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第十話 ホーリー・スクロール、ゲット!!


激痛!


この異世界にもちろん、麻酔薬はまだ無い。

眠らせる魔法はあるが、ここにその使い手はいない。


泣き叫ぶ俺の肩に刃物が突き立てられ、

血に顔料が混ぜられる。

もう悟りどこじゃない、

一切皆苦すべてがくるしい」だ!



奴隷の刺青は上書きされ、無効となった。

これで俺は自由の身だ。

ありがたいけど、痛かった……(涙)


息も絶え絶えの俺に、高僧猊下は

下位の僧に命じて、大きな器に

気付け用の濃いお茶を持ってこさせてくれた。、


温度もぬるくて飲みやすい。

地べたにすわりこみ、夢中で茶を飲んでいると

高僧猊下が言った。


「これも縁だ。

罪の償いをかねて出家してはどうだね?

元奴隷の罪人でも、僧なら出世できるかもしれんぞ」


心動かされる話だではある。

けれど俺の答えは決まっていた。


「盗みをやった覚えはないけど、

生きてりゃ何かしら罪は犯してる。

その償いはしたい。…と思ってます。」


高僧猊下が軽く驚いたような顔をして俺を見た。

俺は続ける。


「でもこの寺の人たちは、俺を盗っ人と思ってる。

そんなところで心やすらかに修行できるほど、

俺は『聖人』じゃないですよ。

だからせいぜい、俗世で善行をします」


取り囲んでいた僧たちがどよめく。

高僧猊下は彼らを手で制止し、感心したように頷いた。


「なるほど……あの男。

悪くない弟子を育てたものだ」


そう言うと高僧猊下はカラカラと笑い声を上げた。

馬鹿にしてるんだろうか?


でもさんざん世話になった師僧が褒められてるとしたら、

ちょっと嬉しいかも。


「よし。お前をバリアン宗の僧侶見習いと認め登録しよう。

俗人だが、正式な行者だ。」


おおっ、これで身分が確定した!

僧侶見習い……奴隷と比べれば、冒険者にふさわしい身分!


「ありがとうございますっ!」


本心でお礼を言った。

すると高僧猊下は、


「では、『法』もさずけておかねばならんな。

これでも読んで勉強するがいい」


そう言って、頭陀袋から

そこそこ使い込まれているお経本を取り出した。

 

俺はお礼を言ってそれを受け取った。

題名を見ると「プンダリカ経 抄本」とある


プンダリカ…プンダリカ…前世で聞いたことあるような…


あっ、サッダルマプンダリカ!! 

つまり南無妙法蓮華経!

って、これ、法華経の抜粋本か!! なんで異世界に……。


そうか、法華経のブッダは「世尊」とか「仏」と

書かれている。

そして「他の仏陀も同じ教えを説いてる」と言ってる。

つまり、異世界の仏陀がお釈迦さんと同じこと喋って、

その記録が、この時代まで伝えられたという設定なんだな。


 「設定 言うな」


どっかから声が聞こえた気がしたけど、たぶん気のせい。

般若心フリダヤ経があったんだから、

法華プンダリカ経もあってそれほど不思議じゃない。


ここまで2~3秒。

高僧猊下は


「今はいわゆる像法の時代。教えが残っていても

発現することは少ない。せいぜい精進して、

あの世の師僧を、よろこばせいやりなさい」


俺はもう一度、経本を押し頂いて猊下に例を言い、

広場を後にした。


よ~し、「ホーリースクロール (聖なる書物)」ゲット!




寺を出た直後。たぶん他宗の人だろうけど、

見知らぬ僧侶が、すれ違いざまに鋭い目で俺を見て、

呼び止めた。

見かけは貧乏そうだが、妙に貫禄のある人物だった。


「お前……いや貴殿。何かの境地を得てるな」


そういわれて俺は驚く。


「え?」


その僧侶は、俺を門の横の物陰に連れて行き、

低い声で言う。


「何かしらの力と法を得てるのだろう?

そんな『気』が出ておる。

,願わくは、それを私欲で使わないよう。

人々の役に立つように使ってくれ」


ゴクリ。

知らない坊さんなのに、心に染み渡ることを言う。


そして坊さんは、小さな袋を差し出した。


「これは、少ないけどお布施だ。

…立場の上下には関係なく、

貧困者や聖人への布施は功徳を積める……

さだめし貴殿はその両方ではないかな?」


俺は慌てる。


「とんでもない!

身分の高そうなお坊さんから金品をもらうなんて!

しかも俺、見習い! 悪く言えば偽僧侶ですよ!!?」


僧侶はいたずらっぽく微笑んだ。


「相手が偽僧侶だろうと、

心からの好意で布施をすれば、

した者にはそれなりの功徳が積まれる。

受け取ったほうが地獄に落ちるだけさ」


俺は一瞬、息が詰まったが、

その言葉につい笑ってしまった。


自分が徳を積むために、

俺を地獄へ落とすって言ってやがる。

逆に言や、俺が気をまわして

遠慮するようなことでは無いって意味でもある。


「それじゃ、もらっておきます。

いつか、積んだ徳で俺を地獄から救ってください」


僧侶も笑った。

そして、俺たちは名も名乗らないまま別れた。


袋の中には、節約すれば10日以上食いつなげる程度の

金が入っていた。予想以上の大金だ、ありがたい。


俺は寺の外で、空を見上げる。


「……師僧、見ててくれ」


奴隷の身分から、解放された。


これで、パーティに入れる。


(第十話・了)




第十一話 パーティに参加、スレンダー銀髪ツンデレに睨まれて草

リリーシャ「……怪しい奴隷坊主が、急にパーティ入り? 土魔法の邪魔にならないでよね」


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