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第十一話 パーティ結成、スレンダー魔法戦士ツンデレに睨まれた

寺の門を出て、俺は街の冒険者ギルドへ向かった。


刺青の上書きが終わった肩が、まだジンジン痛む。

でも、それ以上に胸が熱い。


「自由だ……本当に、自由になった」


高僧猊下の言葉が頭に残る。

「俗世で善行をしろ」


俺は頷く。


「はい……師僧、見ててください」


ギルドは賑やかだった。

依頼板の前で冒険者たちが騒いでいる。


俺は受付に近づく。


「パーティ登録……したいんですが」


受付の女性が俺を見る。


「あなた……僧侶見習い?」


俺は頷く。


「はい。

昨日、奴隷身分から解放されたばかりで……」


女性は書類をめくる。


「身分証明は?」


俺は「行者登録証」を出す。


女性は目を丸くする。


「本物の行者様……!

もちろんOKです。

どのパーティに加入希望ですか?」


俺は少し迷う。


「……ラセリアさんのパーティに、誘われたんですけど」


女性は驚く。


「赤髪の姉御のパーティ!?

あそこ、かなり強いですよ。

でも、最近ヒーラーが抜けて困ってるって……」


そのとき、背後から声。


「若いの、来たな」


振り返ると、ラセリアが立っていた。


赤髪ポニーテールが揺れ、琥珀色の目が俺を射抜く。


後ろには銀髪のリリーシャ、狐耳のミランダ、ドワーフのドルガン、黒装束のヤミカ



全員、俺を見てる。


ラセリアが腕を組む。


「このまえは断ったと思ったら、今日になって来たか?

気が変わった?」


俺は頭を下げる。


「はい……

師僧の遺言を果たして、自由になったので。

お言葉に甘えさせてください」


リリーシャが銀髪を手櫛で掻きながら、冷たく睨む。


「……怪しい奴隷坊主が、急にパーティ入り?

土魔法の邪魔にならないでよね」


俺は苦笑い。


「邪魔にならないよう、頑張ります」


ミランダが優しく笑う。


「まあまあ、若いモン。

試してみる価値はあるかもよ」


ドルガンが低く笑う。


「こいつ、なんか違う気がするぜ」


ヤミカは無言で、俺の顔をじっと見つめる。

覆面の下の目だけが、鋭く光ってる。

……なんだろう、この視線。

居心地悪い。


ラセリアが受付に言う。


「こいつを仮加入で登録。

テストは明日、ダンジョンでやる」


受付が書類にサイン。


「了解しました。

パーティ名は『ラセリアパーティ』で」


俺は肩の力が抜ける。


「……ありがとうございます」


ラセリアが俺の肩を叩く。


「これからよろしくな、若いの」


俺は苦笑い。


「若いの……ですか」


その夜、宿屋でパーティの顔合わせ。


ラセリアが酒を注ぎながら言う。


「明日から本格的に動く。

まずは金稼ぎだな」


リリーシャが俺を睨みながら、銀髪を指でくるくる巻く。


「この奴隷坊主、本当に使えるの?

戦闘の邪魔にならない?」


挿絵(By みてみん)


俺は巻物を出す。


「これ……法華プンダリカ経の抄本です。

唱えると、何か力を得られるかも」


ミランダが狐耳をピクピクさせながら興味を示す。


「へえ~、それってチートアイテム?」


ヤミカは無言で、巻物をじっと見つめる。

覆面の下から、わずかに息が漏れる。

……興味あるのか?

それとも、警戒?


ドルガンが合掌して笑う。


「南無ラトナ仏!

いいねぇ、俺の念仏と相性いいかもな」


……念仏と法華では対立するかもしれないと思ったが

ここは話を合わせよう。


「あなたもフート教徒なのですか?」


「先祖代々、イッカン宗よ。念仏派だ。」


「南無阿弥陀仏、ですか」


「あみだふーと???」


 ドルガンは疑問顔になった。


「……ああ、西のほうにそんな仏さん、いたっけか」


「へ?」


「いや、念仏といえば南方のラトナ仏だろ、普通」


ラトナ…ラトナ…

南方・宝生ラトナサンヴァ如来か!!


思うに、仏さんにも影響範囲というか、

縄張りの違う異世界があるってことだろうか。


宝生ラトナ様というと、右手のひらを見せて、

左手で衣を握っている仏様ですね?」


「そうだったかな?」


うん、手の甲を見せて指先で地面に触ってるのが

北方・阿シュク(アクショービヤ)如来だからな。

でも、ドルガンはそこまで詳しくはないようだ。

単純に、父祖からの信仰を受け継いだだけなんだろう。


とりあえず、手を合わせてみた。


「いずれにせよ、御仏みほとけの恵みがありますよう」


「おおう、坊さんに拝まれたら、

自分も仏さんになった気分だぜ」


いずれなるんですよ、あなた様も。

南無ドルガン菩薩。

いまのうちに拝んでおくから、

もしも俺より先に悟り開いたら何かご利益を。

……なんて口には出さないが。


冗談と思ったのか、ラセリアが笑った。

それが合図だったかのように、話題が変わる。


「じゃあ、明日ダンジョンでテストだ。

若のは後衛で治癒とサポート。いいな?」


俺は頷く。


「はい……頑張ります」




でも、内心では思う。


「修行中なのに、こんな力を使っていいのか?」


フート教の戒律。

俗世の欲望。

俺はまだ、葛藤の中にいる。




顔合わせが終わって部屋に戻ろうとすると、

廊下でリリーシャと鉢合わせた。


リリーシャが俺を睨む。


「……あんた、本当に怪しいわよね」


俺は苦笑い。


「怪しいって……俺、何もしてないですよ」


リリーシャが一歩近づく。


「師僧の遺言とか言ってるけど、

本当は盗んで逃げたんじゃないの?

それとも……破戒坊主?、

何日か前にに酪農村で牛飼い娘と

いちゃいちゃしてた乞食坊主って

もしかしてあんたのことだったりして?」


俺は赤面する。


「違います! 俺、修行中だから……!」


リリーシャは俺の反応に驚いたようだが、、

すぐに汚いものを見るような顔になった。


「ふん、やっぱり破戒坊主? 女の敵!」


俺は慌てる。


「違いますって! だいいち、坊主は見習いで…」


リリーシャはくるっと背を向ける。


「……ま、明日ダンジョンで本性見せてもらうわ。

邪魔なら、即切りよ」


俺は廊下で一人、頭を抱える。


「……睨まれてる……何でこんなに嫌われてるんだ」


いきなり、ヤミカが影から現れた。


「……」


無言で俺を見る。

覆面の下の目が、じっと俺を捉える。


「……あの、ヤミカさん?」


ヤミカは首を軽く傾げ、

そのまま影に消えた。


俺はため息。


「……みんな、俺のこと怪しんでるな」


でも、俺は決めたんだ。


このパーティで、俺は強くなる。

そして、験の巫女様に会いに行く。

そのために。


俺は空を見上げた。


(第十一話・了)

次は第十二話 初ダンジョン!

俺「こ、これは……南無阿弥陀仏っ!!?」


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