生涯の名
主はずっと寝たきりだった。長い寿命もいつかは尽きる。その時を迎えようとしていた。・・私は、毎日身の回りの世話をしていた。声も出すのに精一杯な主は、用があるときは、私を呼び鈴で呼ぶようになっていた。
そんな時、あいつが来た。外の兵が、ドンドン倒されている、間違いない、十六夜だ。私が向かおうとした時、先に相手がドアを蹴り飛ばしてきた
ガシャーーン!!
『静かにしてもらえませんか?病人がいます。天寿を全うしようとしてるんです、お引き取り願いたい』
私は十六夜を睨み付けた。十六夜は寝ている主を見て
『忘れたのか?これは仕事だ。相手が生きてる限り、俺は標的を殺す』
ッ・・・・!怒りを堪えるのに必死だった。ここで戦えば主に危害が・・・!??主に腕を掴まれた。そして
『か・・て・・・』
あの、とても底の深い、まるで暗闇の中での月の様な威厳のある、そして誰もが恐れた主が、・・・とても弱々しい、か細い声で、私にいった。・・・・大事なことを忘れていた・・私は勝利を誓ったんだった・・・最後の最後まで主に世話になった。ここで返させてもらう
『かしこまりました。必ずや』
そういい、私は、十六夜と対峙した。十六夜が
『今回は力、温存する必要もなさそうだから、全力でいくぞ?死なないようにな?』
といい、両手にナイフを構えた
『遠慮なく、どうぞ』
ダッ・・・・・
私は常に先手しか、考えてなかった。単純に倒せば倒されない。だが、その先手を読まれて、以前はやられた。主とは受け流し、つまり防御術の訓練をしてきた。主がいうには
『おぬしは、攻撃力、反射神経、動体視力、全てに置いて抜きん出ておる、じゃが守りが弱すぎる。確かにタフじゃが、一撃で致命傷を受けるようなのが相手だと終わりじゃ、川の流れのように流すのじゃ』
・・・ふふふ、おかげさまで、今、こいつの攻撃が当たる気しませんよ。
・・・・・
・・・・・
ことごとく、相手のナイフを躱す、躱すついでに一撃ずつ入れていく、確かに、全力の一撃よりは与えるダメージは落ちるけど、確実に与える。・・・・・そして、当たらない、手を出せば、くらうという相手の精神も減らしていく。攻守一体とはこのことなのか?
はあ、はあ、はあ。
十六夜が、疲れ果ててる。腕も上がらないようだ。
『そろそろやめますか?』
『まだだ!』
十六夜が、こちらに向かってくる
では、ここで、得意の先手必勝ですね、死なないでくださいよ!
パキャン!!!・・ドン!
七割くらいの右で、十六夜を吹き飛ばした。十六夜は気を失った。私は十六夜に一礼をし、主の元へ向かった
『申し訳ございません、壁に穴が・・』
主は微笑み
『よく、やった、ほうびを、あた、える』
無理に話す、主を見るのが、辛かった
『主!いいですからしゃべらないで下さい!』
そんな私を遮り
『おぬしに、名を与える』
心配している私に気を遣ったのか、さっきより力強くいった。その心遣いに私は涙した
『そうか、そんなに名が、嬉しいか』
主は勘違いしているようだが、主の嬉しそうな顔を見て、私は黙った。すると主は手元の呼び鈴を鳴らし
『この紅魔館では、呼び鈴をならすと、美しい者が現れる・・・それは・・』
『・・・おぬしのことだ・・・紅魔館の紅。呼び鈴の鈴。美しいの美』
『性は紅。名は美鈴。というのじゃ、どうじゃ?』
ホン・メイリン・・・・私は何度も頭で復唱した・・・
『・・ありがとうございます!紅・美鈴!!1生涯、この名を使い続けると誓います!』
そういい、中国式の挨拶で礼をした。・・・・しかし、主からは、何の返事もなかった。・・すでに息を引き取っていた
そして、主が死に。次のスカーレット伯爵が誕生した。私は、こいつが嫌いだった。理由は単純、十六夜が来た時に一目散で、主を捨て逃げていたのだ。
そんな新しい主に、私は一般兵への降格を命ぜられた。それはいい、こちとら、あいつの側近なんて願い下げだ。問題はここからだった。・・一般兵になるということは、名前の剥奪、忘却が行われる、前主の死に際にもらった大事な名前、失うわけにはいかない。・・・・私は逃げ出した
それから、暫らく気儘に生きていた。腕自慢達と戦ったり、賞金首を狩ったりしてたら、帽子に書いてる、龍の文字のせいか、龍と呼ぶ奴まで、出てきた。はた迷惑な話だ
何百年か経った頃に、風の噂で、紅魔館の主が吸血鬼を統一したと聞いた。主様以外そんなことできるやついないと思ってた私は、そいつを見る為、紅魔館にいくことにした




