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【第五話 岐路】

 女子三人のことを教えてもらったよ。



 一番年上の可愛い娘は十八歳で僕とタメ年のマリア。それから、十三歳のミカと同じく十三歳のアユ。別に姉妹でもなんでもないご近所さんなんだってさ。



 元々、このライン国の辺境の村には約三十人の開拓民が住んでいたそうで、村にはまだ正式な名称もなかったみたい。開拓地ってのは五年目から税金を納めることが出来て、それを納めて初めて村として認可を貰えるらしいんだ。この村もやっと三年目なんだって。



 これってあれか。僕がここをあと二年頑張って開拓して税を納めると、ケビン村とかになるのかな? それは中々、魅力的だよね。とはいえ、僕とロビンだけじゃ税金分の作物を作るのは不可能だよね。それに一度、税を納めると今後は毎年納めるためにずっと畑を耕さなくちゃならないのも、ちょっと嫌だ。



 だもんで、僕とロビンは早々にこの村を出ようと思ってたんだ。僕のような不浄な者は都会の中じゃないと身を隠せないってのも大きいよね。マリアも村から出たことは無いらしくてさ、ライン国の大きな街の規模がどれだけなのかわからないらしいんだけど、この村から街道を十日も進めば最初の宿場町には着くんだって。



 これは、本格的に馬車の操車を覚えなくちゃ、この村から出ることも難しいって事で、例の盗賊団のアジトに戻って戦利品を全て回収してくることにしたわけよ。マリアが僕らがそのまま出ていくことを疑っていてさ、着いてくるというから仕方なく同行を許したんだよな。



 ミカとアユはお留守番。十三歳の女の子二人で無人の村にお留守番なんて心細いだろうけど、とにかくマリアが僕らのことを全く信用していないわけよ。信用してないくせに出ていかれても困るってのはわがまま過ぎるよな。僕もロビンもまだ出ていくつもりは無いのにね……。



 それで、改めて盗賊団のアジトに来てみると、金目のものが割と多くてさ。貴金属とか謎の美術品が馬車二台分もあるのよ。マリアが操車っぽい知識はかろうじてあったからさ、馬の口に変な器具を取り付けて馬車に繋いだんだよ。あんなもの口に入れられて、可哀想でさ。でも、馬は全く気にしてない感じで馬車に繋がれてやんの。



 ただ、馬に指示を与える方法を誰も知らなくてさ。暴走しても止められないじゃん。だから、マリアが馬の前に立って紐を引っ張って誘導するしかないのよ。僕もロビンもそんな馬車には乗れないよね。二人してもう一台の馬車を引っ張って村まで運んだわけよ。



 アジトには他にも馬がいたけど、全部逃がしてあげたよ。マリアは村に持ち帰ろうとしてたんだけど、馬が増えると誰かが馬の世話をしなくちゃいけなくなるからさ。今のあの村に必要なのは馬じゃなくて労働力。男手が欲しいんだよね。あの橋の下のヤンキーBみたいに白骨死体にリザレクションを唱えて畑仕事をさせるのも良いかもしれないんだけどさ、そんなことしたら間違いなく異端児扱いされるだろ? せっかくロビンからヒーラーの力を貰ったのに、意外と使い道がないんだよな……。



 とりあえず、盗賊団の戦利品を村長の家に全て運び終えてさ、謎の美術品を飾ったわけよ。壺とか絵画とか全く興味無いけど売る場所もないからね。でも、その絵画が実に素晴らしかったんだ。美術的にってことじゃないよ?



 何が素晴らしいのかというと、王城の絵画とか港の絵画とか寺院の絵画だったのよ。つまり、この世界の文化レベルが何となくだけど見えてくるじゃんね! さらに僕が嬉しかった絵画は勇ましい勇者の肖像画。マリアやミカやアユでもその絵を見て勇者だとわかったこと。テレビもネットもないこの世界で、皆の共通認識として、この絵の人物のことを勇者だと知ってるんだよな。それってすごくね? どうやって勇者はこんな村まで自分のことを布教したんだろうな。



 僕もロビンも勇者のことを知らないと言ったらマリアに怪しまれると思ったからさ、咄嗟に勇者のことを知ってるフリをしちゃったんだよね。



 ま、とにかく、当面の金の心配はなくなったわけ。不謹慎だけどさ、村人が全滅したおかげで、盗賊団の資金は五等分できるからね。



 マリアがこの金で冬に向けて保存食や薪を買いたいって言うんだよ。今はどうやら夏なんだって。でも、そろそろ秋になるらしいんだけど、この村は雪は積もらないけど寒くて春まで薪が必要らしい。



「なあ、ロビン。冬が来る前には大きな街へ出ようか。薪を街まで買いに行ってここまで戻ってくるのはめんどくさいよ」


「ケケケ、あの三人娘は見捨てるのかよ。まあ、そこがケビンらしいな」


「ただ、きっとまたマリアが街まで着いてくるよな?」



 僕らのことを全く信用していないマリアは確実に街まで着いてくるだろうな。いっそのこと三人娘を殺しても良いんだけどさ。ほら? 僕ってガイドラインがあるからね。ムカついた奴しか殺したくないのよ。少なくとも三人娘はまだムカつく事をしてないからね。



 そして、いよいよ、ここから一番近いという宿場町ゴラムルまで薪や保存食や調味料の買い出しに行くことになったんだ。意外にもマリアはミカとアユを一ヶ月近くも留守番させられないとして、村に残ることにしたんだよ。



 だから、僕とロビンだけで馬車を扱わなくちゃならなくなったんだけどさ、マリアが来ないなら、別にこの村に帰ってくる必要も無くなったわけよ。



 そう考えると、この馬車が今後は僕らの家になるかもしれないからね。僕は生まれて初めて努力したのかもしれない……。街道を進みながら、一生懸命に馬に慣れてみたんだ。ロビンも頑張ってみたんだけど、馬から見るとロビンは生物判定できないみたいでさ、全く言うことを聞かないというか、眼中に無いというか、全然ダメなわけよ。



 あと、街道にはすれ違う人も誰もいないんだよね。モンスターらしきコウモリみたいな羽のイタチみたいなものがたまに馬に噛み付いてくるんだよ。その度に馬は暴走してさ、何度もマジで事故りそうになったんだよ。



 でもさ、居酒屋で酔っ払いにリカバリーを唱えたらシラフに戻ってただろ? あれを思い出してさ、馬が暴走してもリカバリーで落ち着くし、噛まれた跡も無くなるしで、ヒーラーの能力をようやく使いこなせてる感じがしたんだよね。



「ロビン、このイタチって食えると思う?」


「ケケケ、料理についてはケビンの方が詳しいだろ? それに俺はどっちにしても食べられないからよぉ〜」


「まあ、たぶん不味いだろうな。やめとくか。でも、次に馬に噛み付いてきたら、一匹殺してくれないか?」


「こんなイタチをどうするんだ?」


「蘇生を試したいんだよ。ほら? 土壇場で使えないと恥ずかしいじゃん」


「ケケケ、確かにな! 今から奇跡を起こします! とか言っておいて、何も起こらなかったらコントだよな! ケケケ」



 そして、また、イタチが馬に噛み付いてきたからさ、ロビンがイタチを握りつぶしたんだよ。



「リザレクション!」



 ちゃんと蘇生は成功したんだけどさ、生き返った瞬間に物凄いスピードで逃げちゃったんだ。



 結局、蘇生後に僕の命令を聞いてくれるのは白骨化していたBだけだね。これに関してはロビンが説明してくれた。例の援交オッサンと今のイタチは浄化される前だったから、本人の意思まで蘇生されたという事らしい。ほら? Bは死んでから何年も経ってただろ? だから、もうBという存在はこの世にもあの世にも存在してなかったんだってさ。そうなると、蘇生されても生き物としての意識や意思が無いから微動だにしなかったそうだ。



 あと、小動物を蘇生させてもこの世界の女神は現れなかったよ。



 そんな感じでさ、ロビンとゆっくりと街道を進んでたんだ。幌馬車の夜中は結構冷え込むんだよ。僕が寒くて震えてたら、ロビンが鎧の中から普段着として着ていた真っ黒なローブを貸してくれたんだよ。



 あの真っ黒なローブと鎌ってさ、死神の象徴じゃんか。その二つの死神の象徴をどちらも僕が使ってるなんてさ。おかしな話だろ?



 でも、鎌もチートだったんだけど、ローブもチートでね。寒さも暑さも感じないんだよ。ロビンはアンデッドだから気がついてなかったみたいだけど、このローブって全天候型ローブだったわけよ。雨の日も濡れないんだぜ? 凄くない? さすが神だなと思ったよね。



 あと、数日間も旅をしてるんだけど、僕もロビンもやっぱり疲労感が無いんだよ。夜も別に寝なくても良いくらいなんだよ。まあ、夜道はマジで真っ暗だから危なくて進めないし、馬も連続して四時間とか歩けないからね。リカバリーで体力はリフレッシュ出来るみたいなんだけど、馬車馬のように働かせるのは可哀想だろ?



 ゆっくりと進んで、僕らはようやく宿場町ゴラムルが見えてきたんだ。



 割と大きな街でさ。ガッシリとした城門がそびえ立ってたのが印象的だったなぁ〜。そんな城門にはこの国の国旗がはためいてたからね。このライン国の国旗を初めて見たよ。赤と青のツートンカラーで、真ん中には錨のマークが描かれてたよ。



 僕らはまだこの世界に来て海は見ていないけど、この国はたぶん海に面した国なんだろうなぁ〜。




【第六話へ続く】




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