387日 月と夜
「久しぶりに帰ってきましたわ!」
「結花さん!勉強は大丈夫だった?」
「わたくしは問題ないのですが…みなさんに教えてたら時間がかかりました…」
「もしかして…学生全員に!?」
「はい…元々合格するはずでしたから…」
「それなら…どうして…」
「いつか話しましたが…わたくしは学校を中退したのです。」
「それは…どうして…」
「金銭面…もありますが一番はあの子が亡くなったから…」
「…もしかして月さん?」
「そうですわ。あの子のせいです…」
「あれ?」
部屋の中から滞在していた人たちがやってきた。
「…楠結花…どうしてここに…」
「わたくしが帰ってきてはいけませんか?ここはわたくしの旅館ですが。」
「…あんたが逃げ出したせいで…あいつは…」
「ごめんなさい…逃げ出してしまって…」
「…まぁ、あんなことをされたら逃げ出したくもなるよね。」
「きあら?クレア?一体どういうこと?」
「…結花が連れてった月って子、あの子はあいつにいじめられてたの。それも、もう少しで死んでしまうぐらいに。」
「あいつって…誰なの?」
「…クレアに聞いても話さないと思うのでわたくしから話しますね。彼女の言うあいつは…佐原美子と言います。夫の佐原壮介は知ってますよね?」
「そんな…そんなことが…」
「どうして瀕死になったかって?簡単だよ。私に殴り返されたからだよ。」
「クレアは泣きながら殺した。それから彼女の瞳は輝きを失った…」
「私だって死ぬはずだった。でも、死ねなかったんだ。逃げ出したかった…逃げて一人で死ねたけど…あの刑務官は私をいつも救ってくれた。だから、あの人の分も生きなくてはいけない。」
「待って…その刑務官って…」
「…怜に殺された。私に逃げてと言った直後…首を斬られた。悲しかった…怖かった…でも、生きることを選べた。」
「…うん。わたくしが彼女に初めて出会った頃のような瞳に戻ってますね。」
「…もしかして…月が殺された理由も…」
「その脱獄騒ぎの時でした。家族を見つけて幸せを噛みしめ始めた時…あの家族の目の前で噛み殺されたのです。」
「…そりゃ夜晴も恨むよ…」
「今は前を向いて生きていますわ。」
「それはよかったですね…」
悲しい話のあとには、美味しいご飯が待っているらしい。今日はしぐれちゃんがご飯を作った。
「これで…いいですよね!」
「問題ない…しかも美味しい。」
「これ野草だよね?すごい…すごいよしぐれ。」
「…それではわたくしは学校に戻りますわ。久しぶりに声が聞けて良かったです。」
「えぇ…もう行っちゃうんだ…」
「はい。今度は面接の練習をしてきます。」
「…そうか。ねぇ…もう私から離れないでね。」
「クレア…大丈夫、まだ死ねませんので。」
「…」
夕焼けチャイムが鳴る頃、優しい風がそよいだ。




