りおの悪夢
自分の過去の夢って見るときは大抵悪夢です
真っ暗で何も見えない
私はどうなったのだろう・・・・・
雨の音が聞こえる
目を開くとそこは夫〈大地〉が昔住んでいた寮の前だ
私はOLの制服を着てヒール8cmのパンプスをカツカツ慣らし彼の部屋に行きチャイムを鳴らす
ピンポーン
・・・・・反応がない
ピンポーンピンポーンピンポーン!
ムキになって何度も鳴らす
ガチャ
遅くドアが開きしかめっ面をした大地が顔を出す
「いるならすぐに出てよ」
私は怒った表情で大地を睨む
「・・・・・出たくなかったんだよ」
「・・・・・なんで・・・・・」
ああ、このシーン。覚えている・・・・・
嫌だな・・・・・
「なんで別れようって言うの?なにがダメなの?」
「なんでもだよ。帰って」
バタン!
大地は玄関の扉を閉める
私はまだまだ話したい事があった
悔しくて、またチャイムを鳴らすけど
大地は無視をして出て来なかった
私の何がイケナイの?私の何が悪いの?
悔しい・・・・・悔しい悔しい!
帰り道、数段の階段でつまづき8cmのヒールのせいで足首を捻り、ストッキングが破れ膝を擦りむく
雨に濡れてフラれた自分が惨めで・・・・・
それでも涙は流さない
ダメだ、ここで弱気になってはダメだ!
前向きにポジティブに考えよう
なんとかなる
私達、3年間も付き合ってきたのだ
こんな簡単に終わりにならない
なんとか・・・・・
俯き地べたに座っていた私の視界に男物の手入れされた革靴が見えた
顔をあげ見上げるとスーツを着こなした私と同い年ぐらいの男性が傘を指して私を雨から守ってくれていた
「りお先輩・・・・・」
「・・・・・?あの、どなたですか?」
知らない男性が傘を持っていない左手を差し伸べ私はその手を借りて起き上がる
「イタっ!」
捻った左足首に痛みが走る
スーツの男性はそんな私をみて顔を歪め左手を強く握り引き寄せ傘を落とし両手で私を抱き締めた
雨で冷えきった私の身体は抱き締めた彼の暖かい体温を感じる
「泣いてもいいから。俺が・・・・・りお先輩の側にいるから」
私は驚き固まった
泣いてもいい
本当は泣きたい
スーツの男性が両手で私の頬を包み顔をあげさせ視線を合わせる
その優しい瞳に我慢していた涙が溢れ出す
「っ・・・・・私何がイケナイの?」
3年間、付き合って大地好みの女の子になろうと常に努力してきた
それなのに、私は簡単にフラれたのだ
もう、これ以上何を頑張ったらいいの?
私の溢れる涙を親指で拭い私の頬にキスを落とす
「俺ならこんな想いさせない・・・・・」
そして、唇にキスをする
私は何も考えれなかった
名前も知らない人にキスされているのに、受け入れる事しか出来なかった
それ程私の心は弱りきっていたのだ
私はお姫様抱っこをされ男の人の車に乗り、彼の部屋へと行った
傷の手当てするからと膝の傷に消毒して左足首には湿布を貼って包帯で巻いてもらった
「ありがとう・・・・・」
「テルって呼んで」
テルの熱い視線に私は頬を染めた
「テル・・・・・」
彼は嬉しそうに微笑み、包帯を巻いた私の足首を持ち
チュと口づけを落とす
そのひとつひとつの行為に私は恥ずかしくなり、右手甲で顔を隠す
「りお先輩、俺は貴方の全てが欲しい」
テルの手は足首から徐々に上に上がり、私をベッドに押し倒した
私の上に覆いかぶさり、私の目をジッと見つめるテル
「俺なら、りお先輩の全てを受け止められる。どんな我儘だって聞いてあげる・・・・・」
だから・・・・・
私の首元に顔を埋めるテル
私も子供じゃない、この先にある事をわかっている
私の全てを受け止め、どんな我儘も聞いてくれる
大地はまったく違った
私のダメな所を沢山ダメ出しをして、我儘だって聞いてくれない
独占欲が強く、私の女同士の飲み会や会社の行事だって嫌がるし
クリスマスだのバレンタインだのイベント事にも興味がない
全然、私の思い通りにならない人
でも、それでも一緒にいて安心できて
私の知らない新しい事を沢山教えてくれて
色んな場所にドライブ行って
自分の意思を持っている、尊敬出来る人
あの、優しい笑顔が私の中に蘇る
「あぁ、そうだった。半年後に大地から電話があるの」
テルの動きが止まる
「ふふ、笑えるでしょ?半年も連絡とってなくて私も大地の事忘れかけてたの、そんなある日普通に『今、何してるの?今度の土曜日空いてる?』だって。け!ふざけるなってその時、思ったの」
テルが起き上がり悲しい瞳をして私を見つめる
私は瞳に涙を溜めたまま、そんなテルをみて苦笑いをした
「何にも予定なくて、会って話すだけならって思って会ったら、あの思い通りにならない大地がニッコリ微笑みかけて『また付き合って下さい』だって。その時私はまたフラれるのが嫌で中途半端な気持ちじゃ無理って言ったの。そうしたら自分の親に紹介したいって」
私の結婚秘話を黙って聞いているテル
「結局、私は大地の笑顔が好きなのよ」
「・・・・・」
テルの暖かい手が私の頬をなぞる
「これ以上、うちの奥さんに手を出すな・・・・・」
聞き覚えのある怒りに震えた声がテルの後ろから聞こえる
そこには夫大地と肩に紫色の瞳の白猫がいた
『りお、助けに来ました』
白猫はスナレティムだとすぐに解った
テルは私の上から起き上がり、夫大地を見る
そして少し笑った
「いいなーふたりが羨ましい。なんで俺の周りにはこういう人いないんだろう?」
ベットを降りてゆっくりと歩き出す
さっきまでテルの部屋だった周りの景色が一変して黒い空間へと変わる
テルの目の前に赤い瞳の黒猫カルロイヤがいた
「カルロイヤ、ごめんダメだったみたい」
『まぁ期待してなかったさ。スナレティムいい加減諦めたらどうだ?』
黒猫カルロイヤはテルの肩に飛び乗り夫大地の肩に乗った白猫スナレティムを見る
『カルロイヤこそ、いい加減辞めるんだ!夢の世界は俺達番人では支配出来ない!』
『いや、出来る。りおさえモノに出来れば、全てを支配出来る。スナレティム?わかっているのだろう?村中りおは夢の神だと・・・・・』
へ?カルロイヤの言葉に耳を疑った
以前スナレティムに聞いた時はたまたま同じ名前だっただけど言ってたのに
私はスナレティムを見る
白猫スナレティムは瞳を細め下を向いた
『違う・・・・・りおは人間です!夢の神ではない!』
ドクン・・・・・
なんだろう?身体の中で熱く鼓動する心臓とは別の物を感じた
自分の身体の中に何が別の者がいる
白猫スナレティムが私を見て紫色の猫目を見開く
『な、何故です・・・・・リオ様・・・・・どうして、りおを・・・・・』
「お、おい?りお!大丈夫か?」
夫大地が駆け寄る
ドクン・・・・・ドクン・・・・・
私は自分の中にある違う自分に混乱した
私の存在が消されていく・・・・・
夫大地が私を掴もうとすると私の身体が光になり、渦を巻いて小さな虹色の光玉になった
カルロイヤはニヤリと笑い虹色の光玉に飛びかかり口を開け食べてしまった
『な、なんて事を・・・・・』
スナレティムの瞳は絶望に満ちた
「り、りお・・・・・?」
夫大地は何が起こっているのか理解出来ず呆然とする
虹色の光玉を食べたカルロイヤの体からどす黒いオーラが流れでる
黒猫だった姿はだんだんと大きくなり、長い髪の人型に変化する
瞳は血のように赤黒く淀み、白々な肌と黒い髪が不気味さを出す
『くくくくく・・・・・あははははは!!どうだ?スナレティム!俺が夢の神だ!』
カルロイヤが手の平を掲げると色々な色の球体が現れグルグルと宙を舞う
テルをチラッとみて、球体の一つがテルの中に入いるとテルは意識を失くし倒れた
『手伝ってくれたお礼だ。いい悪夢を見るがいい』
そういうと、今度は夫大地とスナレティムを見る
ニヤッと笑い
『お前たちもな』
『「!!」』
球体が夫大地とスナレティムの中に入ると二人は意識を失くしその場に倒れた
夢の世界がカルロイヤに奪われたのだ
うまく世界観出せてるでしょうか?ああー失恋って切ないですよね・・・・




