第15話 迷い犬
◇ダンジョン生活2ヶ月◇
ロロのダンジョンに自衛隊がやってきてから1ヶ月後。そしてトオルがシェルター生活を始めてから2ヶ月が経過していた。
何だかあっと言う間に時間が経っていた。
あれから自衛隊の人間はトオルの目論見通り、このダンジョンをレベリングや訓練目的で利用していた。
パーティの動きも探索者のような戦い方に変化し、装備や武器もファンタジー色の強いものになっていた。
かっこいい剣や防具はこのダンジョンではドロップしないので、おそらく別のダンジョンで手に入れたものだろう。
そういえばこのダンジョンに宝箱はない。ロロに聞いてみたところ、用意できなくはないが面倒だとのこと。確かにそういう細かな作業は苦手そうだ。
無理にやらせて機嫌を損ねる位なら現状のままでいいだろう。
戦闘面では攻撃スキルや魔法を使う者が増えてきており、傍から見ても大分強くなったとわかる。が、トオルたちは焦っていなかった。
その理由は自衛隊の人間が第15階層を超えられていないからだ。
第15階層には階層ボスが存在する。
その名もタイラントベア。
3メートル以上の大きなクマの姿をしており、攻守共に優れたモンスターだ。特にその毛皮はとても固く、攻撃が通りにくい。
自衛隊の人間はタイラントベアをまだ一度も倒せていなかった。
タイラントベアは元は草原ダンジョンのダンジョンボスだ。ノワールが簡単に倒したと聞いていたので強さに不安があったのだが、ちゃんと強くて安心した。
タイラントベアが倒されるのは当分先の話になるだろう。
一方、トオルたちはというとノワールが人知れず他のダンジョンを攻略しており、その数は5つ以上にもなる。どれも人間に見つかっていない未発見のダンジョンだ。
ちなみにダンジョンコアは回収してるがまだ取り込んではいない。
この前みたいな地震が起きてしまうとまた騒ぎになってしまうからだ。それにこのダンジョンを危険視し、攻略しようという動きが出てしまうのも避けたかった。
ロロには静かに取り込むことができないか聞いてみたのだが、ロロにも詳しいことわかっていないらしい。なので今は現状維持のままだ。
幸い、このダンジョンの攻略状況は第15階層で止まっており、しばらくはそのままだろう。なので焦る必要はない。ダンジョンを拡張させるのはいざという時の手段だ。
ロロはダンジョンコア食べたがっていたが、何とか説得して我慢してもらってる。
他にはアクションカメラのおかげでようやく地上の様子を知ることができた。
ダンジョンの入口付近は物々しい感じになっており、プレハブ小屋や様々な機材が所狭しと並んでいた。人の出入りが激しく忙しない。前線基地みたいのようになっていた。
このダンジョンは国にとっての重要拠点として扱われているように見えた。
街の様子はというと至って普通。見たところダンジョンが現れる前と変わらない光景がそこにあった。
だがあくまで街の様子を見ただけの感想なので、ニュースやネットではどう扱われているかまではわからない。それに関しては仕方ないと思っている。
しかし大きな混乱はなさそうだった。
ダンジョンが民間人にも解放され、web小説のようなダンジョンが当たり前の世界になるのは当分先の話になりそうだ。
※※※
その日もいつものようにノワールのダンジョンの見回りの様子をトオルは眺めていた。
ノワールの散歩コースは下の階層でゴブリン、オークを狩り、上の階層では自衛隊の様子を確認する。
トオルはテレビでその様子を見るのが日課となっていた。
ノワールがいつものように散歩していると、
「アオン……」
ノワールの目の前に白いポメラニアンが現れる。場所は上の階層。
ダンジョンに犬?迷い犬か?
でもノワールと同じ犬種だし、ノワールの仲間だろうか?
トオルはロロに聞いてみる。すると、
「え、何それ?ボク知らない」
白いポメラニアンのことをロロは知らないと言う。
ひとまずノワールにはその白ポメをシェルターの前まで連れてきてもらうことにした。ロロに直接確認してもらうためだ。
白ポメは大人しくノワールと共にシェルター前までやってくる。
ロロはシェルターから出て早速、白ポメを確認する。
「コイツ、ボクのダンジョンのモンスターじゃない」
どうやらこの白ポメはモンスターらしいが、ロロのダンジョンから生まれた存在ではないらしい。
外からやってきたのは間違いないらしい。ではただ迷い込んだのか?はたまた何か目的があってここに来たのか。
トオルが思考を巡らせていると、
「うん、よくわからないから倒すか」
ロロは即決して白ポメを倒そうとする。止めようにもトオルはシェルターの中だ。間に合わない。
ロロが白ポメに手をかけようしたその時、
「ちょーっとお待ちくださいまし!」
白ポメから待ったの声がかかる。
その直後、白ポメは1人の女性に姿を変えた。




