第三十一話「一度では」
第三十一話「一度では」
ダンジョンが発生してから、四年。
第五階層の空気は、これまでの階層とはどこか違っていた。達也と健吾は、大小の石がごろごろと転がる道を並んで歩いている。足を下ろすたびに、小石が乾いた音を立てて脇へ逃げていった。左右には灰色の岩肌が壁のように続き、道はその間を縫うように奥へと伸びている。
第四階層までは、足元にも壁にも、どこかしらに緑があった。ところが、ここにはそれがほとんど見当たらない。岩の隙間から草がしがみつくように顔を出し、ところどころに細いツルが頼りなく伸びているだけだった。
「やっぱり少ないな」
「うん」
達也は歩きながら、周囲へ目を配る。どこを見ても、視界を埋めるのは灰色の岩ばかりだった。
『ほんとに岩ばっかりだな』
『今までと全然違う』
『草少なっ』
『トマトの人にはきつそう』
「岩ばっかりだね」
「足元も悪いしな」
二人は周囲を警戒しながら、慎重に先へ進んだ。しばらく歩いたところで、健吾がふいに足を止めた。
「……きた」
「うん」
短く返し、達也も身構える。
岩陰から、のそりと巨体が姿を現した。クイルベアだ。熊によく似た大きな身体を、灰褐色の毛が覆っている。その毛の一本一本が、棘のように硬く尖っていた。
『でかっ』
『クイルベアだ』
『五階層っぽくなってきた』
『面の人頼むぞ』
『トマトの人植物ある?』
健吾が背の大剣を抜く。重い金属の擦れる音が、岩場に低く響いた。
クイルベアが地面を蹴る。
ズンッ!
「たっちゃん!」
「分かってる!」
達也は素早く視線を走らせた。岩の隙間に生えたツルを見つけ、すぐに駆け寄る。しゃがみ込んで、そっと手を伸ばした。
「伸びて」
応えるように、ツルが地面を這い出した。一本、二本。緑の筋が岩肌を滑り、クイルベアの前脚へ巻きついていく。巨体の動きが、目に見えて鈍った。
『あった!』
『よし』
『いつものやつ』
『止まった』
「ケンちゃん!」
「おう!」
健吾が踏み込む。大剣の刀身に、光が集まっていく。クイルベアが顔を上げた、まさにその目の前で、光が強く弾けた。
「グァッ!」
まぶしさに、クイルベアが顔を逸らす。その隙を逃さず、健吾が大剣を振り抜いた。
ズガッ!
重い一撃が肩口へ叩き込まれ、巨体が大きく揺れる。
だが、倒れない。
『え』
『倒れない!?』
『今ので無理なのか』
『硬っ』
「まだ!」
「もう一回いく!」
クイルベアが、身体を激しく振った。巻きついたツルが、ぎりぎりと引っ張られる。
ブチッ。
「あっ」
一本が千切れた。残った一本も、今にも裂けそうに軋んでいる。
『え!?』
『切れた!?』
『ちょっと待って』
『もう一本もやばい!』
『面の人!』
『トマトの人離れて!』
「ケンちゃん、外れる!」
「俺が抑える!」
健吾が前へ出る。拘束を振りほどいたクイルベアが、太い前脚を振るった。健吾が大剣で受け止める。
ガンッ!
「っ!」
衝撃に、健吾の身体が押し込まれた。靴底が石を削り、じりじりと後ろへ滑っていく。
『うわっ!』
『押されてる!』
『面の人でもきついの!?』
『次の植物どこ!?』
『これまずくない?』
達也は慌てて周囲を見回した。岩。その向こうも、岩。緑がどこにもない。
『ない』
『植物ないぞ』
『嘘だろ』
『どこ!?』
『早く見つけて!』
焦る目でなおも探し、ようやく少し離れた場所に草を見つけた。
「ケンちゃん、ちょっと待って!」
「早めにな!」
達也は草を目指して駆け出した。岩を避け、足元の石を飛び越える。息が上がりかけたところで、草の前へ滑り込むようにしゃがみ、すぐさま手を伸ばした。
『あった!』
『遠い!』
『走れトマト!』
『面の人耐えて!』
「お願い、伸びて」
地面の下で、根が動く。岩の隙間から這い出した根は、クイルベアの後脚へ絡みついた。
「ケンちゃん!」
「おう!」
クイルベアの動きが止まる。
『止まった!』
『いける!』
『面の人!』
ほんの一瞬。その一瞬に、健吾が踏み込んだ。大剣へ、再び光が集まっていく。振り下ろされた一撃は、今度こそ深くクイルベアを捉えた。
ズンッ!
大きな身体が、地響きとともに地面へ倒れ込んだ。
『倒した!!』
『よかったあああ』
『こわっ』
『マジで焦った』
『ツル切られた瞬間やばかった』
『五階層怖いな』
「……」
健吾は大剣を構えたまま、しばらく様子をうかがう。クイルベアは動かない。
「終わった?」
「ああ」
健吾がようやく大剣を下ろした。
「はーぁ……」
大きく息を吐き、凝った肩を回す。達也もその場で膝に手をついた。心臓が、まだ早鐘のように打っている。
「ちょ、ちょっと疲れた……」
「大丈夫か?」
「うん。走っただけだから」
「俺も結構きたな」
その間にも、倒れたクイルベアの身体は、少しずつ魔素へと還り始めていた。
『二人ともお疲れ』
『一体で結構かかったな』
『いつもの感じじゃなくなってきた』
『トマトの人が走り回ってるの珍しい』
健吾が、まだ形を残しているクイルベアを見下ろした。
「一体でこれか」
「最初のツルが切れたあと、次が遠かったね」
「ああ」
達也はあらためて周囲を見渡した。植物がないわけではない。ただ、これまでの階層のように、必要なときにすぐ手の届く場所にあるとは限らなかった。
「ケンちゃんは大丈夫?」
「俺は大丈夫だけど……。ただ、一回で倒せなかったのがな」
「五階層だから?」
「それもあるだろうけど……」
健吾が、魔素へと還りつつあるクイルベアを見る。
「二人だと、思ってたよりきついな」
「植物も少ないしね」
「ああ」
達也は千切れたツルのところへ戻り、しゃがんで切れた部分をじっと確かめた。それから、ノートを開く。
『ノートきた』
『いつもの』
『ちゃんと切れたところ見るんだな』
『五階層も記録増えそう』
【岩間のツル】
第五階層岩場。
岩の隙間に生える。
操作可能。
クイルベアの前脚を拘束。
二本のうち一本が破断。
大型の魔物には強度不足?
詳細――要検証。
書き終えて、達也はノートを閉じた。
「たっちゃん」
「ん?」
「今日はここまでにしよう」
達也は健吾を見る。
「もう戻る?」
「ああ。今のがもう一体出てきたら、次は怪我では済まないかもしれない」
達也は、岩場の先へ目をやった。灰色の道が続いているが、その向こうに何がいるのかは分からない。さっきの戦闘でも、次の植物を見つけるまでにずいぶん時間がかかった。それに、まだ少し身体が重い。
「……そうだね」
「無理して進むこともないだろ」
「うん。戻ろう」
『撤退か』
『これは戻った方がいい』
『無理しないの大事』
『もう一体来たらきついな』
『また準備して来ればいい』
予定よりは早かったが、二人はそこで探索を切り上げた。
ーーー
本部へ戻ると、坂口が待機室にいた。今日は実働部隊の出動予定がなく、机に広げた装備を一つずつ点検しながら待機している。金具の触れ合う小さな音が、静かな部屋に響いていた。
健吾が声をかけ、達也もその隣に立った。
「坂口さん、ちょっといいですか」
「ん? どうした」
「五階層の探索なんですけど、次からもう一人、攻撃できる人を入れられませんか」
坂口が手を止めて、二人を見る。
「今日、戻るの早かったな」
「はい。一体倒したところで切り上げました」
「何が出た?」
「クイルベアです」
「ああ、あいつか」
「ツルの拘束は効いたんですけど、途中で切られました。五階層は植物も少ないんで、次の拘束まで時間がかかってます」
坂口の視線が、達也へ移る。
「そんなに少なかったか?」
「岩の隙間には生えてます。でも、必要なときに近くにあるとは限らないですね」
「……なるほどな」
「二人でも五階層なら大丈夫だと思ってたんですけど、攻撃するのが俺だけだと、思ってたより時間がかかりました」
「それで増員か」
「はい」
坂口は腕を組み、少しのあいだ考え込んだ。
「なら、杉本を入れてみるか」
「翔太ですか?」
「ああ」
「ケンちゃんが言ってた?」
達也の問いに、健吾が頷く。
「杉本翔太。火属性だ」
坂口が補足した。
「ああ」
達也は頷き、それから、その属性の意味に気づいた。
「……火属性」
「ん?」
「植物、燃えますね」
「燃えるな」
「燃えるね」
三人が、そろって黙り込んだ。
「まあ、その辺も含めて試してみるしかないだろ」
沈黙を破るように、坂口が言う。
「場所を分けるか、使うタイミングをずらすか。その辺は実際にやってみろ」
「分かりました」
「僕も大丈夫です」
「じゃあ、次は三人だな」
ーーー
次の探索日。達也は健吾と並んで、第五階層へ向かう準備を進めていた。
「翔太さんもここに来るの?」
「ああ。そろそろ来ると思う」
「そっか」
達也が手袋の具合を確かめていると、健吾が廊下の向こうへ目をやった。
「お、来た」
達也もそちらを振り返る。
「翔太、こっち」
「はい!」
廊下の奥で、一人の男がこちらを向いた。頭には黒いヘルメット。防刃素材の戦闘服を身につけ、その上から胸や腕を守るプロテクターを着けている。腰には細身の西洋剣。健吾ほど重装備ではないが、ひと目で前に出て戦う人だと分かる格好だった。
その男が、健吾の隣にいる達也を見つけた途端、ぱっと顔を明るくした。
「井上さん!!」
「え?」
男はそのまま、まっすぐ駆け寄ってきた。
「やっと! 会えた!!」
「えっと……」
勢いに押されて、達也が思わず一歩下がる。
「たっちゃん、こいつが翔太」
「はい! 杉本翔太です! 初めまして!」
「ああ、翔太さん。初めまして。井上達也です」
「知ってます!」
杉本が勢いよく頷いた。
「三年ですよ! 三年! やっと会えました!」
「そんなに?」
「そうなんですよ! 坂口さんも瀬戸さんも白石さんも、みんな井上さんと一緒になったことあるのに、俺だけずっとタイミングが合わなくて!」
「たっちゃんが来てる日に翔太が潜ってたり、翔太が戻ってきたらたっちゃんが帰った後だったりしたからな」
「そうだったんだ」
「今日、楽しみにしてきました!」
「ありがとうございます」
「よろしくお願いします!」
「こちらこそ」
杉本が、勢いよく頭を下げる。達也も慌てて頭を下げた。
「よし。挨拶も済んだし、準備するぞ」
「はい!」
杉本は手早く装備を確認していく。
「第五階層ですよね?」
「そう」
「それなら楽勝ですよ!」
杉本が、明るく言い切った。
「お前なあ」
健吾が呆れたように、杉本へ目を向ける。
「坂口さんが一緒じゃないんだから、いつもより周り警戒しろよ」
「……あ」
杉本の表情が、ぴたりと止まった。
「そうか。坂口さんいないんだ」
「そこ忘れるなよ」
「すみません」
しゅんとする杉本を横目に、達也が健吾へ尋ねる。
「坂口さんがいないと、そんなに違うの?」
「結構違うな」
健吾が答えた。
「坂口さんは風属性だから、俺らより広く周りのこと感じ取れるんだ」
「そうなんだ」
「先に気づいてくれること多いからな」
「なるほど」
「だから、俺たちだけでちゃんと周り見ないとな」
「分かった」
「俺も気をつけます」
杉本も、今度は神妙に頷いた。
「あと翔太」
「はい?」
「たっちゃんの植物、燃やすなよ」
「えっ……」
杉本が達也を見る。達也も杉本を見た。
「翔太さん、火属性なんですよね」
「はい」
「植物、燃えますね」
「……燃えますね」
「僕が脚を止めたら、植物から離れたところを狙えますか?」
「できると思います。ただ、どこまで火を近づけて大丈夫なのかは分からないですね」
「僕も分からないです」
「じゃあ、最初は少し離して使ってみます!」
「お願いします」
「じゃ、行くぞ」
「うん」
「はい!」
ーーー
三人で第五階層へ足を踏み入れる。配信を始めて間もなく、コメントが一気に流れ始めた。
『増えたwww』
『犬いるんだけどwww』
『ワンコが増えたww』
『面の人の横に柴犬いる』
『めっちゃ柴犬』
『今日三人なんだ』
『新しい人?』
流れていくコメントを見て、達也は杉本へ目を向けた。
「翔太さん、柴犬なんですね」
「はい! 実家で飼ってたので!」
「そうなんだ」
「アバター決めるとき、これしかないなって!」
『理由までワンコだったwww』
『似合ってる』
『まだ何もしてないのにワンコ感ある』
『今日からワンコだな』
『ワンコで決まり』
『トマト、面、ワンコ』
『なんだこの三人www』
「翔太、そろそろ行くぞ」
「はい!」
『翔太』
『あっ』
『察し』
『なるほど』
『ワンコな』
『おk』
『ワンコで』
『異議なし』
「トマトさん、行きましょう!」
「はい」
『もうトマトさん呼びwww』
『ワンコ馴染むの早い』
『元気だなワンコ』
三人は岩陰の一つ一つまで確認しながら、第五階層を進んでいった。しばらくして、最初に姿を現したのは前回苦戦したクイルベアだった。
「来た!」
健吾の声に、達也は近くのツルへ走る。手を触れると、ツルが地面を這い出した。
「伸びて」
一本、二本。緑の筋が岩を滑り、クイルベアの右前脚へ巻きついた。
「止まりました!」
「翔太!」
「はい!」
杉本が剣を抜く。細身の刀身へ、赤い炎が走った。
『おお!』
『ワンコ火属性か』
『柴犬から火出たwww』
『剣も使うんだ』
『ワンコ前衛か』
「トマトさん、右脚ですよね!」
「はい!」
「分かりました!」
杉本が駆け出す。速い。拘束されていない左側から、一気にクイルベアとの距離を詰めていく。
「ハッ!」
炎を纏った剣が、脇腹を斬り抜けた。クイルベアが、杉本へ顔を向ける。その反対側から、健吾が踏み込んだ。
ズガッ!
大剣が肩口へ叩き込まれる。
「グァッ!」
クイルベアが大きくよろめいた。杉本はもう、次の位置へ動いている。
『速っ』
『ワンコ強い』
『面の人と挟んでる』
『二人とも動き慣れてない?』
「もう一回いきます!」
「おう!」
クイルベアが、健吾へ向けて前脚を振り上げた。その横から、杉本が踏み込む。赤い炎が尾を引き、炎を纏った剣がクイルベアの身体を斬り抜けた。間髪を入れず、健吾の大剣が振り下ろされる。
ズンッ!
クイルベアの巨体が、地面へ崩れ落ちた。
『はやっ』
『同じクイルベアだよな?』
『前と全然違うwww』
『ワンコ普通に強いな』
『めっちゃ動けるじゃん』
『面の人との動き合ってるな』
「……終わった?」
「ああ」
健吾が大剣を下ろす。杉本も、剣に纏わせていた炎をふっと消した。
「トマトさん、ツルは?」
達也はしゃがみ込み、ツルにそっと触れる。
「大丈夫です。少し熱くなってますけど」
「よかった」
「でも、もう少し近かったら焦げてたかもしれません」
「じゃあ、次はもう少し離します」
「お願いします」
『ちゃんと燃やしてない』
『ワンコえらい』
『火と植物って難しそうだな』
『距離見ながらやるの大変そう』
『これも要検証だな』
達也は立ち上がり、周囲の岩場を見渡した。前回は、ツルを切られたあと、次の植物を探して岩場を走り回った。健吾も一人でクイルベアの攻撃を受け止めながら、次の拘束を待っていた。今回は、それがない。
「……全然違うね」
「だろ?」
健吾が、倒れたクイルベアを見下ろす。
「攻撃できるやつが一人増えるだけでも、かなり楽になるな」
「そうだね」
『ほんと全然違う』
『トマトの人が走らなくていい』
『面の人も一人で受けなくていいしな』
『ワンコ加入でかい』
『トマトで止めて面とワンコで攻撃か』
『分かりやすいな』
杉本が剣を鞘へ戻した。
「次もこの感じでいきますか?」
「はい。でも、火はもう少し植物から離した方がよさそうです」
「分かりました」
「翔太、前ばっかり見るなよ」
「分かってますって」
『前に行きたがるワンコwww』
『でも戦闘中はちゃんとしてるな』
『ワンコ呼びもう馴染んでるwww』
杉本が、周囲へ視線を巡らせる。坂口はいない。索敵も、自分たちでしなければならない。三人は岩陰の一つ一つまで確かめてから、再び第五階層を進み始めた。
ーーー
それから三人は、何度か魔物と遭遇した。杉本の炎が近すぎて、ツルの先が焦げたこともあった。達也が拘束する位置を変えたこともある。健吾が先に攻撃し、杉本が反対側へ回り込んだこともあった。そのたびに、三人は少しずつやり方を変えていった。
「今のはどうですか?」
戦闘を終え、杉本が尋ねる。達也はツルへ触れて、確かめた。
「大丈夫です。さっきより熱くないです」
「じゃあ、これくらい離れてれば大丈夫そうですね」
「たぶん。ただ、植物によっても違うかもしれないので」
「ああ、そっか」
「そこはまだ分からないです」
「分かりました。毎回確認します」
「お願いします」
『毎回確認するワンコ』
『ちゃんとしてる』
『植物ごとに違う可能性あるのか』
『火加減難しいな』
『トマトとワンコ意外といける?』
『まだ要検証だなwww』
先日のように、一体倒しただけで息が上がることはなかった。それでも、三人は無理に先へ進もうとはしなかった。
「今日はこの辺にしとくか」
「うん」
「はい」
『今日は余裕あるな』
『三人だと安定してる』
『ワンコいい仕事してた』
『お疲れー』
『気をつけて帰れよ』
帰り道。達也は、岩の隙間に生えている草を見つけて足を止めた。しゃがみ込み、いつものように丁寧に採取する。その横から、杉本が興味深そうに覗き込んだ。
「こうやって採ってるんですね」
「はい」
「初めて見ました」
『ワンコ近い近い』
『覗き込んでるwww』
「翔太、近いぞ」
「あ、すみません」
『注意されたwww』
『実家の犬を思い出すわwww』
杉本が一歩下がる。達也は採取した草を、袋へそっと入れた。
「トマトさん」
「はい?」
「次も俺、一緒でいいんですよね?」
達也は健吾を見る。
「いいんじゃない? ケンちゃん」
「ああ。そのつもり」
「よかった!」
杉本が、嬉しそうに笑った。
「じゃあ、次もよろしくお願いします!」
「はい。よろしくお願いします」
少し先を歩いていた健吾が、振り返る。
「二人とも、帰るぞ」
「うん」
「はい!」
達也と杉本は、岩場の道を駆け足で、健吾のあとを追った。
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