第十七話 ギルドマスターの申し出
「コニシの名前だが、少し変わっていると思わないかい?」
宿屋の女将さんがそう尋ねてきたので、僕は「確かに少しそう思いました」と正直に答えた。
苗字としては違和感はないが、名前として名付けられるには違和感があったからだ。
「コニシの名前は元の世界に帰った勇者の名前に因んで付けられたんだ。アズマ男爵もコニシの母親の聖女も、自分たちが恋仲になったことで勇者を傷つけ、元の世界に帰らせてしまったことを申し訳なく思っていてね」
宿屋の女将さんはそのことがつくづく残念だといった様子で溜息をついた。
「勇者の名前は「オオニシ」という男だった。意味はわからないが、「オオニシ」という名前に対して「コニシ」と名付けられたそうなんだ」
僕はなるほど、と思った。
そして勇者の名前が「オオニシ」というのかとも思った。
「オオニシは年齢でいえば、今では四十二歳くらいだったはずだ。
それでだ、勇者様。聞きたいのはここからだ。勇者様は、勇者様の世界でオオニシと会ったことはないだろうか?」
僕は「え?」と驚いた。
僕が自分以外の勇者と、自分のいた元の世界で会ったことがあるかどうかを聞かれるなんて思ってもいなかったからだ。
「勇者様の世界も広い。そう都合よく出会うことはないかもしれないが、どうだろうか?」
そう問われて僕は顎に手を当てて唸る。
僕の世界に「オオニシさん」という苗字の人は確かにたくさんいるが、異世界で勇者をしていたというオオニシさんは存じ上げなかった。
僕が「残念ながらありません」と応えると宿屋の女将さんは「やはりそうか……」と残念そうだった。
「古い話だが、私はオオニシに恋をしていた。だがオオニシは勇者だ。当然、聖女と恋仲になると諦めていた。しかし聖女はアズマ男爵と恋仲になり、私は自分にも可能性があるかと期待したが、しかしオオニシは聖女に執心だった為、私は見向きもされなかった。それも仕方ない。当然のことだ。なにせコニシの母(=聖女)は同性の私が見ても、とても可愛らしくてね。小動物的な愛苦しさに溢れていて、それは娘のコニシを見てもわかるだろ? 私とは大違いだ」
コニシが母親似というなら、そういった魅力が大いにあるだろうと僕は納得した。
その上で、宿屋の女将さんも違った意味でとても魅力的な大人の女性だと僕は伝えたかった。
スラリとした長身で腕っぷしも強そうな宿屋の女将さんは、精悍で凛とした魅力に溢れていたからだ。
「私は今でもオオニシに会いたいと思っている。それは私がまだオオニシを恋しく思う個人的感情もあるが、それを抜きにしてもオオニシに会いたい理由がある。
それは昨今の勇者様召喚の状況だ。
もう聞き及んでいると思うが、ここ数カ月、聖女の勇者様召喚の儀式は失敗続きだ。
その為、この世界の勇者様の数が減り続けてしまっていてね。魔王軍に若干だが押され気味なんだ。その為、今は一人でも多くの勇者様が求められている。そこでオオニシにも戻ってきてもらえないかと思ったのだ。
勇者レイ様、元の世界に戻られたら、どうかオオニシを探してみてくれないだろうか?」
僕は宿屋の女将さんの気持ちと事情を理解し、快く引き受けることにした。
僕が了承すると宿屋の女将さんはとても嬉しそうだった。
「ありがとう、勇者様。そしてつまらない話でせっかくの祝賀会に水を差してしまって、すまなかったね。
さあ、今晩も大いに楽しんでおくれ。なにせ今日の主役は勇者様なんだからね」
そういって宿屋の女将さんは戻っていった。
僕以外にも僕の世界から召喚されて勇者となった人がいるという事実は驚きだった。
しかし僕は納得もしていた。何故なら、昨今の異世界転生、転移、召喚のブームはすさまじく、異世界はもう僕の世界では「当たり前のこと」になっていたからだ。
僕は自分の世界に戻ったら、オオニシを探してみようと思った。
でも───……。
そのオオニシという人が、無事かどうかはわからない。
なにせ今、僕の世界は───……。
四十二歳のオオニシさん~? そんな人、いたかな~? 四十二歳か~(笑
皆さま、拙作にお付き合いいただきまして本当にありがとうございます。
これからも皆さんのご期待にそえるよう頑張ります!
୧(˃◡˂)୨
でも、大西さんに対して小西さんなら、中西さんにもご登場いただかなくてはいけませんね(←違う!笑




