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悠久ラビリンス-とある現代社会のケーススタディ-  作者: 植葉厚史
三章

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32/42

-2039- 予定されていたリーク

翌日の昼前にマリーが


「アメノウズメ・モードは楽しかったですか?ではまた」


と手を振って帰った後、宏は昨日の録音ファイルを棚倉に送った。


一時間ほど経って、棚倉から電話がかかってきた。


「うーん。これは当時のアメリカの、組織を超えた結社みたいな連帯を感じさせる話だな」


棚倉は少し間を置いて、考え込むような声で続けた。


「ただ、もう少し検証しないとなんとも言えないな」


宏は尋ねた。


「日本で言うと、五・一五事件とか二・二六事件に近い感じですかね?」


一呼吸置いて


「日本の場合は満州を巡って事件が起きた。アメリカの場合はキューバを巡って事件が起きた。


日本は一部軍部の先鋭派の計画が杜撰で事件の全容は解明されたけれど、アメリカのそういった勢力は慎重に計画したので発覚しなかったと」


「うーん...」


少し考え、一呼吸置くと棚倉は、


「単純に暗殺というより、クーデターに近いかもしれないな。


ピッグス湾事件でCIAは軍の支援を期待したけれども、ケネディの反対で支援はほとんど得られず、ボロボロになった。


あの作戦に参加した亡命キューバ人や、マフィアもボロボロになった」


「ええ、確かに」


「CIAは共産主義の封じ込めに、絶対にキューバをなんとかしたかった。


でも失敗したどころか、ケネディは『CIAの独断専行』として責任を押しつけ、逆にCIAの解体に動き出した。


長官まで更迭して、組織を自分の思うように作り変えようとしたんだ」


宏は頷きながら相槌を打った。


「そうですね。CIAからしたら、目と鼻の先に共産主義の拠点ができるのに、何もしないどころか自分たちを潰そうとする大統領なんて、どうなんだとなるでしょうね」


「まさにそれだ。で、ある時キューバにミサイル基地が建設されてるのを発見して報告したのに、ケネディは確認と対応に手間取った。

結果、本当に核ミサイルが運び込まれてキューバ危機が起きた。


中間選挙の前だったのでCIA内部では


『ずっと前から警告してたのに、選挙のネタに使おうとしてたのか?』


と、更に懐疑的になったらしい」


「なるほど」


「さらに、ケネディは自身の選挙に協力し、CIAの手先として動く事のあったマフィアを厳しく取り締まった。


冷戦下の対応で、相互にいろんな摩擦が積もり積もったんだろうな。


元々ケネディは、それまでの大統領とは違ってアイルランド系の移民でカトリックだった。


感性がアングロサクソンのプロテスタントとは違っていたんだろう。

保守派とは特に相性が悪かった」


「極めつけは公民権運動ですか?」


「ああ。ケネディ本人は保守勢力に配慮して慎重だったけど、弟のロバートに押し切られる形で本腰を入れ始めた。


本人もかなり不安だったらしいよ。


『こんな公約を掲げて南部はどう反応する?』


って」


「で、直後にテキサス遊説に行ったんですね?」


「そこからがこの録音ファイルの内容だ」


棚倉は少し声を低くして言った。


「録音ファイルによると、教科書倉庫ビルの六階から、オズワルドに似た身長の白人男がライフルを二発撃ち、同じタイミングで隣接するダルテックスビルの二階からはピッグス湾事件に関わった亡命キューバ人が発砲し、


ケネディに当たったのはそっちの弾で、首から喉に抜けた。


直後に速度を落としたオープンカーが通りに面した茂みの脇を通り過ぎたところで、上のグラッシー・ノールの丘からサブマシンガンで放たれた銃弾が頭部に当たり致命傷を負った、ということだな。


そして、オズワルドは旧ソ連との繋がりがあったので自殺に見せかけて他殺で始末し、単独犯にする予定だったと」


棚倉は続けた。


「で、それからCIAは後任大統領のジョンソンに


『これ以上調べると旧ソ連との絡みが出てきて冷戦が拗れて第三次世界大戦になるから、捜査を打ち切れ』


と進言して、幕引きを図る予定だったってことみたいだな」


宏は頷きながら


「ええ。でもオズワルドは勘が良くて逃げ出した。探しに来た警察官を射殺して捕まったけれど、放っておくと何を喋るかわからないから、マフィアと繋がりのあったジャック・ルビーが後から口止めに行った」


と言い、続けて


「この録音ファイルでは


『実行したのはCIAのスナイパーと亡命キューバ人の混合チームで、マフィアは狙撃地点も含めて周辺の手配と警戒を行っていた』


と言ってますね」


「うーん。本当かな?」


棚倉の声に懐疑が混じった。


「教科書倉庫ビルからの銃撃は実際、目撃者は居ますけどね」


宏はそういうと、録音ファイルの続きを思い出しながら続けた。


「その録音ファイルの人がいうには


『しかし保守派も、ゆっくり進むリベラル化なら受け入れなかったわけじゃない。

あれは急ぎすぎた。


実際、ケネディを継いだジョンソン政権で公民権法は成立したし、記録的な数の福祉法案も通った』


って言ってますよね。

なんだか、実行グループの代弁みたいに聞こえますね」


録音ファイルのケネディの話はそのあたりで終わっていたが、二人の推論は続いた。


棚倉は


「弟のロバート・ケネディも、68年の大統領予備選中に暗殺されてるな。


現場ではCIA工作員らしき人物が映像に残ってるらしい。

ロバート自身、移民の地位向上にかなり熱心だったみたいだ」


と言うと続けて


「保守勢力の危機感が背景にあったんじゃないか?急速なリベラル化で国を弱体化させて、共産主義国に後れを取るのを恐れたとか」


と言った。


宏は


「そう考えると、ロッキード事件にも繋がってきますよね。


『アメリカの頭越しに共産主義国の中国に接近するなんて、何事だ』


みたいな」


と言って


「当時のアメリカの共産圏に対する警戒感は日本からはわかりにくかったかもしれませんね。世界の覇権を巡る、かなりキナ臭い争いですね」


と続けた。


棚倉はため息をつきながら。


「ちなみに弟のエドワード・ケネディも、自動車事故で橋から川に落ちて、自分は助かったけど秘書の女性は死亡してる。

不自然な事故だよな?」


「そうですね」


宏は少し声を落としながら続けた。


「大分後の99年には、ジョン・F・ケネディ・ジュニアが自家用機で夫人と義理の姉と一緒に墜落して亡くなってますしね」


棚倉は言った。


「電波で狙われたのか?」


宏は答えた。


「どうですかね?

古い話だし、アメリカの事情まで推測するのは難しいですね」


棚倉は


「まぁ、でも映画『JFK』のモデルになったジム・ギャリソンという検事が後からケネディ事件について調べたらあちこちから妨害が入って、誰が妨害してくるのか調べたらCIAだったって後日談があるよ」


というと続けて。


「あれだけの事件で個人の犯行であれば、どこかに粗はでるだろう。


ライフルを構えるオズワルドの写真も不自然で捏造されたものに見えるし、そんな事をするのは誰か?という話だ」


宏は



「事件後にロバートも『君らがやったのか?』とCIAの長官に尋ねたらしいですからね」


と言った。


「結局CIA内部の一部の先鋭的な勢力が黒幕か?」


と推論はつづいたが、これと言った結論は出なかった。


棚倉は話が一段落するとふと奇妙な感覚を覚えて


「この録音は最初から流出させるつもりで我々が耳にする事を前提に喋っているかもしれないな」


と言った。


宏は我に返り


「そういうシナリオかもしれませんね」


と言った。


それから数年の内に当初2039年まで公開されない予定だったケネディファイルは全て公開された。


いくつか新事実が明らかになったものの黒幕に繋がる決定的な証拠は出てきていない。

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