第4話 交渉
突如シェルターに現れた侵入者。
シェルターのドアを開けたのは1人の少女だった。
黒の軍服ロリータを身に纏った銀髪の小柄な少女。ルビーのような赤い瞳は真っすぐとトオルを見据えていた。
突然の来訪者に驚きながらトオルが発した言葉は、
「あ、すみません。靴脱いでもらっていいですか」
土足厳禁を促すことだった。
あ、やってしまったとトオルは後悔する。
トオルの予想通りならこの少女は怒らせてはいけない人物。まずは様子を見るべきだった。しかしもうあとの祭りだ。
一方、少女はというと素直にブーツを脱いでいた。
「ん、これでいい?」
あれ、もしかして話通じる?
この少女の正体はおそらくダンジョンマスター、もしくはそれに
近い存在。少なくともただの一般人ということはないだろう。
web小説でもこういう時に登場するのは決まってそういう人物だ。
大抵の場合、味方になってくれるのが定番だが現状はどう転ぶかわからない。
それにしても一体どうやって入ってこれたのだろうか?シェルターのドアは確か、鍵が掛かっていたはず。
安全だと思っていたシェルターがそうでないとしたら、これは由々しき事態だ。
「ねぇ、入っていい?」
推定ダンジョンマスターと思われる少女。今はこのまま受け入れるしかない。
「どうぞどうぞ。狭いところですが入ってください」
とりあえず怒らせないように気を付けよう。
「あの、貴方のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ボクの名前はロロだ!」
「ロロ様ですか。とても素敵なお名前ですね」
「ふふっ、そうだろう」
まずは名前を聞く。少女の名はロロという。
「あの~、もしかしてですが、ダンジョンマスター様だったりしますか?」
「よくわかったな!」
「やっぱり!ただ者じゃないオーラがしたんですよ」
「ふふっ、そうかぁ?」
ヨイショしつつ正体を聞き出す。やはりロロはダンジョンマスターで合っていた。
トオルはおべっかがそこまで得意な方でないが、ロロには効果てきめんだった。
あれ?もしかしてこの子、チョロい?
その後もトオルは巧み?なヨイショで情報を聞き出していく。ロロの話によると、目が覚めたら近くに変な建物があったからここに来たとのこと。
ん?ダンジョンマスターがいる場所ってことはつまりここは最下層?現在地が判明した瞬間だった。
他にも気になることがある。ダンジョンで発生してもう1週間経つ。が、ロロは先程目覚めたという。気になるがこのことは一旦置いておこう。
話をしつつ、スキを見てステータスを確認する。するとスキルの項目に新たな説明が増えていた。
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・シェルターを設置したダンジョンのダンジョンマスターはシェルターを自由に出入りできる。
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なるほど。それでロロはシェルターに入れたって訳か。理由がわかりスッキリする。
と、そんなことより今はこの場をどう乗り切るかだ。
そういえば食事の準備してたことを思い出す。今日はレトルトカレーにしようと準備していたんだっけ。
ロロを見る。見た目感じ中学生くらいか。話した感じだとそれよりも幼い印象を受けた。
まだ出会って間もないが、だんだんとロロの扱い方がわかってきた。うん、これなら何とかなるかも。
「あの~、よかったら食事でもどうですか?」
トオルはカレーを振舞うことにした。
「何これ、おいしい!」
トオルの予想通り、カレーはロロのお気に召したようだ。流石は日本のレトルト食品。ダンジョンマスターもニッコリだ。
食事を終え、満足そうにしているロロ。トオルはここで勝負に出ることにした。
「ロロ様。実は私、訳あってここを出られないのです」
多分、ロロにお願いすればダンジョンから出ることはできるだろう。しかしトオルはここを終の棲家にすると決めていた。追い出されることだけは勘弁だ。
トオルはこのシェルターから出ることができないことを伝える。ここはダンジョン最下層、シェルターの外に出たらただの一般人のトオルなんて即死だろう。
嘘は言っていない。
「ここにおいて頂けたら、毎日おいしいものが食べられますよ」
もちろんメリットを提示するのも忘れない。おそらくだが、ダンジョンマスターはこの世界に疎いはず。
この世界の食事や娯楽を提供すればきっと食いつくだろう。スキル『ダンジョンシェルター』の力があればそれが可能だ。
「いつでも来ていいのか?」
「はい、もちろん」
「わかった、許可する!」
「ありがとうございます」
交渉は成立。ひとまず身の安全と滞在許可を得た。
それと協力者を得たのは大きい。しかもダンジョンマスターだ。
1人で悠々と暮らすことができなくなったがそれは些細な事。それにロロとは上手くやっていけそうな気がする。
こうしてトオルはダンジョンマスターの襲来というピンチを無事、乗り切った。




