第六話 二人目の聖女
姿をあらわした女の子は背中に大きな剣を背負っていた。
剣は彼女に不相応なほど大きく、切っ先が地面についてしまいそうな程だった。
女の子は道を塞ぐように僕たちの前に立ちはだかった。
僕は相手が誰なのかわからず警戒したが、スラナは女の子を見て顔を輝かせた。
「コニシちゃん! 来てくれたんだね! ありがとう!」
コニシと呼ばれた女の子は「フッ」と鼻で笑うと「当り前だろ。スラナの勇者様召喚の儀式に私が駆けつけないわけがないではないか」と鼻の下を人差し指で擦った。
「レイ、紹介します。こちらはカトリーヌ村の隣にあるキャロライン村の聖女コニシちゃんです」
そう説明された僕はコニシに軽く会釈をした。
するとコニシも会釈を返してくれたけど、すぐに僕から視線を逸らし、またスラナに向き直った。
「それよりスラナ。どうやら勇者様の召喚に成功したようだな。すごいじゃないか。おめでとう。さあ、それでは早くスラナの勇者様を見せておくれよ」
コニシはスラナが勇者召喚の儀式に成功したことを本当に喜んでいるようだった。
僕は会釈を交わした際に反応が薄かったので、コニシは冷たい人なのかと思ったが、スラナの成功を我が事のように喜ぶ姿に、コニシは悪い人ではなく、またスラナととても仲良しなんだなと思った。
「うん! もちろんだよ、コニシちゃん! どうぞご覧ください! こちらが私が召喚した勇者レイ様です!」
スラナは僕をコニシに紹介したが、コニシは辺りをキョロキョロと見回した。
「勇者レイ様か。強そうなお名前だな。それでその勇者レイ様はどこにおられるんだ?」
コニシは尚も周囲を見渡したり、スラナの背後を覗いたりと、早く勇者の姿を見たいといった様子だった。
「だからコニシちゃん、こちらが勇者レイ様だよ」
スラナはもう一度、コニシに僕を指し示した。
すると辺りをキョロキョロと探っていたコニシの動きがピタリと止まった。
「……まさかとは思うが、スラナを背負っているこの男が勇者様だと言っているのか?」
コニシは顔を曇らせたが、スラナは屈託のない笑顔で「そうだよ!」と胸を張った。
「いやいや。此奴は勇者様ではなかろう。あまりにみすぼらし過ぎる。きっと勇者様のお付きの従者か何かなのであろう。スラナ、そんな風にじらさず、早く勇者様に合わせてくれ」
コニシは尚も僕を勇者と認めなかったが、それはさもありなんと僕は納得した。
何故なら、確かに今の僕の姿はみすぼらしかったからだ。
今の僕は、短パンと、長年愛用したクタクタのTシャツという、いかにも人目を気にしない「自分だけの室内着」という姿だった。
コニシがこんなみすぼらしい男が勇者でないと思うのは当然だった
だが、コニシは、尚もスラナに「この方こそ勇者レイ様だよ!」と言われ、しぶしぶ僕に向き直った。
「ならば、本人に聞いてみよう。おい、スラナを背負っているそこの男。お前はスラナが言うように勇者様なのか?」
そう問われた僕は一瞬だけ返答に詰まった。
僕は勇者ではない。僕が勇者であるはずなんて絶対にないからだ。
でもさっき、スラナから【加護】を与えられた時に僕の手が光った。
それは僕が勇者だからだとスラナは言った。
だから僕はスラナの言う通り、自分では気付いていないけど本当は勇者なのかもしれない───。
そうした考えが僕の頭をよぎり、即座に返答ができなかったのだ。
でも僕は自分が勇者かと問われたら、返す答えは決まっていた。
「いいえ、違います。僕は勇者ではありません」
一呼吸遅れたが、やはり僕は自分が勇者ではないときっぱりと断言した。
何故なら、僕が勇者であるはずなんて絶対にないからだ。
あまりにラフ(?)な格好だったので、コニシに勇者だと思ってもらえませんでした(笑
でもレイは、どうしてこんなに頑なに「自分は勇者ではない」と思うのでしょうか?
どうかどうかその「謎」の真相をお楽しみにしていただけますと幸いです。
ご期待にそえるよう頑張ります୧(˃◡˂)୨




