第十八話 スラナはご機嫌ななめ①
僕の冒険者としての初依頼成功を祝う祝賀会が開かれた晩も、僕は自分の汚部屋に戻っていた。
スラナやコニシ、それに宿屋の女将さん、さらに村の皆さんからも宿に泊まることを強く勧められたが、僕はまだ「自分自身の現実」を捨てて、こちらの世界に甘える決心ができないでいた。
だから僕は今回も自分の汚部屋に戻った。
* * *
翌朝、召喚ウィンドウ───もとい僕のPCモニターの向こうにはスラナだけが迎えに来ていた。
「コニシはどうしたの?」と僕が尋ねると、スラナは「今朝はレイと二人だけでお話ししたいことがあったので、宿で待っていてもらっています」とのことだった。
今朝のスラナは少し様子が違った。
真剣というか、少し険しい雰囲気だった。
「スラナ、どうかしたの?」
スタスタと前を歩くスラナの背中に僕は声をかけた。
するとスラナはピタリと立ち止まった。
「さきほど、レイはコニシちゃんがいなかったことを気にされていましたが、そんなに気になったんですか?」
今日のスラナはどこかおかしい。少し険しい雰囲気だと僕は思っていたが、それは間違いだった。
険しい雰囲気なんかじゃない。
険しいを通り越している。
スラナは険しいを通り越して、不機嫌───明らかに不機嫌だった。
僕は、スラナはいったいどうしたのだろうという心配とともに、怒りに満ちたスラナの姿に警戒した。
「う、うん。いつも一緒だったし、どうしたのかなって思って……」
僕は探るように慎重に言葉を選んで返事をした。
するとスラナはこちらに向き直り、「レイを召喚したのは私です。私がレイの聖女ですからね」と僕に一歩詰め寄った。
その圧力に僕は押されそうになったが、かろうじて踏みとどまり、一歩退くことを回避した。
「う、うん。わかっているよ」
「本当ですか? 本当にわかっているんですか?」
おかしい。今朝のスラナは明らかにおかしい。
不機嫌そうだと思ったが、それも違った。
スラナは不機嫌を通り越して、明らかに怒っていた。
僕はとても緊張した。
その緊張は昨日、蜥蜴鷲に襲われたとき以上の緊張だった。
僕はなんと答えようかと懸命に言葉を探したが、まずは余計な詮索などはせず、話を聞くべきだと思い「本当にわかっているよ」とだけ短く答えた。
するとスラナは「じゃあ、昨日の「抱っこ」はなんだったんですか?」とのことだった。それは唐突だったので僕は「抱っこ」とはどういうことかと思った。
「蜥蜴鷲との戦闘の後です。レイはコニシちゃんをお姫様抱っこしましたよね?」
ああ。あの抱っこのことかと僕は意味を理解した。
「う、うん。そうだったね」
抱っこの意味は理解したが、まだスラナが言わんとしていることや怒っている理由は謎のままだった。
「どうしてお姫様抱っこだったんですか? 私のときはおんぶだったのに……ッ!」
こ、これは……。
僕はハッとした。
まさかスラナは自分が電池切れで倒れたときはおんぶで運ばれたのに、コニシが身体を痛めて運ばれるときはお姫様抱っこだったことを不満に思っているということなのか?
「どうして私のときはおんぶだったのに、コニシちゃんはお姫様抱っこだったのか、説明してください」
スラナは口を尖らせ、上目遣いに僕を睨んで見せた。
僕はこの状況を知っていた。
これはテレビドラマや映画で彼女が彼氏の行為に不満を抱き、怒って詰め寄るシーンそのものだった。
僕はゴクリと生唾を呑み込んだ。
この状況は非情にまずいということを知識として知っていたからだ。
これは……(あわわわわわ汗
非常に良くないです。非情にヤバイです。レイは大ピンチです。
選択肢や返事の言葉を一文字でも間違うと、即ゲームオーバーになるパターンです。
なにせスラナは大きな石を軽々とぶん投げる聖女ですからね……(怖
怒りだしたら何をするか……(怖
果たしてレイはこの窮地を脱することができるのか?(笑
どうかどうかお楽しみにしていただけますと幸いです。
皆さまのご期待にそえるよう頑張ります~(ニヤリ




