幕間 魔王バルドリッセ・ガルドル
魔王バルドリッセ・ガルドルは、玉座の間にいた。
魔王の城は常に静かだ。守備の魔族達は命令がなければ動かず、幹部たちは各自の拠点で任務をこなしている。
バルドリッセは玉座に深く腰かけて目を閉じていた。魔力の流れを感じていた。バルドリッセには常に魔力が流れ込んでいた。遠くの大陸の南の方角から決して途切れない細い糸のような魔力の流れが、バルドリッセの身体の奥深くに繋がっていた。
それはあの娘に蝕鎖という禁術を施し、あの娘の無限魔力を止まることなく、枯渇することなく得ている。魔王バルドリッセ・ガルドルの魔力供給源として。
以前より力が増している。幹部たちは強化を受けてより強くなり、各地の魔族は勢力を拡大し、人間の世界は着実に削られていく。全てが順調であり計画通りだった。
そんな時、幹部の一人ザッハネル・ドルビトが勇者一行にやられ無限魔力の娘も連れて出されたと報告があった。幹部がやられたことは、魔王にとってそれほど大したことはない。娘の方も連れいかれたとしても、どこにいても変わらないのだから問題ない。更に蝕鎖とは別の術式をかけている。たとえ死んだとしても魂は魔王のもとへ来るようになっており、その魂さえあれば魔力供給は止まることはない。だからそれほど気にも留めていなかった。
それが起きたのは、バルドリッセが玉座で目を閉じていたある時のことだった。何の前触れもなく唐突なことだった。蝕鎖を通して流れ込んでいた魔力の流れが消えた。バルドリッセは目を開けた。玉座の肘掛けを無意識に掴んでいた。指の間から肘掛けの石が軋む音がした。
「……」バルドリッセは少しの間、動かなかった。魔力を感じようとし、蝕鎖の感覚を辿ろうとした。だが辿ろうとする道筋が消えている。「ありえん、一体何が起きたのだ――」




