九話 義母に再会しました
九話 義母に再会しました
二人の休日が重なった時、要の母、高星才の家に向かった。家に着いたら要は飼い猫のコバンをカゴに入れた。エスパーダのためだ。
「何の用?」
「察しはついていると思う。エスパーダが妊娠してくれたんだ」
才の顔が強張った。
「あんた、分かってなかったの? 私は反対したよね」
「俺は結婚するって言った」
「女を妊娠させたって事はもう戻れないんだよ。分かってんの?」
「分かっている」
「分かってない。また小人に大切なものを奪われる」
才は泣き出した。
「父さんとは別だ」
「同じよ。私は捨てられたの。二人の子供を産んでも、慰謝料や養育費をもらってもその事実は変わらない。そして苦労して育てた息子も、同じ選択をして去っていく」
「去ってないだろ。会いに来てんだし」
「その小人を連れて来たじゃない!」
「フィアンセだから当たり前だ」
「なんで子供まで……」
「こっちは不妊治療に近い事をしてんだ。覚悟が決まってるんだ」
要は毅然と主張した。だが才の感情の爆発は止まらない。
「小人は情けをかけたら裏切るのよ! あの女、私と友達のフリして、あの男を奪った。しかもあの男の子供を産んだ。超能力だかなんだか知らないけど、うちの物壊しまくって逃げてった。その子供があんたの腹違いの兄なのよ。あの男は何食わぬ顔して、私にあんたと能を産ませた。その後、あの男はモーニングスターが好きだ。モーニングスターが忘れられない。モーニングスターが、モーニングスターが、モーニングスターが。私に何度も言ったんだ。許せるわけないだろ。モーニングスターも同様だ。私は絶対許さない!」
テーブルを強く叩いた。
要は悲哀を感じた。過去の登場人物に心を囚われた母才、そしてそんな才にしか名前を呼んでもらえなくなったマダム。どちらも女であり、母親なのだ。
要は才の部屋の台所で炒飯を作った。人間仕様の濃い味付けのやつだ。
「食べてくれ」
才は一口食べて、黙った。
「俺はエスパーダの親父さんから娘を飢えさせるなって言われてる。頼られているんだ。エスパーダも俺を頼ってくれるし、俺もエスパーダを頼りたい。それが夫婦だと思ってる。父さんはああいう人だったけど、おかげで子供を授かる事出来たんだ。感謝してる。母さんも、育ててくれてありがとう」
才はまた炒飯を食べた。
「こんなに濃い味付けじゃ、子供に障るんじゃない?」
「それは人間用の味付けだ。小人達には俺の料理、好評なんだぞ」
「エスパーダさん、頑固な息子だけど見捨てないでくれますか?」
要を無視して、エスパーダに聞いた。
「はい。地獄の底まで付き添います」
答えを聞いて、要に向き直る。
「あんたに一人の時間はなくなった。家族のために生きて、家族のために死ね。私の事は構うな」
口は悪いが、認めてくれたんだと認識した。
「後、能はフォローしなさい。心配なの」
納得し、要は才と仲直り出来たと思った。




