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【完結】引き裂かれる絆~あなたの傍にいたかった~  作者: 紫乃月 聖巴


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17. 最終決戦――魔王バルドリッセ・ガルドル戦

 玉座の間は、空間が魔法的に拡張されていて、城の外観よりはるかに広い。

 天井は見えないほど高く、床は黒い石が鏡のように反射していた。


 奥には玉座があった。

 そこには魔王バルドリッセ・ガルドルが座っていた。

 その存在感は、比べ物にならないほど重かった。


「ここまで、よく来たな」


 バルドリッセが玉座に座りながら言った。


「幹部全てを倒すとはな。さすが勇者というだけのことはある。だが貴様達に我は倒せん」


 バルドリッセの紫の瞳がユウルから動いた。

 そしてローナで止まった。


「……白い仮面の者か……貴様には女神の気配を感じる。なぜだ?」


 ローナは答えなかった。

 バルドリッセが立ち上がった。


「まぁいい、纏めて貴様ら全員を葬り去ってやろう!」


 玉座の間全体が魔力で満たされた。

 息が苦しくなるほどの魔力の圧力がのしかかった。

 床が、壁が、天井が、全て魔力に染まっていく。


「さぁ! 始めよう!」


 バルドリッセが動いた。

 バルドリッセが右手を上げた。

 黒い魔力の奔流が全員に向かって放たれた。

 カルナが咄嗟に広域結界を展開した。

 結界に奔流が当たり、結界が一瞬で砕けた。

 最初の一撃は想像を絶していた。


「!!!!!!」


 全員が吹き飛ばされた。

 壁に叩きつけられながら、ローナは魔力で衝撃を殺した。

 ミゼが精霊の盾を展開して、いくらかを受け止めた。


 セクトがすぐさま立ち上がって突っ込んだ。

 大剣をバルドリッセに向けて振る。

 刃がバルドリッセの腕に当たった。


「ふん、無駄だ!」


 バルドリッセはセクトの大剣を掴んで、片手で投げ飛ばした。

 セクトは吹き飛んだ。


「セクト!」


 カルナが叫んでセクトのもとへ駆け寄った。

 ユウルがバルドリッセに斬りかかった。

 バルドリッセが手で受け止めた。

 光が弾けユウルは後退した。


「貴様達の剣は我には効かんぞ」


 とバルドリッセが言った。


「まだだ!」


 ユウルが再び構えた。

 バルドリッセが右手を広げた。

 黒い魔力の球体が生まれた。

 直径一メートル程で、それが圧縮されていくと臨界点に達した瞬間に放出された。

 衝撃波が玉座の間を揺らした。

 全員が吹き飛んだ。

 カルナが回復魔法を展開しながら叫んだ。


「このままじゃ駄目よ!」

「分かってるけどよっ!」


 セクトは肩を抑えて立ち上がった。

 ローナは立ち上がって叫んだ。


「ユウル! セクト! 魔王を引き付けてくれ!」


 ユウルとセクトは頷いた。

 ユウルが始めに動いた。

 バルドリッセに向かって走り、剣に魔力を集中させた。


「まだやるか、面白い」


 バルドリッセが右手を向けた。

 黒い魔力の弾が来たが、ユウルは躱した。

 すぐに剣を振ったがバルドリッセが手で受け止めた。


 セクトが横から突っ込んだ。

 大剣でバルドリッセの腕を狙ったが弾かれた。

 セクトが再び突っ込んだ。


「人間というものは諦めが悪いな」


 バルドリッセが今度はセクトの大剣を掴んだ。

 バルドリッセがセクトを投げた。

 セクトが宙を飛んだ。


「セクト!」


 カルナが叫んだ。

 セクトが床を転がった。

 すぐに体勢を整えて立ち上がった。


「……まだ行けるぞ!」


 マルセルが後方から魔法を撃ち続けた。

 一発一発が、バルドリッセに当たっていたが効果が見えなかった。


 ユウルとセクトが正面から攻撃を続けた。

 マルセルが魔法を撃ち続けた。

 カルナが補助魔法を重ねた。

 連続攻撃がバルドリッセの正面に集中した。

 バルドリッセが魔力を展開した。

 その間にローナとミゼがバルドリッセの後方に回り込んだ。

 カルナは魔王の攻撃を結界で受け止めていた。


 ローナはバルドリッセを見た。

 魔力の流れを読む。

 バルドリッセの魔力は、幹部たちとは次元が違う。

 全身に膨大な魔力が充満しており、どこから攻めればいいか一見では分からない。


 どんなに膨大な魔力でも流れには必ず淀みがある。

 完璧に均等な流れは存在しない。

 聞け。

 ローナは目を閉じた。

 玉座の間の轟音の中で、バルドリッセの魔力の音だけを聞いた。

 胸の中心部、やや左。

 魔力の流れが、わずかに滞っている点がある。

 見つけた。



 ユウルが一度後退した時、ローナはユウルの傍へ駆け寄り「ユウル」と小さな声で言った。

 ユウルがローナに目線を映した。


「奴の流れは読めた。私がバルドリッセの中心に弱体化を差し込む。合図したその瞬間、全魔力を剣に込めて放ってほしい」

「分かった……気をつけろよ」


 ローナはバルドリッセを向いた。

 バルドリッセが次の魔法を形成していた。

 今度は広域殲滅型だ。

 この部屋全体を魔力で満たして全員を一度に消すつもりなのか。


「セクト、全力で畳みかけてくれ!」


 セクトは走り魔王に突進した。

 ローナも走った。


「ミゼ!」

「いくよ!」


 ミゼが光の精霊を呼んだ。

 光精霊の光がローナとセクトを包み、速度が急上昇した。

 セクトがバルドリッセの肩に大剣を当てて、弾き返されないように全力で踏ん張る。

 ミゼの精霊がローナとセクトに攻撃が行かないように魔王の反撃を妨害する。


「小賢しいな」


 バルドリッセがセクトに注意を向けていたその瞬間、ローナはすでにバルドリッセの懐に飛び込んでいた。


「貴様!」


 ローナは右手をバルドリッセの胸の中心に当てた。

 淀みの場所に術式を差し込んだ。

 バルドリッセの身体が震えた。


「なんだ、これは?!」


 ローナは魔力を注いで術式を維持した。

 バルドリッセの魔力循環が乱れ始めた。

 滞り、淀み、流れが崩れていく。


 バルドリッセが反撃しようとした。

 その手がローナに向かった。

 封印に触れた。封印が、軋んだ。

 バルドリッセは顔を歪めた。


「……これは封印か? なるほどな、これが女神の気配の正体か」


 バルドリッセの力が封印を押した。

 封印にひびが入り始めた。

 凄まじい痛みだった。

 胸の内側から、引き裂かれるような痛みがあった。


「ぐっ!!」


 それでも、ローナは手を離さなかった。

 全力で追加の弱体化魔法を差し込み続けた。


「もういい離れろ、シリ!」


 ユウルは叫んだ。

 バルドリッセの手がローナの肩を掴んだ。

 封印がさらに軋んだ。

 その時、魔王は驚愕の顔をした。


「きっ、さ…まは……まさかっ貴様がぁぁぁぁーーー」

「ぐっ…! 今だ、ユウルーーー!!」


 ローナの叫びと同時に、ユウルが動いた。


 カルナは全力でユウルの攻撃力の補助魔法をかけ、ミゼは精霊の魔法でユウルの魔法威力を底上げをした。

 マルセルはユウルの剣に魔力を乗せた。

 全てを剣に乗せた一撃。

 魔法剣がユウルの剣に宿り、その光が玉座の間を照らした。


 バルドリッセが反応しようとした。

 しかし、弱体化され続けたことにより魔力循環が反撃を遅らせた。


 ユウルの魔法剣がバルドリッセの胸を貫き、眩い光を放った。


「あああぁぁぁぁぁぁっぁっ人間ごときがぁぁぁああ!!」


 バルドリッセの体が徐々に黒いものに包まれた。

 轟音が城全体を揺るがした。

 バルドリッセの身体から膨大な魔力が放出された。

 制御を失った魔力が、玉座の間に奔流として溢れ出す。


 その奔流が全員を直撃した。


 ローナは弾き飛ばされた。

 宙に浮き、魔力の奔流に飲み込まれた。


 痛みで意識が遠くなった。


 その瞬間――。


 ローナの仮面に奔流が直撃した。


 仮面に亀裂が走った。

 一本、また一本。


 そして、それは砕けた――。

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