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突然疎遠になって遊び人になった幼馴染が結婚を迫ってきます。  作者: 那由多芹


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「元カノ降臨で、絡まれているのかと思って焦ったわよ」

 

 フローラがケークサレを頬張りながら安堵の声を出した。

 少し遅くなったランチにお腹が空いていた二人は、ケークサレを次々と口に運び、けっこうな量があったはずのケークサレは残り僅かとなっていた。


「私も、ついにきたと思った」

「元カノが接触してきたのは初めてよね」

「一応、付き合ってはいないらしいから元カノという表現は正しくないかのも⋯⋯」

「そっか、そういや、そういうクズっぽい前提になってたわね」

「うん」

「じゃあ、何て言えばいいのかしら。セフレ?」

「そうね。それが正確と思うけど、貴族令嬢がそんな言葉使ってはダメだってお兄様に注意されたから、フローラは言わないほうが良いと思う」

「そうなの?クリス様って案外過保護なのね」


 クリスが過保護だと言われればそうかもしれないとシャノンは思った。

 クリスが両親の代わりを努めるがあまり、口うるさくなっているのはシャノンも分かっている。


「まあ、どう表現するかは置いといて、クラリッサ様が言った事どうするの?」

 フローラがフレーバーティーをふぅふぅと冷ましながらシャノンにたずねる。 


 シャノンはクラリッサとの先程のやり取りを簡潔にフローラに説明していた。

「うーん⋯⋯どうしようか凄く迷ってる」

「なぜ?」

「だって、クラリッサ様にハニートラップみたいな真似をさせるのは心苦しいというか⋯とても素敵でいい人だったから⋯」

 シャノンの言葉にフローラはフレーバーティーを飲む手を止め「いい人ねぇ⋯」と呟く。


「でもクラリッサ様からの提案なんでしょ?こっちから頼んだ訳じゃないのに、やってくれるって言うなら問題ないんじゃない?」

「そうだけど⋯⋯」

「クラリッサ様のハニートラップなんて最強だよ?二人は嫌いで別れたとかじゃないからハードル下がりまくりで、ついつい軽い気持で浮気しちゃう可能性は大いにあると思う。シャノンにとってまたとないチャンスだと思うけど?」

「⋯⋯そうなんだけど⋯⋯」


 フローラの言っている事が分かりすぎるシャノンは頭を悩ます。

 早くも作戦切れのシャノンにとってまたとない絶好のチャンスに違いない。

 でも、アレックには幸せになってほしいと感謝しているクラリッサに、アレックを騙すような事をさせていいのだろうか⋯⋯。


「シャノン、クラリッサ様の事は深く考えなくていいと思うわよ。彼女は自分がしたいから提案してきただけだもの」

「え、違うわよ。クラリッサ様は私の不安を払拭させる為にって⋯」

 その言葉にフローラはフッと笑う。

「シャノンは本当に素直だよねぇ」

「え?」

「ううん、なんでも。それでこそシャノンよね」

「んん?」

 フローラが何を言いたいのか分からないシャノンは首を傾げる。


「とにかく、余計な事は考えないで、クラリッサ様のご好意に甘えちゃえばいいのよ。クラリッサ様は聡明な方だから色々考えて提案してきたのだろうし、シャノンがあれこれ考える必要はないと思うわ。このチャンスを逃せばアレック様との婚約解消なんて無理かもしれないわよ?」

「た、確かに⋯」

 フローラの説得に気圧されたシャノンは何だかそんな気がしてきた。


「じゃあ、お願い⋯しちゃおうかな」

「うんうん。しちゃおう。クラリッサ様が迫ればアレック様すぐ手を出しちゃうわよ。これで婚約解消できるわね」

 フローラの言葉に、シャノンは胸の奥がザワりとしたのを感じた。

「う、うん⋯?」

 シャノンは自分の感じた不快感が何なのか分からず首を傾げながら胸の辺りを押さえる。


「どうしたの?」

「――ううん、ちょっと⋯⋯この辺りがキュッてなった気が⋯」

 胸の間辺りをさするシャノンにをフローラは「それは食べすぎね」と答えた。


「食べすぎ⋯⋯」

「そうそう。私もちょっと苦しいもの。シャノンのケークサレが美味しすぎて食べすぎちゃった」

 フローラがふうっと息を吐きながらお腹をさする。


 確かに、ジゼルの分と余ればフローラに持って帰ってもらえばいいと思ったので沢山作ってきたのに、一切れも残らず食べてしまった。

 

 シャノンは食べすぎと言われて、胸ではなくお腹が苦しかったのかと妙に納得した。

 

 

 

 







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