表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/13

「乙女ゲーム的世界に喚ばれた弟を迎えに行きます、二回目」

いよいよ最終回となりました。

兄の視点です。

 透が、行方不明になった。


 連絡も無く、急に欠勤したとの話を聞いて、携帯に連絡を入れても通じない。あぁ、これはまさかと両親共々顔を見合せた。

 とりあえず、弟の職場には、ノロで前後不覚になった弟を病院に放り込んだので、暫く休むとでっち上げた。


 俺の職場でも、女子生徒が一人帰宅していないと大騒ぎだ。

 このパターンは、十うん年前と同じ……透の奴、また同じ所に喚ばれたのか。溜め息が出た。

 あの『世界』は嫌いだ。

 前回還って来た後、透はかなり精神的に参っちまった。

 失恋の痛み、なんて可愛いもんが原因じゃない。透を追い詰めたのは、必死に行方不明の娘を捜す、親の姿を見たからだった。

 学校にも何度も訪れて、何人もの生徒に、手掛かりが無いか聞いて回っていた。駅の近くで手製のビラを配って、情報提供を呼び掛けている姿も見たことがある。

 それを見る度、透は後悔した。どんなことをしてでも、連れて帰って来るべきだったと。

 透だって、自分で何でも出来ると思っている訳じゃねぇんだろうけどさ、後悔ってのは、そう割り切れるもんでもなし。

 それでも、時間の経過と共に、透もなんとかそんな感情と折り合いを付けていったんだ。

 それなのに、まさかの、もう一回。


 よし、潰そう。

 そう思った瞬間だった。


『向こう』について様子を見れば、案の定透の他に、行方不明の女子生徒もいた。

 透は今回も、カラフルさんに囲まれている。始めっから全部を敵認定しなくてもいーだろーに。

 利用できるものはしないと損だぞ。

 利害関係が一致すれば、WinーWinだろうに。なぁ?


 とりあえず、どれくらい掛かるか見当がつかない。

 弟の職場には、追加でインフルを貰ったということにしておいた。

 かなり心配していたぞ。良い職場で良かったな、透。


 ギルと知り合って、色々調べた結果、予想以上にこの『世界』は酷かった。まぁ、悪いのは『世界』じゃないな。潰しとくべきは、『王家』と『神殿』この『世界』のツートップだ。

 ギルも、推測通りに『月』の魔力で『混沌の渦』が消滅する事を知ると、呆れ返っていたようだった。俺一人で行く事が出来るのは「最初の」初心者向けチュートリアルみたいな序盤のダンジョンだけだから、残りは透と合流してから消しとこう。

 こんなの残しといたら、透が又、喚ばれてしまいそうだからな。


 ギルと相談して、『混沌の渦』は、一、二個残しとく事になった。

 こん位じゃ『世界』に与える影響は少ないだろうって事と、『魔のモノ』を絶やさない為だった。別に俺もこの『世界』そのものとそこに住む人間全てを滅ぼしたい訳でもない。資源全てが枯渇すれば最初に路頭に迷うのは、何の非もない一般庶民だ。それは俺の本意でもない。

『魔のモノ』自体は、この『世界』の人間で対処すれば、良い話だ。

 元々『守護者』たちはこの『世界』の人間だ。『魔のモノ』に対抗する力が、この『世界』の人間に無いわけじゃない。

 何百年も遺跡を封鎖して、強力な個体が成長するのを待たずに、こまめにガス抜きしてやれば、大事にはならないはずだ。


 ギルから急の連絡を受けて

 死にかけてた透を拾って

『混沌の渦』を消して回り

『神殿』の奇跡を永久に失なわせてやって

『王家』の力の象徴でもある城を

 この『世界』のものではない力でへし折った


 後はこの『世界』の人間の仕事だ。

 神様の加護の証と奇跡の象徴を失い、この『世界』の何処にもない力で攻撃された……神罰が下った奴等を、民衆がどうするか、なんて俺には関係ない。


知識を司るこの『世界』の頭脳集団と、商工ギルドという『世界』の産業と流通を支える者たちが、政治家でもある古き貴い家柄の者と共に、『王家』と『神殿』に見切りをつけるのだ。

この後どうなるかなんて。……『余所の世界』のもんがどうこうしなくても上手くいくに決まっている。下手な奇跡なんてもんは、端からなければ良いんだ。充分になんとか出来る力もあいつらにはあるんだからな。元々さ。



 最近一族が造った不思議空間を経由して、元の『世界』に還って来た。

 電話を掛けて、親戚の友人という、微妙な関係の人物を呼び出す。

 警察に勤務するその人に、室町を委ねる為だった。親御さんは、娘を心配して、とうに捜索願いを出している。適当に辻褄合わせをしてもらわなきゃならん。


 さぁて、帰ろ帰ろ。

 この不思議空間を使えば、『友人』と逢うことだって出来ない事じゃない。どう『世界』が転がったか、気になったら聞きに行こう。

 勝手に喚ばれるのと違って、こちらから逢いに行く……こちらの意思が強く介在すれば、時間の流れに大差も生まれないからな。


 歳の離れた義妹が出来るかは、それこそ俺の知った事じゃないぞ?

 ただ、俺と間違われるのは、社会的にまずいからな。その辺りは自重しろ。

 教師と生徒じゃないんだし、節度を守れば良いんじゃねぇの?

 なあ。



最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございます。拙いながらの、初めての連載形式の作品となりましたが、少しなりとも楽しんで頂けたなら、当方何よりでございます。


お気に入り登録して下さった皆さま、感想を下さった皆さま。この場をお借りして謝意を述べたいと存じます。本当にありがとうございます。皆さまの反響が当方の大きな励みとなっております。


それではまたお目にかかれる時まで

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ