Ⅳ
「はぁ~。新太君がバカだから気が抜けちゃいました~」
と、ここで碧人が普段通りの口調に戻る。
「とにかく今は、電話して、霊視をしないといいのか?」
それをすることによって彩歌が苦しむんなら、しない方がいいだろう。というか、絶対にしたくない。
「それはどうなんでしょうね~。さっきも言ったように、〈言霊〉は不安定ですからね~。どう転ぶかもわからない状態の今、このままにしておくのは些か不安でもありますね~」
そうか。ミストは僕の霊視に反応して発生している。もしも僕が碧人のように、常時霊視状態になったら? そう、ミストも同じように常時発生することになる。
「――!? それじゃあこんなところで話なんてしてる場合じゃないじゃないか! 早く彩歌に言って、そんなチカラを使うの止めさせないと……!」
……それが出来たら……こんなことには……
その言葉の主は、彩歌の家に駆け戻る僕の後姿をただじっと見つめて、動き出そうとはしなかった。
「――彩歌っ!」
再び彩歌の部屋まで来た。
別れたときと同じようにベッドの上で横になっている彼女。さすがに無理矢理起こすのは気が進まない。おとなしく起きるのを待つのが最善か……
「ん?」
なんか、枕元に見慣れたものがあるような気がするのだが…………いや、気がするどころじゃない。
確定。確定で、それはいた。
「ま……麻衣……?」
その存在に気が付いてから、いつも住人がいるはずの胸ポケットを覗く。しかしそこには誰もいなくて、代わりに手紙が入っていた。
「いや、これさすがに小さすぎんだろこれ……えっと……」
彩歌ちゃん家泊まっていきます。
あ、そうだったのか。
……ここまで戻ってきて、麻衣に気付かなかったら、完璧に僕発狂ルート進んでたぞ。
っと、よく見たら続きが書かれていた。……さらに小さい文字で。
「……これはもう……虫眼鏡必要だわ……」
ポケットから虫眼鏡を取り出す。
なんで持っているのか、とかいう無粋な質問は受け付けてません。
PS.あたし、彩歌ちゃんと結婚します。
な、なんだってー(棒)。
……ところで、それは百合展開なの? 特殊過ぎて需要あるの? ありました。僕に。ただ、決して僕はシスコンじゃ(以下略)。
「……ん……んん?」
数分後、麻衣が起きる。
「あ、あれ、アニキ……?」
「よう、お目覚めかい?」
「……ちょっと手ぇ出して。」
「……?」
言われるがままに差し出してみる。なんだ? プレゼントか?
「ガブリ」
ほおおおおおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁああああーーーーーーーーーーーーー!!
「わるい。なんか腹立った」
「なんだよっ! 目覚め良くなるように紅茶で一杯やってたのに」
「うん、おかしいよな? あたしが飲むもんだよ、それ。ついでにセリフの言い方もウザかったです」
そんなことなんでしょうが。すっごくさわやか~に挨拶してただろ。
「え? なに。もう一回噛まれたいのかな?」
「すいませんでしたもうしません」
すぐさま土下座する。
「う~ん。これはまたアイス買ってもらうしかないな」
……まだ食うのかこの子は。ホントに太るよ?
声に出すと噛まれそうだから言わないけど。
「……なんか今、失礼なこと考えなかった?」
なんでこんな時だけ察しがいいんだよ。
幸い噛みつきはされはしないものの、変な汗をかいてしまった。




