第十六話 凱旋
カトリーヌ村への帰り道、僕はコニシをお姫様抱っこで運んでいた。
怪我こそしていなかったが蜥蜴鷲の攻撃から僕を庇った際、コニシは身体を痛めたようで歩くのが辛そうだったからだ。
「す、すまんな、レイ。本来であれば聖女こそ勇者様をお助けしないといけないのに……。逆に勇者様に抱っこしてもらうなんで聖女失格だ」
コニシは恐縮していたが、それと同時に顔を真っ赤にして胸の前で手を握って身体を強張らせていた。
異性に免疫が少ないコニシはお姫様抱っこされることが初めてで、嬉しいやら恥ずかしいやらといった様々な感情が全身を駆け巡っていたが、こうしたことにも慣れるべきと自分に言い聞かせてじっと耐えているようだった。
「気にしなくていいよ。コニシは僕を庇ってくれたんだ。これくらいさせてもらって当然だよ」
「な、なんと寛大なお言葉……。う、うれしゅうございます……」
コニシはますます顔を赤らめた。
緊張のあまり喋り方がおかしくなっていたが、僕はあえて触れないようにした。
「コニシちゃん、大丈夫? 私が【神聖回復魔法】をかけようか?」
スラナが心配して提案したがコニシは「いや。聖女の貴重な【神聖回復魔法】を私に使うなんてもったいない。これくらい少し休めば大丈夫だ」とのことだった。
* * *
村の入り口に差し掛かると、宿屋の女将さんが出迎えにきてくれていた。
「勇者様、それにスラナとコニシも無事だったようだね。実は蜥蜴鷲の目撃情報があってね。心配していたんだよ」
そう心配する宿屋の女将さんに僕たちは蜥蜴鷲の羽、鉤爪、くちばし、鱗などの戦利品を見せた。
宿屋の女将さんは、その戦果にとても驚いてくれた。
「まさか初めての戦闘で蜥蜴鷲を倒してしまうなんて……。すごいじゃないか。さすが勇者様だね。
鹿兎はFランクのモンスターで、猪鼠や猫狼はEランクのモンスターだが、蜥蜴鷲はDランクの強敵なんだ。Cランクの冒険者とはいえ、初陣の勇者様が相手をするにはまだ早いと思ったんだが、杞憂だったようだね」
僕がDランクモンスターの蜥蜴鷲を倒したことはすぐに村中に伝わった。
「初めての冒険で蜥蜴鷲を倒すなんてすごいじゃないか!」
「さすがスラナが召喚した勇者様じゃ」
「最初はぜんぜん強そうに見えなかったけど、見直したよ」
「勇者様はすぐにレベルが上がって強くなるからね。今後が楽しみだよ」
この日の晩も、カトリーヌ村では僕の冒険者初依頼成功を祝して盛大な祝賀会が催された。
今日の主役は僕だった。
僕は村人全員から代わる代わるお祝いをしてもらい、胸がいっぱいになった。
こんな風に他人から祝福されるなんて、僕の人生で初めての経験だった。
「勇者様、ちょっといいかい?」
そう言って僕を呼び止めたのは宿屋の女将さんだった。
「私がコニシの父・アズマ男爵と同じ勇者パーティーで冒険者をしていたことはもう話しただろ?」
前置きに対して僕は頷いて見せた。
「コニシの母は、その時のパーティーの聖女なんだ。コニシはパーティーの剣聖だったアズマ男爵と聖女の間に儲けられた娘なんだ」
その出自に僕は少し驚いたが、でもコニシが聖女として覚醒したのは、母親が聖女だったからかと納得もできた。
「勇者パーティーでは勇者と聖女が恋仲になることが多い。しかし私たちのパーティーは聖女と剣聖が恋仲になってしまってね。そしてそのことに傷心した勇者は魔王討伐の旅をやめて「自分が召喚された元の世界」に帰ってしまったんだ」
宿屋の女将さんのパーティー解散の経緯が少し明らかになった。
宿屋の女将さんが引退したのは膝に矢を受けたからだけではなかったようだ。
しかし、僕は一つ疑問に思った。
どうして宿屋の女将さんは、今、この話をするのだろう?
その理由が知りたくて、僕は 宿屋の女将さんの話の続きをじっと待った。
するとこの後、宿屋の女将さんは、僕に思わぬ申し出をしてきた。
皆さま、お世話になっております。
柳アトムです( ᵕᴗᵕ )
ここまで私の小説を読んでいただきましてありがとうございます。
さてさて、宿屋の女将さんが、何やらレイに申し出をするとのことですが、果たしてそれは……?
なんとこの申し出は、レイの秘める謎や疑問に一歩近づく申し出となりそうです(ニヤリ
どうかどうかお楽しみにしていただけますと幸いです。
この後も、引き続き、皆さまのご期待にそえるよう頑張りますので~!
୧(˃◡˂)୨




