第二十七話 カトリーヌ村の聖女がなんとか阻止しようとする
「あ、あの待ってください、おじ様。実は勇者レイ様は高い所が苦手で、そのようなお部屋ではきっとくつろいでいただくことができません」
慌てたスラナがなんとか僕とコニシが同室で一晩過ごすことを阻止しようと、アズマ男爵に申し立てる。
因みに、僕は本当に高い所が苦手なので、スラナの言っていることは嘘ではなかった。
「おお、スラナ。なんと勇者様はそうだったのか。教えてくれてありがとう。では勇者様と我が娘コニシが過ごす部屋は、地下の最深部のスイートルームにしよう。我が城の地下は岩盤をくり抜いて作られていて、地熱の影響で全体が温かく、ポカポカとした岩盤浴が楽しめるようになっているのだ。傍らには同じく地熱で暖められた温泉も湧き出ていて、源泉かけ流しの大浴場もある。もう服など脱ぎ捨て、ずっと裸で過ごしても良いような部屋で───「おじ様! 勇者様は暑い所も苦手で、それなら高い尖塔の上の部屋の方がまだマシでごさいます!」
アズマ男爵の代案に、涙目になったスラナは、大慌てでアズマ男爵の提案を遮った。
その結果、僕とコニシはアズマ男爵のお城で一番高い尖塔の最上階に備えられた、最上級のお客様をお通しするスイートルームに泊ることとなった。
スラナはガクガクと震え、プルプルしながら腕を僕とコニシに伸ばしたが「大丈夫だよ、スラナ。二人と離れ離れになって一人になることを心細く思っているようだけど、安心しなさい。スラナは我が妻・聖女と一緒に寝るんだ。子どもの頃はずっとそうしていただろう? おお、それにそうだ。スラナのお気に入りだった絵本も読み聞かせしてあげよう。大丈夫。スラナが眠るまで、私も妻もずっと見ていてあげるから」とアズマ男爵に制され、僕とコニシから引き離された。
「お、おじ様、私が震えているのはそういう理由ではありません……。それに私はもう子どもではありませんので絵本の読み聞かせというのは……」
スラナは訴えたが、その声はアズマ男爵には届かなかった。
いよいよスラナは泣きだしそうになったが、そこでついにコニシのお母さんである聖女が動いた。
コニシのお母さんは優しくスラナを抱きしめる。
「大丈夫ですよ、スラナ。コニシを信じてちょうだい」
お母さんがそう言ってコニシに目配せすると、コニシも緊張で震え、心が折れそうになっていたが、辛うじて意を決し、ギュッと口を結んで力強く頷いた。
「ほ、本当? コニシちゃん、本当に大丈夫?」
スラナの問い掛けに、コニシは「ま、まかせろ、スラナ。わ、私は、レ、レイを大切にする」と答えた。
その返答は聞く人が聞いたら、意図とは違う勘違いをするようだった。アズマ男爵がもろ手をあげて大喜びしたのだ。
「アズマ男爵に絶対に勘違いされている……」
そう僕は確信し、スラナもますます不安が高まったが───。
「スラナ、大丈夫だから、今日はおばさんと一緒に寝ましょう。それにあなたに話があるの」
「え───?」
「絵本の読み聞かせもいいけど、おばさんの話にも付き合って。とても大切なお話だから」
スラナはそう言われると、申し出を断れないようだった。
コニシのお母さんがスラナに話したい「大切なこと」も気になるが、恐らく、それ以上にコニシから聞かされた「余命いくばくもない」という事情があったからだろう。
そしてついに僕とコニシは尖塔に足を踏み入れ、僕たちの後ろで重い鉄格子がガチャンと閉じられる。
スラナも後ろ髪を引かれながらもアズマ男爵とコニシのお母さんである聖女に手を繋がれ、半ば引きずられるように僕たちから引き離される。
こうして僕たちがアズマ男爵の城で過ごす夜は更けていった。
デュフフフフ……(←悪い笑み
いや~、レイ殿はこうしてコニシちゃんと二人っきりでスイートルームにお泊りですな~。デュフ、デュフフフフフフフ。
スィートなスイートルーム(←マイナス百点)で若い男女が二人っきり……。
もちろん「何も起こらない」わけなどなく「大変なこと」が発生し、周囲の人々は大いに勘違いをして「あらあら、まあまあ(ハート)」となります(デュフフフフ
皆さま、どうかどうかお楽しみにしていただけますと幸いです(デュフフフフ
といいつつ、ちょっとラブコメ展開になっておりますが、実はシリアス展開に振り戻ります(え?
「大変なこと」は本当に「大変なこと」なんです~!
୧(˃◡˂)୨




