第十二話 コニシの秘密
祝賀会に行くことにした僕たちは身支度を整え始めた。
「コニシちゃん、その剣は置いていった方がいいんじゃない? 重いし人混みの中では邪魔になるよ?」
「それもそうだな。大切な剣だがカトリーヌ村の宿なら置いていっても大丈夫だろう。そうすることにしよう。何よりこの剣は重すぎる。ずっと背負っているのはさすがに疲れるからな」
コニシはスラナの助言に従うことにしたようだ。
重そうな剣を肩から下ろすと、鞘のベルトをくぐって身体を抜こうとしたが、その時、剣の重みに煽られてよろめいた。
僕は咄嗟にコニシに駆け寄ると、彼女が倒れないよう優しく抱きとめた。
「大丈夫?」
僕は腕の中のコニシに声を掛けた。
コニシは驚いて僕を見上げていたけど、口がエサを求める鯉のようにパクパクとしていた。
「ぷしゅぅ~……」
顔が真っ赤になり、頭から湯気をもうもうと立ち昇らせたコニシは謎の効果音を吐き出してふにゃふにゃと崩れ落ちた。
目はぐるぐると回って全身から力が抜けてしまっていた。
「あっ。しまったっ。すみません。レイにはまだコニシちゃんの注意点を教えていませんでした」
コニシの注意点───?
それはなんだろうと僕は思った。
「コニシちゃんはカトリーヌ村の隣村であるキャロライン村を治めるアズマ男爵家の令嬢で大切に育てられた箱入りお嬢様なんです」
それってどういうこと?
僕はもっと詳しく話を聞かなければならないと思った。
* * *
「た、助けていただいたのにお見苦しい所をお見せしてしまって、すみませんでした」
コニシはまた綺麗な正座姿を披露すると三つ指を立てて僕に謝罪した。
「私はスラナが言うように男爵家の長女で、幼少期を屋敷内で過ごすことが多く、他人との交流が希薄で、特に男の人とお話をしたり目を合わせたりすることにまだ慣れていないのです。ましてや触れられたりすることにまだ免疫がありませんで……」
コニシは顔を真っ赤にして恥ずかしそうだった。
そういえば、コニシと最初に出会ったとき、会釈をした僕からコニシは咄嗟に視線を逸らしたけど、あれは僕を軽んじているんじゃなくて、異性と目を合わせることが苦手だったからなのか。
僕は合点がいった。
「コニシが男爵家のご令嬢だとすると、スラナも同じように家族がいるの?」
僕はスラナに訊ねたが、スラナはかぶりを振った。
「いいえ。私に両親はいません。私は物心着いた頃には聖女学園に預けられていて、八歳の時にカトリーヌ村にあてがわれました」
僕はスラナに両親がいない事実を知らされ、軽率に訊ねてしまったことを後悔した。
スラナの言葉に悲しさは感じられなかったが、スラナにとって両親のことは少なからず辛い事情であることは明らかだった。
僕はこの話題には慎重に触れようと思ったが、しかし、それと同時にスラナがカトリーヌ村に「あてがわれた」という言葉が気になった。
「どの村にも聖女は一人いると申しましたが、それは聖女学園が管理をして聖女を各村に割り振っているからです。
そうしないと聖女が数人いる村がある一方で、聖女がいない村があったり、また聖女の数で村同士が優劣を競って争ったりなど悲しい過去がありまして……」
僕は事情が見えて、なるほどと思えた。
「キャロライン村は、村を治めるアズマ男爵のご令嬢であるコニシちゃんが八歳の時に聖女として覚醒したので聖女学園から聖女をあてがってもらう必要がなかったんです。
自分の娘が聖女に覚醒するというのは大変名誉なことなんですよ。アズマ男爵はそれはそれはお喜びでした」
「しかし、それで父は私に対する過保護がより増してしまい、今日に至っております。
ようやく過ちに気付いた父は私を一人で出歩かせるようになりましたが、そうなってからまだ日も浅く、精進の途中でございました。
勇者様、本当に失礼をしました。今後、このようなことがないよう重々注意いたします」
そういってコニシはさらに深々と頭を下げたが、僕はとにかくコニシに頭をあげてもらうよう懇願した。
「気にしなくていいよ。コニシは僕より年上のお姉さんなんだから、そんなにかしこまらないで。あと僕のことは勇者様でなくてレイでいいよ」
僕がそう言うとコニシも僕の気さくな態度に顔を輝かせてくれた。
「そ、そうか。で、ではお言葉に甘えてそうさせてもらおう。なにせ私の方がレイより年上のお姉さんだからな」
コニシは顔を輝かせて立ち上がると腰に手を当てて自分がお姉さんであるという威厳を誇示した。
僕はコニシの扱い方がわかって安心した。
どうやらお姉さんとおだてればうまくいくらしい。
「ところでスラナはなんでコニシを「ちゃん付け」で呼んでいるの?」
そういえばと思い、僕は最初から気になっていたことを小声でヒソヒソとスラナに耳打ちした。
「私は初めてコニシちゃんに出会ったとき、なんの疑いもなく自分より年下の女の子だと思い「ちゃん付け」で呼んでいたのですが、それが今も続いてしまっているんです。コニシちゃんが自分よりお姉さんだと判明したのは、私より先に勇者様召喚の儀式を行うと言い出した時でした」
スラナは「最初に「ちゃん付け」で呼んだ癖が抜けなくて……」とばつが悪そうだったが、僕はなるほどと思いつつ、さらにスラナがコニシを、自分よりお姉さんだとわかっても、ついつい「ちゃん付け」で呼んでしまうことは致し方ない事かもしれないとも思った。
何故ならコニシは小動物的というか、小さな女の子が「おませさん」をしているような可愛さに満ち溢れていたからだ。
お世話になっております。柳アトムです。
ここまで私の小説を読んでいただきまして本当にありがとうございました。
貴重なお時間を割いていただきましたこと、心より感謝申し上げます。
( ᵕᴗᵕ )
さてさて、本作はここで第一章を結ばせていただきます。
第一章ではレイがスラナに召喚されて、PCモニターをくぐって異世界にやってくるまでのお話とさせていただきました。
次話より第二章とさせていただきますが、レイは冒険者としてギルドに登録を行います。
ラノベライフといえば冒険者としての成り上がりですからね♪(←そうなの?笑
まだ自分のことを勇者だと認められないレイですが、冒険者としてどのような依頼をこなし、成長していくのか楽しみにしていただけますと幸いです。
もちろん薄皮をめくるように(笑)様々な謎や疑問にも迫って参ります♪
どうかどうか引き続き、拙作を宜しくお願い致します。
( ᵕᴗᵕ )
皆さまのご期待にそえるよう頑張ります!
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