第十二話 初のダンジョンで思わぬ拾い物
パーティ加入の翌日、俺たちはダンジョンへ向かった。
街から半日くらいの森の奥。
古い遺跡のような入り口から、地下へ続く階段。
暗い。
湿ってる。
松明の火が、壁の苔を照らす。
黒装束のヤミカが音も無く先頭で進む。
「……罠、なし」
低い声で報告。
俺たちは慎重に進んだ。
最初の部屋。突入すると、
ゴブリンみたいな小鬼、数匹と出くわす。
そいつらはラセリアとリリーシャがすべて斬り捨てた。
「雑魚ね」
ドルガンが、ほとんど使わなかった盾と斧を
背負いなおしながら笑う。
「まだまだこれからだぜ」
さらに奥へ。
二階層目で、宝箱を見つけた。
ヤミカが罠を解除して、開けると、
中から、古い巻物が出てきた。
表紙に、古代語が書かれている。
「なんだこれ?」「さあ」
みんなにはわからないようだが
師僧に教わった俺には読める。
『アミタバ経』
……阿弥陀経!?
俺はその巻物を手に取った。
「これ……」
ミランダが覗き込む。
「何? お経?」
俺は頷く。
「フート教の経典です。
アミタバ経……略してアミ経」
リリーシャが興味なさそうに言う。
「また宗教ネタ? 坊主らしいわね」
俺は巻物を広げる。
中身は、阿弥陀仏の教え。
極楽浄土の模様の説明と、
そこへの行きかたが書かれている。
俺は読む。
「南無阿弥陀仏……」
すると、巻物が光った。
光が俺の体に吸い込まれる。
……力が、湧いてくる。
「これは……」
ドルガンが驚く。
「いいねぇ……!
お前、今、なんか光って見えたぞ!」
ラセリアが剣を構え直す。
「何が起きた?」
俺は巻物を握りしめる。
「この経典……
ただの書物じゃない。
魔法の書だ」
ミランダが目を輝かせる。
「へえ~、チートアイテム?」
俺は頷く。
「たぶん……
唱えるだけで、功徳が得られる。
もしかしたら、浄土往生の力……
いや、違う。
ここでは、別の効果があるのかも」
俺は試しに、小声で唱えてみる。
「南無阿弥陀仏……」
すると、体が軽くなった。
疲れが、消える。
「……回復魔法?」
ラセリアが呆れる。
「また新しい力か……
お前、本当にただの奴隷だったのか?」
俺は苦笑い。
「ただの奴隷……だったんですけどね」
「それがアミダ仏って仏さんか。
なかなか有難そうだな」
この世界では阿弥陀如来が薬師如来になってんだろうか?
いやそれとも、「一切がみな空なれば、如来もまた空」?
そのとき、奥から足音が聞こえてきた。
モンスターの群れ!!?
俺は巻物を懐にしまう。
「今は、戦うときだ」
パーティは再び陣形を組む。
俺は、心の中で呟く。
「アミ経か……ありがとう」
師僧、見ててくれ。
俺は、もうただの奴隷じゃない。
(第十二話・了 約2100字)
次は第十三話 ひさびさに験子パートです。
験子「……もしかして、誰か、来てる?」
このへんからAIの記憶違いや計算違いが激増しましたが、気が付いたところはできるだけ手動で修正していきます~。




