(3月30日付けの手紙)その2
エヴァは、ジークに意地悪します。
真っ赤になって叫ぶジークに、意地悪したくなりました。
だって、普段は寄り付きもしないのに、都合の良いときだけツーノを呼び出すのに利用するって、友達として最低だと思うから。
冬中、無視されていて、春になったとたん、掌返しするこの人に我慢できなくなってたんです。
「だって、あなたは、冬中、ケント会長やエリザベートさまと親しくされていて、平民の私なんかに接触すらしなかったでしょう?
あ、したか。年越しの舞踏会に行くとき、他の貴族のお友達と一緒に招待してくれたわね。
でもって、舞踏会に行く皆さまと一緒に出掛けて、一応ゲストである平民を放置してったのよね。
シールド侯爵に、そうしろとでも言われてたんでしょうが、結果として、セバスチャンさんのおかげで楽しい年越しができたから良かったようなものの、あなた、私を何だと思ってるの?
ツーノを呼び出す便利な道具だとでも思ってるの?
だったら、今からでも遅くはないわ。
友達、止めましょう」
ジークは、真っ青になりました。
「と言う訳で、私、アマリエさんのお家に泊まる約束してるから、帰るわ」
「待ってくれ」
何が言いたいんでしょう?訳が分かりません。
「私の行動は、そんなに失礼だったのか?」
「ええ、でも、公爵さまと平民でしたら、あれも、ありかもしれません。
ただ、友達に対して、あれは、あり得ません」
「そんなつもりは、なかったんだ」
「じゃあ、どんなつもりだったと?」
「私は、会いたい人に会って、話したい話をしてただけだ」
「私は、会いたい人でも、話したい人でもなかったってことです」
「そんなことはない。君は、大事な友人だ」
「ありがとうございます。でも、ケント会長と大喧嘩してから、あなたが、私と話をしたのは、アマリエさんのことで文句を言いに来たときだけですよ。分かってます?
どこが親しい友達なんですか?」
「いや、君といるとスレイ翁を思い出して辛かったんだ。
ずっとスレイ翁に会いたかった。でも、雪が降ってるから、我慢してたんだ。
君も同じだろ?雪がある間は、翁に会えない。それが、どんなに切ないか」
「それは、見てて分かったわ。あんた、翁に会いたそうにしてた。
でも、特段話しかけても来なかったから、私も話すのは、よしたの」
「どういう意味だ?」
「私が小さい転移の魔法陣を作って、手紙やなんかを送るときに使ってるって、知ってる?」
「ケントに聞いた。
面白いこと考えるんだなって思った。さすが、エヴァだ」
「その魔法陣を雪が積もる前に、頑張って翁のところに置いて来たの。手紙のやり取りができるようにって」
「そんなこと考えたのか?どうして、交ぜてくれなかったんだ?」
「あんたが、翁に会いたいけど、どうしたら良い?って訊きに来たら、教えても良いって思っての。でも、来なかった」
茫然とするジークにとどめを刺したんです。
「で、翁へ手紙を送って、返事を待ってたら、翁自身が体を小さくして現れたの」
「えええええええっ!!!!!
っていうことは……」
「そうなの。私、毎晩、翁とおしゃべりしてたの」
「そんな……」
「あんたが、私のことを思い出したら、教えてあげようって思ってたんだけど、今に至ってるって訳。
でね、前々から、あんたも言うように、オンネーやカトンリーをグルっと迂回しないで黒い森を横断したら、2、3日でトーリ村へ着くんじゃないかって思ってたから、17日の午後に出発したの」
「スレイ翁に会ったのか?」
「森を通らせていただくんですもの、当然でしょ?
で、ご挨拶して、ツーノと歩き出して、森で一晩泊まって……」
ジークは、身から出た錆です。
次回、エヴァの黒い森の横断のお話です。




