384日 頑張るしかないよ
「ねぇ、落ち着いた?」
「なんとか落ち着いた。でも、しばらく旅館として営業してないから汚いけどごめんね。」
大広間、二人の手には暖かいコーヒー。二人の間には暖かい空気が流れていた。
「そういえば、きあらは前に刑務所にいたっていうけどさ…どうして入ったの?」
「単純に詐欺。いろいろな人からお金を巻き上げて…7年ぐらいかな。それでどうして聞いたの?」
「…千草クレアという人を知ってるかい?」
「あぁ、あの殺人鬼ね。最初は少々鋭い目をしていたけど、出る時には優しそうな眼をしてたよ。だから、あの子が罪を犯した理由がわかるんだ。あの子は可哀そうだった。もう、死にたかったんじゃないかな?でも、刑務所が壊れたあの夜から変わったんだよ。」
「そうだ、刑務所を壊した犯人って…」
「神崎怜…君のお兄さんが主犯だね。みんなみんな、みんな外に出ちゃって。でも、あの子と私は出られなかったな。意外だよね。二人だけって…」
「それはそうね…あれ?ドアが開いた。」
「1泊いいかな?」
「クレアとしぐれちゃん。」
「もしかして刑務所時代の話してたでしょ。クレア、ご飯。」
「あぁ…しかし、やっと刑期満了で出所できたのね。」
「そうだね…梨穂ちゃんや葉子ちゃんにも謝りたかったな…」
「…ところで、誰?」
「あぁ、この子ね。」
「この子は流郷しぐれちゃん。」
「この子…あいつに殺されそうになったんだよ!」
「…もしかしてあの事件の最大の被害者…」
「そうだよ。私は刑務所で無事を聞いて…ずっと会いたかった!」
「私そんなすぐには死ねませんよ。死ねたらもうとっくに死んでますよ。」
「そうだったんだ…ところでみなさんはここで泊まっていくのですか?」
「そうだよ。これから一ヶ月ぐらいね。」
「私たちは試験を受けに来たんだ。いちおう大学はオンラインで通ってたし、合格できるかわからないけど…頑張ります。」
「大丈夫だよ、そこまで難しく考えないでね。」
「…どうしてそんなに人任せなんだ?」
「飛翔さん、もしかして…いや、もしかしなくても卒業生ですよね?」
「そうだよ。僕たちが作ったんだよ。僕たちが全て採点して僕たちが合格者を決める。もちろん、成績がよくないとダメだからね。」
「ということは…梨穂と葉子に合格させるように言っても…」
「ダメだね。」
「ですよね…」
「…もう日にちも少ないからさ、私たちで力合わせて一生懸命頑張ろう!」
「そうだね。ところで3人部屋って大丈夫?」
「103号室なら大丈夫だと思います。予約もないですのでそのままお入りください。夕食と朝食、その他アメニティにつきましては部屋の中の冊子にまとめてありますのでそちらをご覧ください。料金は後払いで承っておりますのでお帰りの際にお願いします。」




