第二十四話 キャロライン村に到着
キャロライン村はカトリーヌ村と同じく牧歌的な農村といった感じだったが、一点だけ違ったのは、村のそばの高台に立派な城がそびえていることだった。
城の城壁は厚く、尖塔は空を突き刺す程に高く、威圧的だったが、しかしとても美しい城でもあった。
「す、すごいね。どうしてここにこんなに立派なお城があるのか不思議に思えるほどだよ」
僕は素直にそう思った。
「ここはハルバードウェールズ王国の国境の最前線だ。父は国境を堅守するため、ここに城を築き、睨みを利かせている。といっても、国境の先に外敵がいるわけではないがな」
僕たちが城に近づくと大きな城門が大きな音を立てて開かれた。
そして現れたのは白馬にまたがり、スカイブルーと金の装飾で彩られた鎧に、真紅のビロードマントをなびかせた剣聖・アズマ男爵(=コニシの父)だった。
白馬にはもう一人、アズマ男爵に抱きかかえられるように聖女が伴われていた。
聖女を遠目にしたとき、僕は「女の子かな?」と思ったが、それは誤りで、この聖女こそコニシの母親だった。
待ち切れないといった様子で白馬で駆け寄ってきたアズマ男爵は、僕の前で下馬をすると、膝をついて頭を垂れた。
夫のその姿に、妻である聖女も倣う。
僕は二人にかしこまられて恐縮してしまった。
「お待ちしておりました、勇者様。遠路はるばる我が領地・キャロライン村までお越し下さり、このアズマ、恐悦至極に存じます」
「い、いえ、そんな。こちらこそ突然お邪魔してすみません」
「お邪魔など、とんでもありません。我が娘・コニシが召喚した勇者様をお迎えできるのは、親としてこの上ない喜びでございます」
「え───?」
「え───?」
「…………」
僕とスラナが声を上げる。対照的にコニシは押し黙り、無言を貫いた。
「ま、待ってください、おじ様。レイは───」
反射的にスラナが悲鳴に近い声を上げたが、僕は咄嗟にスラナを制した。
「(レ、レイ、なにをするのですかッ!? は、離してくださいッ……! おじ様は───アズマ男爵は勘違いをなさっていますッ! レイはコニシちゃんが召喚した勇者様ではありませんッ! 私が召喚した勇者様ですッ!)」
スラナは身をよじり、なんとか僕を振り解こうと激しく抵抗したが、僕はギュッとスラナを抱きしめ、コニシの様子をうかがった。
コニシはすまし顔だった。その表情に、驚いた様子や、狼狽えた様子は一切なかった。
僕は、確信した。
「(コニシは意図的に、勇者(=僕)を召喚したのは自分だと両親に嘘をついたんだ……)」
「父上、母上、お久しぶりです。長らく家を空け、便りもせず、ご心配をおかけしました。心よりお詫び申し上げます。しかし、自己研鑽の「諸国放浪の旅」の道中に身を置いておりましたので、なかなかそうしたご報告をする暇がございませんでした」
恭しくコニシが両親に口上を述べると、父・アズマ男爵と母・聖女は二人でコニシを抱きしめ「よいのだ、我が娘よ。こうして無事に帰って来てくれたことで、一日千秋の思いで不安を募らせていた日々など、まるでなかったかのように思える」「それに勇者様を召喚して連れて帰ってきてくれるなんて……。これほどの誉───親孝行はありませんよ」と親子の抱擁を交わした。
「ご容赦いただき、恐悦至極に存じます。……しかし父上、母上、少し苦しく思います。もうわかりましたので、どうかそんなに強く私を抱きしめないでください」
「良いではないか。三週間も家を留守にしていた愛娘が帰ったのだ」
「そうですよ。三週間分、抱きしめるまであなたを離しません」
コニシはそうして両親に抱きしめ続けられる。
そして僕は、尚も抵抗を続けるスラナを抱きしめ続ける。
「ちょっとコニシのご両親に挨拶して、少しお話を訊いて、そしてエリザベート村に行くはずだったのに……」
僕は溜息をついた。
「これは大変なことになりそうだ……」
あー……。コニシちゃん。やっちゃいました。
心配する両親を安心させようと自分が勇者召喚に成功したと嘘の報告をしてしまったようです。
レイと、そしてスラナに言い出せなかったんでしょうね~。
スラナは大暴れですが、さてさて、この後、どうなることやら。
皆さま、どうかどうかお楽しみにしていただけますと幸いです。
ご期待にそえるよう頑張ります。
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