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第十三話 冒険者ギルドに登録

 カトリーヌ村での勇者召喚成功祝賀会は大盛り上がりだった。

 スラナは村人全員から勇者召喚の成功を祝福されていた。

 その光景を見た僕は、スラナは村人全員からとても愛されていて、またスラナも村人全員をとても愛しているんだなと胸が熱くなった。


 祝賀会が終わると、僕は自分の汚部屋に戻った。

 汚部屋に戻る際は召喚ウィンドウ───もとい、僕のPCモニターを反対側からくぐるという、なんとも得難い経験をした。


 スラナからは、カトリーヌ村の宿に泊まることを強く勧められたが、僕は一度、自分の汚部屋に戻りたかった。

 スラナの世界はとても美しく清らかで魅力的だった。

 僕も心の片隅では、この世界に居続けたいという思いがあったが、そうするともう二度と「自(・)分(・)自(・)身(・)の(・)現(・)実(・)世(・)界(・)」に戻ることができないような気がして怖かったのだ。


 だから僕は今日は汚部屋に戻ることにした。



 * * *


 翌朝、僕はスラナとコニシの話声(はなしごえ)で目が覚めた。


「スラナ、これが召喚ウィンドウなのか?」


「そうだよ、コニシちゃん。すごいでしょ。私が作ったんだよ」


「うむ。すごいのはすごい。何せ私は二度も失敗続きだからな。だがスラナ、この召喚ウィンドウは小さくないか? もっと大きな召喚ウィンドウは作れなかったのか?」


「私ももっと大きな召喚ウィンドウを作るつもりだったんだけど、儀式を行ったらこうなったの。でも小さくても成功しただけで感謝しなくちゃ。贅沢はいっていられないからね」


「それはそうだな。それでこの中がレイのいる世界なんだな」


「そうだよ。暗くて中の様子はよくわからないけど、とにかくたくさんの物があるお部屋みたい」


 僕はベッドから降りるとPCモニターに近づいた。

 PCモニターの向こうでは、窓から部屋を覗くように二人の聖女が顔を寄せ合っていた。


 昨日のことはひょっとして夢なんじゃないかと思ったが、どうやら現実だったようだ。



 * * *


「それで今日は何をするの?」


 再びスラナの世界にやってきた僕は、自分を迎えに来た二人の聖女に訊ねた。


「はい。今日はレイに冒険者ギルドの登録をしていただきます」


「冒険者ギルドに登録? どうして?」


「レイには勇者として強くなってもらわないといかん。その為にはレベルを上げる必要があるのだが、それならば冒険者ギルドに登録して「依頼」を受けるのが一番なのだ」


「冒険者ギルドの「依頼」には、どこにどんな強さのモンスターがいるか記されていて、自分が戦って大丈夫な相手かどうかわかりますし、依頼を達成すると報酬も貰えるので一石二鳥なんです」


 スラナとコニシは是非そうするべきだと言わんばかりだが、僕はまだ自分が勇者だと自覚していなかったので、レベルを上げる必要性を感じられずにいた。


 そうして僕が躊躇(ちゅうちょ)していると、コニシは僕が「冒険者ギルドの登録はどうすればよいのだろう?」と悩んでいると受け取ったようだ。

 すかさずお姉さんぶってきた。


「心配はいらないぞ、レイ。私が冒険者ギルドの登録の仕方をしっかりと教えてやる。何せ私はレイよりお姉さんだからな。頼りにしていいんだぞ」


 コニシは誇らしげに胸を張ると、鼻の下を人差し指で擦った。


 僕はコニシにそう言われたが、それでもどうしようかと迷ったが、他にやることもないので、物は試しで冒険者ギルドに登録してみようと思った。

 なにせ僕のPCモニターは異世界と繋がって本来の役目を果たさなくなっているので、Vチューバーの配信も観られないからだ。


 そして冒険者ギルドの登録を了承した僕は宿屋に連れてこられた。


「あれ? 冒険者ギルドに行くんじゃないの?」


「カトリーヌ村は小さな村なので冒険者ギルド専用の建物はないんです。宿屋が冒険者ギルドを兼ねているんです」


「因みにカトリーヌ村の冒険者ギルドのギルドマスターは宿屋の女将さんだが、女将さんはかつてSランクパーティーで名を馳せた剣聖(けんせい)で、同じく剣聖(けんせい)だった我が父(アズマ)と同じ勇者様のパーティーで戦った戦友でもあるんだ」


 そう説明するコニシは自分のことのように誇らしげだった。


 僕たちが宿屋の前でそんな会話をしながら扉をくぐると、どうやら話し声が女将さんに聞こえていたようだ。


「いらっしゃい、勇者様。聖女二人も一緒のようだし、昨(・)晩(・)は(・)お(・)楽(・)し(・)み(・)だったようだね」


 昨(・)晩(・)は(・)お(・)楽(・)し(・)み(・)というのは勇者召喚成功の祝賀会のことだろうか?

 おそらくそうだろうと思った僕は「ええ。おかげさまでと(・)て(・)も(・)楽(・)し(・)ま(・)せ(・)て(・)も(・)ら(・)い(・)ま(・)し(・)た(・)」と答えた。

 すると女将さんは満面の笑顔になって殊(こと)の外(ほか)に喜んでくれた。


「私が過去に勇者パーティーの剣聖(けんせい)だったことを噂していたようだけど、私が冒険者をしていたのはもう随分と昔のことだよ。当時の私たちはあとちょっとで魔王を倒せるところまでいっていたんだけどね。私は膝に矢を受けてしまって引退を余儀なくされたんだ。今ではこうして生まれ故郷の宿屋で女将さんをしているしがないギルドマスターだよ」


 宿屋の女将さん───もといカトリーヌ村の冒険者ギルドのマスターはそう謙遜した。


「それで今日は勇者様の冒険者としての登録だね。冒険者はFランクから始まって実績を積むとランクが上がる仕組みだが、聖女がいる勇者様はCランクからの登録になるよ。Cランクは簡単なモンスター討伐の依頼が受けられるようになるランクだ。早速、依頼を受けてみるかい?」


 そう言って女将さんはCランクの冒険者が受けられる依頼書を出してくれた。


「といってもカトリーヌ村は平和な田舎なんで、依頼といっても常設の薬草採取、鉱物採取、それに作物を荒らす鹿兎(バンビラビット)の討伐しかないけどね」


 女将さんは申し訳なさそうだったが、腕試しに鹿兎(バンビラビット)の討伐を受けてみてはどうかとのことだった。


「それがよいだろう。スラナ、どうだ?」


「そうね。私もレイなら大丈夫だと思う。私の【加護(ブレス)】があれば鹿兎(バンビラビット)の攻撃で怪我をすることもないと思うし」


 二人の聖女が了承したことで僕の冒険者としての初仕事は鹿兎(バンビラビット)の討伐依頼に決まった。

宿の女将さん───もといギルドマスターは「若いって素晴らしいことだね~」と思われたでしょうね(笑

まあ、レイには勘違いされていることを黙っておきましょう(ニヤリ

その方が面白そうなので(ニヤニヤリ・笑


しかし、膝に矢を受けたら痛そうです……(いたたたた

そんなギルドマスターですが、昔は本当に強かったようです。

当時の活躍に触れつつ、レイにも稽古をつけてくれるなどなど、ギルドマスターはこれからもチョイチョイ登場しますので、どうかどうかお見知り置きいただけますと幸いです。

( ᵕᴗᵕ )

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