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ジキル

しまった。結構な時間眠ってしまった。


慌てて飛び起きた。その時、違和感に気付く。

何故俺は布団を掛けられているんだ?

森の中で寝ていたのではなかったのか?


「うーん……」


高い声。

女だ。ダリルの呼んだ娼婦か?

いやまてなんかおかしいぞ。


「ん?」


下半身がやたら重い。

視線を下げる。


「もう…ちょっとねたい……」

「!!??」


知らない女が俺の太股を枕に寝ていた。

ほとんど反射で飛び上がるようにして寝かされていた場所から飛び退いた。誰だお前!?

そんな事を心の中で叫びながら。


「いっ…、た」


着地がうまくいかなかった。

そうだ。ダリルとの契約を切ったんだった。

そう言えば熱が出ていたよな。

しかし額を触っても平熱で、しかも源本に袈裟斬りにされた場所が綺麗に治療されていた。

契約切ったうえに魔力不足でヒールが使えなかったから、仕方なく放置していた傷だ。俺が自分で治した訳じゃない。


一体誰が。……あ。


そろりと女の様子を見る。

女、というよりも女の子の方が合っているか?

中学生程の身長のちんちくりんが、セーラー服に似た衣装を身に付けてそれはもう気持ち良さそうにスピスピと寝ている。


綺麗な金髪だ、前髪と髪先がピンクのグラデーションが掛かっているが、俺はその背中の機関銃らしきものに目を奪われた。


「…………でっか」


身長ほぼ同じじゃないのか?


ずり、と銃が滑り落ち、そのままベルトに引っ張られるままに女の子も落ちた。

ごん!となんとも痛そうな音だ。

その衝撃で女の子が目を覚まし、打った所を擦りながら起き上がった。


「うー…。いったぁ…。だれ?私を落としたの?ちょーいたい…」


自分の武器で落ちたんだがな。


「あ」


そこで、女の子と目があった。


「起きてる!おはよう!調子どう!?熱下がった?体痛くない!?」

「まてまてまてまて、一旦落ち着け」


ずいずい迫ってくる女の子を制す。そんな立て続けに質問をされても困る。というか。


「誰ですか」


そう言うと、女の子はキョトンとした。なんだその反応。


「え?私を呼んでたのに私を知らないの!?知らないで呼んでたの!?」

「意味がわからん。多分人違いだから一旦自己紹介をしてくれ頼む」

「人違いじゃないもん!!絶対に呼んでたー!!」


激おこと叫び出すほどの剣幕で詰め寄ってくる女の子を手で壁を作って押し戻していると、突然動きを止め顎に拳を付け考え込み始めた。

全ての動きが突然すぎてついていけない。今度はなんだ。


「熱で記憶飛んでるとか?」


そんなに俺の記憶は脆弱ではない。


「よし、待ってて。先生呼んでくるね」


ちょっと待てと言う前に女の子は凄い勢いで部屋を飛び出していった。

嵐かよ。


「しかし、本当に何処だここ」


シンプルな小部屋。

格子などはなく、簡素なベッドに小さな棚。

同じく小さな椅子もある。


窓からは小鳥の声と子供と思わしき笑い声。


「……」


棚の上には俺の服と魔導書。

十字架は首にぶら下がっている。


今着ているのは簡素な服だ。

まるで病院服のような。


「病院か?」


誰かが森で倒れていた俺を連れてきてくれたらしい。

良かった、あの町の誰かであったなら今頃殺されているかどうにかされていただろう。


着替えようと持ち上げる。


神父服の方だった。

綺麗に縫われている。


もうひとつの服の方が良かった。洗濯中なのだろうか。


神父服は精神力が上がるから美味しいが、如何せんこの髪との組み合わせはとても目立つ。

もうダリルのくそ野郎に強制されていないけどどうしようか、と、着るのを迷っていると、ガチャリと扉が開いた。


「おや、もう立てるのですね。おはようございます」

「………おはようございます」


扉から出てきたのはあの女の子と、神父だった。

ここは教会だったのか。














「私の名前はジキル。君は?」


女の子が自己紹介を始めた。

検査の結果、俺の熱は怪我の放置による炎症と疲労、魔力と精神力の使いすぎによるものと判明した。


「俺の事を知ってるんじゃないのか?」


さっきの仕返しとばかりにそう返す。


「知らないから名前きいてるの。てか、まさか私の事呼んでるのに知らないとか思わないじゃん」

「呼んでない」


絶対に人違いだ。


「えー」


不満そうな顔をするな。知らんものは知らん。


「私も貴方の名前を知りたいですね。なんと呼べばよろしいでしょうか?」


神父からの助け船。この人は何となく信用できそうだ。神父だし。


「男鹿誠です。男鹿と」

「わかりました」

「なんで私の時と反応違うじゃん!」


当たり前だ。

お前との初対面の評価は“頭のおかしい娘”だ。


「わかったじゃあ私はまこっちゃんって呼ぶから!!」

「止めろ」


恥ずかしいから、大人にちゃん付け本当に止めろ。


「!」


その時、ジキルの首にファムルスの印を見付けた。

もしや、こいつが例の。


「お前、砲の勇者(ファムルス)か」


確か女と言っていた。

その言葉に神父とジキルは顔を見合わせた。


「何それ」

「違います。多分」


なんで多分入れた。


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