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第二十八話 肉体労働の苦行と、焦る心

資金が底を突いた以上、どんな仕事でも受けなければならない。


翌朝、俺は街外れの労働市場へ向かった。

「魔法で稼ぐより、体を動かした方が戒律に触れないだろう」という結論に至ったからだ。

なぜか一緒についてきたリリーシャは、終始不機嫌そうに腕を組んでいる。


「本当にこんなところで働くの?」


「仕方ないよ。金が要るんだ」


最初に回されたのは土木工事現場だった。

重い石材を運んだり、土を掘ったりする単純作業。

前世の記憶を頼りに体を動かしてみたが、すぐに限界が来た。

石を積み上げようとした瞬間、足元が滑り、

軽い打ち身と捻挫を負ってしまった。


「痛っ……」


リリーシャが慌てて駆け寄ってくる。

「馬鹿! 無理するからよ!」


神聖魔法で軽く治したものの、現場監督に「怪我する奴は使えねえ」と一蹴され、

その日の賃金は半減。

「自業自得だな……」と苦笑いするしかなかった。


昼過ぎ、現場が変わって今度は便所清掃の仕事。

女性をつき合わせたくないので、何とか説得してリリーシャには帰ってもらったが、

どきついアンモニア臭の中、阿羅漢の逸話を思い浮かべながら掃除を進めた。


「阿羅漢は汚れを恐れず、一切を平等に扱う……一切皆清浄いっせいかいせいせい……」


そんな教えを必死になって脳内に反芻しつづけていたせいか、

手順の一つを忘れてしまい、

排水溝の詰まりを完全には取り除けなかった。

監督に「何やってんだ!」と怒鳴られ、追加の罰金まで取られた。


「聖人の教えを思い出しながら掃除してたのに……これじゃ本末転倒だ」


夕方、最後の仕事は穀物倉庫の積み下ろし。

袋の数を割り算して在庫を確認する作業だったが、

「1袋25kg、128袋を……457kgづつに分けると、余りは……?」

暗算で何度もミスを連発。

監督に何度も叱られ、結局その日の給金は大幅カット。


「計算ミスばっかり……前世の記憶が仇になるなんて」


疲れ果てて宿に戻ると、リリーシャが珍しく心配そうな顔で待っていた。

「今日一日でどれだけ無茶したの?

 怪我もしたし、叱られてばっかりだったって聞いたわよ」


「まあ、なんとか生き延びてるよ……」


そこへミランダがやってきて、俺とリリーシャの様子を見てにやりと笑った。

「ふふ、まるで奥さんみたいね、リリーシャ」


「なっ……!?」


リリーシャの顔色が一瞬で変わり、両手をぶるぶる震わせながら叫んだ。

「ち、違うわよ! ただ、足手まといが増えるのが嫌なだけ!

 あんたが死んだらパーティが困るだけなんだから!」


その必死さが、逆にみんなの笑いを誘ってしまったようだ。

ドルガンが低く笑い、ヤミカも覆面の下で肩を震わせている。

いけない、からかいすぎた。

リリーシャにそんな気持ちはない以上、この事態には俺にも責任がある。


「やめてください、みんな。リリーシャも困ってるでしょう?」


俺は彼女を擁護しながらも、ふと耳にした噂を思い出していた。

倉庫作業中に聞いた話だ。


「秋の森の方で、最近また魔力の異常が落ち着いたらしい。

 巫女様が戻ってきて、均衡を整えてくださったとか……」


その言葉に、胸がざわついていた。

もう一度、秋の森へ行かなければならない。

でも、今の資金と体では到底無理……。


「まだ……遠いな」


リリーシャが小さく息を吐き、俺の肩を軽く叩いた。

「……無理しないで。

 次はちゃんと準備してから行こうよ」


その言葉に、俺は静かに頷いた。

リリーシャの複雑な感情のこもった目つきに、このときは気づくこともなく。


(第二十八話・了)


Grokさんの恋愛描写はいつもストレートにすぎ、読んでいて主人公が「彼女の気持ちを知っててわざともてあそんでる嫌なヤツ」に見えるし、リリーシャも主人公にLoveアピールしすぎるので、今回もところどころ加筆して「朴念仁+ツンデレ」のすれ違いにマイルド化しました。

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