Ⅶ
彩歌が言う「あの時」というのは、僕が彩歌と付き合っていた頃の事だそうだ。その時、二人は口げんかをした。
原因は、待ち合わせ場所に、時間通りに来なかった僕。そのことを僕が素直に謝らなかったらしい。
彩歌が様子を窺うと、なぜか僕は気が立っていてイライラしている感じだったそうな。
それを見て彩歌が注意をしたのだ。こんな時くらい楽しそうにしてよ、と。
それに対して僕が、いわゆる逆ギレをして口論になった。
その際、「碧人と付き合えばこんなことにはならなかった!」というわけのわからない僕の一言が放たれた。
それを機にその日は結局お開きになってしまった。
なんだこれ、完全に僕が悪いやん。
「つか、えーと、この『精神交換事件』は……その~……」
「アニキと碧人君が付き合わなきゃ終わんないな」
「口に出すんじゃない! 妹ぉ!」
出来れば明らかにしたくなかった事実。いや、明らかにしなくてはいけなかったのだけれども。
麻衣の一言に彩歌が頷いたせいで、それは確定事項となった。
ウソだろーが……
とはいえ、この事件は早々に終わらせなくてはいけない理由がある。
彩歌はまだ気付いていないみたいなのだが、このままでは危険なのだ。
今回特別なのは、通常よりも多くの反動を受けてしまうということだけじゃない。
〈言霊〉がエラーしているため、もしかしたら僕が常時霊視できる体質になってしまい、それに伴い彩歌も常に「ミスト」を受けることになるかもしれない。
そうなる、という確証はないが、少しでも可能性があるなら、それは避けなければならない。
「それで、あの時はなんで怒ってたの?」
「さあ?」
とりあえず、わからないと答えておく。
いや、一応心当たりはあるのだが……
「ん、どうした? あたしの顔になんかついてるか?」
……別に言わなくていいだろう。これこそが彩歌には関わらないでいてほしいことなのだ。
ちょっとした過去の話なのだが――
「うーん。私と一緒の時に起きたことじゃないだろうから怒った発端の記憶くらいは残ってるはずなんだけどな~……ったく、ちゃんと覚えときなさいよ! ただでさえその後日が私のいなくなった日なんだから印象強いでしょうが」
「す……すまん」
って、あなたが消したんでしょうが。
「そういえば、さっきの言動からして、私がチカラを使った理由はもっと別の事だと思っていたのよね。なんだったの?」
「っちいぃぃぃぃ!」
「え、そんな大袈裟に舌打ちする人リアルで初めて見た」
さっき関わるなって言ったのをもう忘れて聞いてきやがった。バカかこいつは。僕の気持ちも少しは汲めっての! アホ! ボケ! タコ! マヌケ!」
「アニキ、途中から漏れてたぞ」
「彩歌さん、ちょっと涙目です……」
おっと、悪い悪い。つい本音が――
♪~
ん? メール?
送り主は……碧人だ。
『件名:解決方法聞いてきました』




