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誕生日はやっぱ楽しまなくちゃ・1

お久しぶりです


 五月十四日、幸の誕生日だ。

 天気は晴天。晴れ晴れとした日本晴れの中、俺たちは横浜のある日本一と言われている遊園地――――アパルタリーパークに来ていた。

電車やバスの乗り継ぎ合わせて三時間だ。バスから上がったときの空気が美味しい。

「いくらなんでもお前らまで来ることはなかったってのに」

俺は振り返りバスから降りてくる、引率者(と名乗っているだけ)の岬先生と、ストーカー二人(おっさんと佐奈)に声を掛ける。

佐奈は「だって」と声を上げる。

すらっと着こなす薄青いワンピースと、麦藁帽子。似合うんだけど………ものすごく場違いな気がする。

おっさんはどこにでもいるおっさんだな。まるで旅行者だ。胸にぶら下げているカメラがいかにも印象的だ。私服姿だと高校生やってるということを忘れただの変態に見えてくる。カメラを構えながら「ぐふふ」と笑う姿がとっても印象的だ。

岬先生は………意外にもかわいらしい私服だ。腹を大胆に見せ、スタイルの良さを強調している。しかしながらその大胆さとは裏腹に、おしとやかさを仄めかすキャップの存在が光る。

幸は言うまでもなく小学生らしくしかし男勝りな元気のよさを見せるティシャツにミニパン。一番ダサいのは言うまでも無く俺だ。

幸の誕生日に来たってのに、これじゃあいつもと同じだなと俺は頭を抱えるがまあいいかと開き直る。

「ふんじゃ、さっさと行くか」


でまあ、遊園地に一番最初に来ると何をやることになるかと言うことなんだが………

「お兄ちゃんジェットコースター行こう!」

幸は目の前に聳え立つでっけージェットコースターを指しながら言う。

まあ定番中の定番、超高位急降下ジェットコースター。俺の大嫌いなものの一つだ。

しまっただ。何やってんだ俺?何で遊園地になんて来たんだ?こうなることくらい事前に………あれ?そういえば昨日の昼間からの記憶がない?何で?どうして?

俺は恐る恐る幸のほうに目を向ける。

幸はニィと悪魔の笑みを浮かべていた。

「幸ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!???」

憚ったのか?盛ったのか!?俺の飯に何か盛ったのか!?くそー何も思い出せない!!何故か昨日の記憶だけがひどく不安定だ!!

「そうかそうか、お兄さんとやら、幸はジェットコースターに乗りたいらしいぞ」

岬先生とおっさんが俺の両腕を掴む。

「え、ちょ?何々?何でお二人は俺の腕掴んでんの!?」

俺の問いに帰ってくる「うふふ」の声が、俺の警戒心に警報を鳴らしている。

何とか逃れようともがくがぜんぜん逃げられない。

「無駄だぞ優一氏。俺の筋肉はたとえいかなる場合でも女の子を逃がさんと鍛え上げたのだ。お前なんぞがやぶれるわけがない!」

「何で?俺なんか悪いことやった?君らになんかひどいことしたっけ?」

「「俺らの出番が前回になるまで長い間なかった」」

まだ引きずってんのかよ!

「佐奈ぁ………」

俺は助け舟がほしく由一の希望を載せて、佐奈のほうを見る。

「ごめんね優一。………誕生日プレゼントがブラになるよりはよっぽど良いもの」

………そりゃあまあ、そんな正論突きつけられたら言い返せないじゃないですか。


 ガッタンゴットンとジェットコースターは一番高い位置まではゆっくりとジワリと進んでいく。

「はあ」

俺は今日も溜息を漏らす運命にあるらしい。

「何だってジェットコースターはこんなに人の心を持て遊んでくれんだよ?何この無駄な時間?死刑宣告された人はね、さっさと死にたいもんだよ?こんなに焦らされるとかさあ、俺はドエムのレッテルまで張られた覚えはねえぞ?」

「諦めてよお兄ちゃん」

幸は「にはは」と笑いながら言う。

「それより幸?昨日俺の飯に何か混ぜなかったか?昨日の記憶が全然ないんだが?」

俺が問いただすと幸は視線をそらす。

「何もやってないよ」

「だったら棒読みで言うな!!―――って、ぎゃあああああぁぁぁぁぁああぁあぁ!!!!!!?????」


「ハアハアハア、ハア……ハア……」

俺はジェットコースター乗り場のソファで死にそうな形相をしながら休んでいた。

「お兄ちゃん次行こう!」

妹はピンピンしてた。

「妹よ、高所恐怖症の俺にジェットコースター乗せてすぐ次とか、ちょっとハードル高すぎないか?」

「ん?何だ、優一氏は高いとこが苦手だったのか?」

「ああそうだよ」

「そうだったかすまんすまん。今度は危険もないしお前も楽しめるだろう」

そういっておっさんはあるアトラクションを指差す。

「あれに乗ろうではないか」

とっても大きい観覧車だった。

「人の話し聞いてた!!??」


「ブルブルプルプル」

「あははは、お兄ちゃんが、お兄ちゃんが!あははははは!!」

観覧車の中、震える俺を見て幸は思いっきり笑っていた。

乗っているのは俺と幸の二人だけ。最大四人まで乗れるのだが、他三人は一個後のやつに乗っている。

「はあ」

俺はまたまた溜息をつく。こんなに天気の良い日なんだ、彼女の一人や二人隣にいてもいいと思うぞ?

まあ、今は幸の誕生日。今日一日だけは付き合おう。明日が過ぎればこいつらは停学が明けるし、今まで掘り下げてきたポイントをもうそろそろどこかで上げておきたいものだ。

と言うかこいつらが停学明けたらまじ何しよう?せっかくの休みと言えどまた何かやったらポイントが下がること間違いないしな……いや、もう下がるほど残ってないかな?目の前にエロの因子さえなければまだ大丈夫なんだよ。俺に彼女とかいればさ、他の女に目が行かなくなって変な目で見られる心配が無くなるし、彼女とやれるし、彼女作るって良いこと尽くしだよ。早く作りてえよ。

 目の前には、かわいく微笑み続ける妹。俺の周りには、ドエス二人、高校生生活満喫中のおっさん、メンタル超弱い、天才、金髪ツインテール………なんだか再度自分の周りを振り返るとすごい状況だなと思う。

 俺はもう一度溜息をつく。

「あはは、お兄ちゃんさっきから溜息ばっかり。つまらない?」

つまらないと聞く幸はもう答えが分ってるのだろう。まあ、万遍な笑顔を向けてくれる。今日だってそうだ。昨日の記憶なんてほとんどない。気がついたらここにいてここに立っていた。

「いいや、つまらなくねえよ」

確か退学になる寸前だって、何やかんやでこんなことを考えてたきがする。そうだ、明日からはまた、右往左往する日常に戻るんだ。

「幸は楽しいか?」

幸は満面の笑みを浮かべながら「うん」と応える。


だったらしかたがない。今日一日ぐらいは犠牲になってやるか。


まだまだ続く!

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