【第十話 賞金稼ぎ】
鶏の照り焼きは村民にも受け入れられたんだよ。照り焼きなんて誰でも作れるだろ? 醤油と砂糖と味醂があれば簡単だからね。
でも、前回、宿場町ではミリンが手に入らなかったんだよ。だから、ミリンの代用品として甘酒を使ったわけ。まあ、僕からするとミリンを使った本物の照り焼きを知ってるからね。邪道ではあるんだけど、村民には大好評なわけよ。ついでに言うと宿場町で買ってきた米を炊いて照り焼きチキンと一緒に食べさせたからさ、村の中では米ブームが起きてるの。もう麦を辞めて米にしようとオッサン三人組が言い出してんの。
でもさ、僕は日本人だから、米は麦より病気や台風に弱いことを知ってるからね。麦を辞めることには反対なわけよ。それに小麦粉ってかなり必須なのは料理が得意な僕にはわかってるのよ。唐揚げにも使ってるんだよ?
それに、せっかく巨大な鶏ガラを入手出来たんだもん。ラーメンを作りたいよね。でも、かんすいってなんなの? よく重曹でパスタ麺をラーメンに変えるとかネット情報を見た事あるけど、重曹の作り方もわからないからね。ただ、鶏ガラスープだけは上質なものが作れたんだよ。だもんで、そのスープを使って炒飯もかなり美味しく作れちゃったんだよ。
照り焼きチキンくらいなら村民でも作れるんだけどさ、流石に炒飯は簡単には作れないよね。美味しい炒飯を作りたくてマリアがウチに通うようになったんだよ。
「ケビンさん。今日も冷や飯を持ってきたので、炒飯を作ってください」
「また来たの? 毎日のように炒飯食ってるけど、炒飯だけじゃ栄養バランス悪いよ? ほぼ米しか食ってないんだからさ」
「だって、私も炒飯を上手に作りたいじゃないですか〜」
僕はもはや恒例行事のように冷や飯を炒飯に作り替えたんだ。
「はいよ。できたよ」
マリアは僕の鍋振りを熱心に見つめながら、完成した炒飯を食べ始めたんだ。
「どうしてこんなにパラパラに出来るんですか? 魔法ですか?」
「炒飯はイメージが大事だから、ある意味では魔法に近いのかもね。でも、魔法では無いんだよ。米に油を一粒一粒コーティングするイメージだね。あとは火力。ビビって弱火でやるとパラパラにはならないんだよ」
「ケビンさんはヒーラーなのに料理人みたいな事を言うんですね」
「それは、僕が本物のヒーラーじゃないからさ。回復魔法を使えるだけのただの料理好きな男なんだよ」
「ヒーラーの仕事をすれば大きな街では儲かりますよね?」
「それがそうでもないって事を最近知ったんだよ。僕の回復魔法は主に男の人にしか使えないみたいだね……」
「は? 男の人限定なんですか!?」
「うん。詳しくは言いたくない。どうしても知りたいならミルキーさんにでも聞いてみてよ……」
マリアはここまで聞いたら気になるよな。当然、後日、ミルキーさんに聞いたみたいだね。その後、僕の回復魔法については聞いてこなくなったんだ。
ところが、ある日。そのマリアが高熱を出したのさ。ミルキーさんが僕に回復魔法を使えと言ってきたんだよ。だから、ミルキーさんに例のことを聞いたわけさ。
「大丈夫よ。あの子は元々、まだだから。安心して回復魔法をかけていいわよ」
だから、僕はマリアにリカバリーを唱えたよ。マリアは顔が真っ赤だったけど、それは熱で真っ赤なのか、それとも照れて真っ赤なのかは僕には判断できなかったんだ。とにかく、発熱にもリカバリーは効いた。まあ、性病を治せるくらいなら、発熱も治せるよね?
僕の回復魔法は男限定なら無双なんだ。そんな僕に、オッサン三人組の一人ガメダってガタイの良いオッサンが話しかけてきたんだよ。宿場町にいるガメダのお婆さんが膝と腰を痛めて寝たきりなんだってさ。それを僕に治せないかと言ってきたんだよ。
お婆さんってことは女だよ? 僕は最初は断ったさ。お婆さんにリカバリーを掛けたら、なんか色んな不具合が出てきそうだろ?
でも、ガメダのオッサンがどうしてもっていうからさ、また十日間かけて宿場町に来たんだよ。今回はお婆さんに女ならではの回復魔法による不具合について説明係としてマリアも同行してくれたんだよ。僕が説明するとセクハラになるだろ? せめて同性ならギリギリセクハラにはならないよな?
結果的にお婆さんへの説明は無事に終わったんだよ。お婆さんとしては些細なことなんだってさ。だから僕も遠慮なくリカバリーしたわけさ。
これは後日談なんだけどね、お婆さんが再生したのは月の物まで再生しちゃったんだって。うん、そうなると思ってたよ。これを予測していなかったマリアが悪い。それでも、お婆さんは膝と腰が完璧に治ったからね。お婆さんは老人ホームで暮らしてたんだけど、寝たきりのお婆さんが急に元気になったから、周囲の人間は驚いてたみたいだね。
でもさ、お婆さんとしては生娘まで身体を戻されたのよ。周りの人にも言い難いよな。だから、僕の回復魔法のことを誰にも言わないでおいてくれたんだよ。
んで、久しぶりに宿場町に来たもんで、僕とロビンは買い物を楽しんでたわけよ。金貨はまだまだあるからね。異世界には定番の冒険者ギルドにも行ってみようかとも思ったんだけどさ、別にモンスター退治とか興味無いから辞めといたんだけどね。
ギルドの前を通りかかった時、ちょっとヤバいものが見えちゃったんだよ。僕もロビンもギョッとしたよね。何を見て驚いたかと言うと、僕がこの世界に来た時に殺しまくった盗賊団が賞金首だったのよ!
「え? これって僕たちが殺した奴らだよね?」
「あぁ、間違いねぇ! しかも、下っ端の奴らも結構な額じゃねぇか!」
「まだ、遺体って残ってるかな? 街道の遺体は残ってるわけないけどさ、アジトの方の遺体なら残ってるんじゃないか?」
「あれから二、三ヶ月経ってるからなぁ〜。残ってても腐ってるぜ?」
「白骨化してたら再現不可能なのはヤンキーBで実証済みだけど、ドロドロに腐った状態からの再生はまだ試してないよな? ガメダのオッサンに言って、僕たちだけでも先に帰ろう! もしも再現出来れば賞金が手に入るぞ!」
僕とロビンは馬車をチャーターして急遽、開拓村の近くにあった盗賊団のアジトへ来てみたんだよ。いつもなら十日間かけて来る道のりを、わずか八日で帰ってきたよ。御者には本当に嫌な顔をされたけどね。
アジトの洞窟を確認すると、遺体はちゃんと残ってた。しかも、ドロドロになってなかったんだよ。たぶん洞窟内が冷えてるからかな? 色合いは肌色ではなかったけど、これなら蘇生出来る!
「リザレクション!」
すると、ちゃんと肌色に戻って完璧な蘇生状態になったんだ。しかも、傀儡状態でね。下っ端だけど、ちゃんと賞金首の三人だ。この三人を引き渡せば賞金を貰える。
僕とロビンはこの三人を運ぶために一旦、開拓村に戻って馬車に乗って宿場町に帰ってきた。傀儡三人と十日間も旅できたことで、傀儡についても、かなりわかってきたんだ。
まず、傀儡はネクロマンサーとは全く別! これはやはりネクロマンサーの方が圧倒的に使える職業だと思った。というのも、僕が蘇生すると、この三人のようにアンデッドとして傀儡になってるわけじゃないのさ。ちゃんと心臓が動いてるんだよ。つまり、アンデッドでもなんでもないオッサンが傀儡になってるだけ。これって戦闘で使えるわけないよな? 反射神経も防衛本能も無いから、斬られっぱなしの殴られっぱなしさ。
これがヤンキーBのようなアンデッドなら、もしかしたら物理攻撃無効化とかありそうだろ? 人をそのまま蘇生しても人として蘇るだけだから、本当に意味が無い! しかも、生きてるから当然、飯を食わなきゃそのうち死ぬという生物ならではの現象付き。しかも、意思が無いから、命令されるまで食わないし飲まない。
すなわち、傀儡ピエルに勇者を殺せと命令したことがあったけど、たぶんピエルは何処かの道端で餓死してるか脱水症状で死んでるかのどちらかなんだと思う。ヤンキーBも骸骨のまま、あの後どうなったのかわからないけど、きっとアッサリと誰かに破壊されてるんだろうな。所詮、骨だしな。下手すりゃ野良犬にバリバリと食われてるかもね。
兎にも角にも、頑張って十日間かけて宿場町まで賞金首三人を運んだんだよ。ギルドでは3人が意思の無いままじゃ怪しいだろ? それもこの十日間で僕はちゃんと学んだんだよ。傀儡は僕の命令に全て従ってくれるわけ。つまり、僕はこの三人にこんな命令をしたのさ。
『盗賊団らしく振る舞え』
ってね。こんな簡単な命令でもギルドの職員は見抜けなかったよ。ちゃんと賞金も即金で支払ってくれたんだ。本当ならこの三人にさらに悪事をさせて賞金を釣り上げるのが正解なんだろうけどさ、あまり欲を出すと何処かでミスをするからね。ここは欲を出さずに素直に賞金首を引き渡して終わったんだ。
賞金を獲られたし、傀儡についてもだいぶわかってきたし、結果的に盗賊団のアジトに戻ってみて良かったよ。
この後はせっかく村の馬車で宿場町まで来たんだし、馬車に積めるだけの薪を買ってから開拓村に帰ることにしたんだよ。僕とロビンは以前にも買いに来た雑貨屋に来て薪を馬車一台分注文すると、今回もすぐには売ってもらえなくてさ。三日待てと言われたんで、僕とロビンは安宿で時間を潰すことにしたんだ。
三日分の宿泊費を払って、部屋のベッドでノンビリとくつろいでいたんだ。
僕とロビンの部屋に訪問者が来るまでは……。
【第十一話へ続く】




