表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/17

【第一話 出逢い】

 僕の両親は早くに死んだ。



 確か、小学3年の頃だったかな。今でもハッキリと覚えてるんだ。


 何故かって?


 だってさ。僕が初めて人を殺した、記念すべき日だったからね。



 僕は小学校に入学してから、ずっと勉強が嫌いでね。2年生までは我慢してテスト用紙も真面目に答えてたよ。60点も取れたら最高って感じで、いつも50点を下回ってたんだけど。何故か低学年の子供ってさ、全員揃って先生の言うことを素直に聞いちゃうんだよ。だから皆、揃って成績優秀なのよ。でも、僕はその頃からノートに書くとか授業を聞くとかできなかったんだ。むしろ、先生の言うことだけは従っちゃダメだって、漠然とわかってたんだよ。



 そんな僕が3年生になるとね、そろそろ母親もイライラしてたんだと思う。通信簿にもずっと悪いことしか書かれてなかったし、うちの小学校は10段階評価なのにさ、担任の先生も酷くてね。クラスで僕にだけ1か2しか付けないんだぜ?全教科だよ、全教科。体育や図工まで1か2なんだよ。そりゃあ親としても焦るよな。そこまではわかる。



 ある日、母親が僕にブチ切れたんだよ。勉強しろってさ。


 まだ3年生だった僕は、うわ〜、漫画やドラマで見るシーンだ、って思って聞き流そうとしたんだ。でも、母親だけは違ったんだよ。ドラマでも漫画でもなく、本気で怒り狂っての言葉だったんだろうね。僕が聞き流してる態度を見てますますブチ切れたんだ。



 だから、まだ幼い僕は母親を殺すしかなかったわけ。台所の包丁でね。何ヶ所か刺したら、母親は完全に死体に生まれ変わってたよ。そして、その日の夜。父親が会社から帰って来たわけよ。リビングに愛する妻が死体になってるんだもん。慌ててたよ。そんな狼狽えてる父親も目障りになってね。ついでに包丁で刺してみたら、夫婦揃って死体になってた。



 まだ幼かった僕は返り血を浴びたまま、コンビニに夕飯を買いに行ったんだ。もう親もいないからさ、この日からは一人で生きて行かなくちゃならないからね。父親の財布を持って近所のコンビニで弁当をレジに持って行ったら、レジのおばちゃんが僕の返り血まみれの姿を見て慌てて警察を呼んだのさ。



 あぁ、飯もまだ食ってないのに、このまま逮捕されちゃうなぁ〜。



 ってガッカリしてたんだけど、駆けつけた警察官は何故か僕を逮捕することなく、めちゃくちゃ優しい対応をしてくれてね。それから警察署に連れていかれて、私服刑事の人から色々と質問をされたわけ。取調室でパンを食べながらね。



 その時のパンをくれた刑事ってのが、今、目の前にいる。水嶋さんだ。何故か今だに僕の事を心配してるのか、こうしてたまに僕の安アパートに顔を出してくれてるんだよ。



啓敏(ケビン)くん、もう進路は決まったのかい?」


「一応、調理師学校へ行こうかと考えてます。奨学金を借りなくても遺族年金で間に合いそうですし」


「そうか……。啓敏(ケビン)くんは料理が上手だもんな! きっと良い料理人になれるよ」



 そんな事を言いながら、水嶋さんはうちの仏壇を見つめていたよ。きっと、今だに犯人を逮捕できない事を自分なりに反省でもしてるのかな。目の前に真犯人がいるのにね。



 いつも様子だけ見に来るだけだから、水嶋さんは長居しないんだ。この日もさっさと帰って行っちゃった。



「なあ、死神。あの刑事さん、悪い人では無いだろ?」


「ケケケ、啓敏(ケビン)が殺さないなんて超レアな人間だもんな」


「僕はそんな見境なく殺してる訳じゃないさ。僕は僕なりのガイドラインがあるからね。僕がムカつくかどうか。ここ、大事!」


「ケケケ、啓敏(ケビン)のムカつき基準が曖昧すぎるから、長い付き合いの俺でもわからない時があるよ。でも、まあ、ヒーラーになった啓敏(ケビン)がいまだに俺を殺してないって事は、俺は啓敏(ケビン)から好かれてるって事だよな?」


「当たり前だろ? 死神だって、僕を信用したからこそ、ヒーラーのクリスタルをくれたんだろ? 僕は死神を殺さないよ」



 死神はケケケと笑って照れてたけど、この僕が死神を殺すわけがない。




 あれは、確か中学の頃。



 両親が死んでから、僕は親戚の家の養子になっていたからさ、孤児院じゃなくて親戚の家で暮らしてたんだよ。親戚の家は栃木県の下野市という辺鄙な街にあったから、そこに引っ越したんだ。その親戚の家には僕と同世代の子供が既にいたんだよ。僕より一歳上の女の子でさ。学校も一緒だったんだけど、何故かその子からは嫌われてたから、同じ学校なのに別々に登校してたんだ。



 僕はいつも一人で通学してたんだけど、帰り道で同じ方向のクラスメイトのヤンキー風の男子が二人いてね。いつも、孤独に歩いてる僕をからかってきてたんだよ。僕はそのくらいじゃ怒らないしムカつかないんだけどさ。ある日、そのヤンキーAとBがほんの少しだけムカつく事をしたんだ。



 僕がいつも万引き用に使っていたコンビニで、万引きをしていたんだよ。しかも、超下手くそなのよ。バレバレの万引きなんてしやがって、店員にバレてダッシュで逃げてやがんの。案の定、そのコンビニでは防犯カメラを増やしたし、今流行りの広角の防犯カメラに変えちまったんだよ。



 僕は親戚の家で居候してる身だぜ? お小遣いなんてものは貰えないんだよ。まあ、遺族年金みたいなものはあるにはあるんだけど、この金は社会に出てから使わなくちゃいけない金だろ? 中学生のうちからバンバン使ってたら、大人になる頃には無くなるのは目に見えてるからね。若いうちは万引きに頼るしか無いんだよ。それなのに、馬鹿なヤンキー2人のせいで、僕の狩場を1つ失ったんだよ。



 だから、僕はまずヤンキーAを殺すことにした。



 Aの生活を探った。どこなら簡単に殺せるのかを徹底的に調べたんだよ。2週間の尾行の末、Aの行動パターンがわかったんだ。Aは意外と純情少年でね。クラスメイトの可愛い女の子に告白しようとしてたのか、たまに彼女の家の周りをうろつく事があったんだよ。だいたい金曜の夜か土曜の夜なんだけど、Aはこの時だけは必ず一人で暗闇の中を彷徨くんだ。



 僕はAが彼女の家を遠目から眺めていた時に声をかけたのさ。



「A、彼女になんかようか?」



 Aは真っ赤な顔をして僕の胸ぐらを掴んだんだ。そして、焦ったように詰め寄った。



「オメェに関係ないだろ!? ちょっと来い!」



 って言って自分から人気のないところへ連れてくんだもんな。思川の河川敷。大きな橋の下だよ。Aは僕を殴ろうとでもしてたのかな? 何をしようとしてたのかは僕にはわからないけど、橋の下で包丁を刺されて蹲ってるAを見た時に、下手くそな万引きの事はチャラにしてもいいやって思ったんだよね。



 Aが死体に生まれ変わってから、僕は思川に流したんだ。翌日にはAはすぐに発見された。思川の河川敷ってのは薮がボーボーと伸びきってるからね、逆に見つかりにくいと思ったんだけど、川に流せばすぐに見つけてもらえるかなって。やっぱり翌日には見つかったよ。



 きっとBはAと仲が良かったんだろうな。あれ以来、頻繁に殺害現場にタバコとか缶コーヒーとかを供えに来てたんだよ。一人でね。僕はどっちも殺すつもりだったから、Bだけを許すなんて事はしないのさ。49日を過ぎた頃、BもAと同じ場所で殺してやったんだ。スコップでね。殴り殺したよ。今度は別に発見されなくても良かったから、ちゃんとその場に埋めてやったのさ。凶器のスコップも一緒にね。



 この頃は僕も子供だったからさ、ターゲットも子供が多かったんだ。子供って本当に警戒心が無いよね。ハラハラもドキドキもしないんだよ。それから、日本の警察にもガッカリしたね。だってさ、Bは結局、今だに見つかってないんだもん。きっと今頃はもう骨になってるよね。



 確か、この頃だよな。死神と出会ったのは。



「ケケケ、そうだったなぁ。やたらと美味い魂が連続して、あの付近から漂って来たからよぉ〜。気になって俺は随分前から啓敏(ケビン)を眺めてたんだ。そしたら、万引きをミスっただけでクラスメイトを平常心のままぶっ殺してる少年を見たら、死神なら誰だって気になるもんだぜ。人の魂ってのは、中々、出てこねぇんだよ。恨みとか妬みとか後悔とか恐怖とか怯えとか、魂にネガティブな気持ちを刻み込まねぇと魂にはならない。だから普通の人間が死ぬ時は天国も地獄もなく、死ぬと即浄化されちまう。近頃の日本じゃ、そんな死に方をする人間も少なくなったからよぉ〜。啓敏(ケビン)に取り憑けば、一生、魂には困らねぇと思ったんだよなぁ〜。んで、結果は啓敏(ケビン)は最高のシリアルキラーだったってわけさ! 俺は啓敏が死ぬまで上質な魂を食い続けらんだよなぁ〜」


「いや。わからないよ? ある日、突然、僕もまともな人間に更生するかもよ?」


「ケケケ、それは無い。啓敏(ケビン)はつまらん事で、すぐにムカつくからな。そんな男が更生するはずが無い。だから、俺は安心してヒーラーのクリスタルをお前にあげたのさ!」


「フフフ、シリアルキラーの僕がヒーラーになれるのかな?」


「死神界隈ではヒーラーとは呼ばねぇんだよ。『Instant death(即死者)』って呼ぶんだぜ?」


「インスタントデスか……。僕がよく飲むコーヒーは?」


「ケケケ、インスタントです!」


「アハハ!」「ケケケ!」




【第二話へ続く】




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ