ああ。なるほど。
「すまないな、無理やり契約させたみたいな感じにな──」
「ちっがう!!!」
「──え?」
違うのか?
じゃあなんだ?と首を傾けていると、ジキルがビックリするくらいの速度で右手を差し出した。
え、なに?
ジキルを見ると、嬉しそうな顔を堪えているのか変な顔になっていた。
「私!昔の記憶ぜんぜんないし!人間相手だと攻撃力皆無なポンコツだけど!!これからよろしく!!わ、私のファムルス!!!」
なるほど。
自然と笑みが浮かんだ。
ジョンの初めて会った時の記憶が甦る。
ジキルの右手をとり、しっかりと握手を交わした。
今度こそ、守りきろう。
「ああ、よろしく。俺のバディ」
そろそろジキルのイメージイラストも描きたいところである




