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(3月5日付けの手紙)

後期テストの前にも、いろんなことが起きます。

お母さん


 お母さんは、もうすぐテストが始まるから、前期と同じく生徒会役員の皆さまから過去問をもらって、セッセと勉強してると思うでしょう?

 

 それが、そうでもないんです。



 何か、前期と同じ書き出しでデジャヴを感じますね。


 前期は、ジークフリード・セシル・フォン・ベネディクト公爵閣下のことで、学園中が大騒動したって話でした。



 後期は、何と、突然、学園を辞める生徒が出たんです。



 例年、年度末の3月になると、家計が苦しいのに見栄張って子供を学園に通わせていたお家が、借金を返せなくなって、とうとう破産してしまうことがあるそうです。

 お家が破産したら、こんな学費の高い学園にはいられません。

 泣く泣く、中退するそうです。


 今年、中退なさったのは、あのダイアナ・フォン・キャメロン伯爵令嬢でした。


 彼女のお家は、領地をもたない家で、お父さまが高級官僚として働いていたらしいんですが、この度、お父さまが、収賄容疑で逮捕されたそうです。

 

 当然、お父さまは牢屋に入る訳ですが、キャメロン家は爵位をはく奪され、ダイアナさまは平民になりました。

 そして平民がこの学園に通うには、大金持ちか奨学金をもらうしかないんですが、ダイアナさまの成績では奨学金なんか望むべくもなく、仕方なく、中退になったみたいです。

 

 でも、あれほど、伯爵家の令嬢だってことを鼻にかけてらしたんです。平民になったって知られたら、今まで見下して来た子爵家や男爵家の方々に意趣返しされる可能性が大きいんです。

 本人は不本意でしょうが、中退された方が無難だと思います。


 

 でも、一連のことに、腑に落ちないことがあるんです。


 新聞によれば、ダイアナさまのお父さまが賄賂をもらっていたのは、ここ10年以上のことだそうで、何で、このタイミングでバレたのでしょう?


 ひょっとして、タレコミ(すごい言葉知ってるでしょ?エッヘン)でもあったんでしょうか?



 マーサが貸してくれる小説では、贈収賄とか横領とかの官僚の犯罪が明るみに出るのは、内部告発かタレコミによる場合が多いんです。


 贈賄側はジルドだそうで、男爵令嬢ズを貶めた巨悪が別件で捕まったって感じで、裏に、キンバリー家の暗躍を感じるんですが、スーザンに訊いても、ネイサンさまに訊いても、話をはぐらかされてしまうんです。


 知らない方が良いこともあるって、言われて、それもそうかな、って思う私って、いい加減な人間なんでしょうか?




 いずれにしろ、エリザベートさまの金魚のフンの一角が崩れたことになります。



 先日、小さなトランクを一つ持って退寮するダイアナさまを、何人かの生徒と一緒に見送りました。


 皆さま、表向きは気の毒そうにしてましたが、本音は、他人ひとの不幸は蜜の味って思ってるのがバレバレでした。


 だって、あっちこっちでひそひそ声が聞こえたんです。


「お父さまが牢屋にはいられて、お屋敷も財産も没収されたから、無一文になったんですって」

「生活もままならないので、ダイアナさまが、お妾奉公にでなくちゃ生活できないそうよ」

「まあ、お気の毒に」

「あんなに気位の高い方にお妾奉公なんかできるのかしら?」

「でも、そうしないと食べていけないそうですわ」

「そもそも住む家もないから、学園ここを出ても、行くところがないんじゃないかしら」

「当座は、お母さまの実家のお世話になるってお聞きしましたわ」

「そんなの、いつまでもいられる訳ないじゃございませんか。

 犯罪者の家族ですのよ。いくら親戚でも、体面が悪いから、とっとと出て行って欲しいに決まってますわ」



 そんなこと言うのは、ダイアナさまがいなくなってからにしろよ!って言いたくなったほどでした。



 貴族って、嫌らしい生き物です。




 さて、気分を変えて、テストの話をしますね。


 過去問のことですが、前期は生徒会の仕事を手伝ってたから、当然の権利として、ジェームズさまやダグラスさまが持ってきてくださったのを利用させていただいたんですが、今期は、ケント会長と喧嘩別れしたせいで、まともに生徒会活動を手伝ってないので、ちょっと不安だったんです。


 でも、文化祭ぐらいまで手伝ってくれてたし、そもそも、分身の魔法陣を作ったのが私だからって言ってくださって、今期もいただくことができました。


 もちろん、持って来ていただいた過去問を人数分に増やすことぐらいはしましたが。



 で、ダイアナさまのことは、さっさと忘れて勉強してたら、ベネディクト家のピアノの侍女さんこと、アマリエさんから、3月30日に王都の国立音楽堂でコンサートを開くので、と、招待されたんです。



 わお!!!


 王都なんか行ったことないから、ものすごく嬉しかったです。

 しかも、アマリエさんのピアノが聴けるんです。


 でも、学園から王都へ行くには馬車で4日もかかるんです。

 春休みは、テストが終わってからですので、17日からです。本当は、結果発表を見てからになるんでしょうが、みんな、結果は実家に送ってもらうことにして、とっとと帰るそうです。 (補習が必要な生徒には、手紙で招集がかかるそうです)


 私も、冬休みは帰れなかったから、春ぐらいは帰りたいので、王都なんか寄ってる暇はないんですが、隣の魔法研究所にある転移の魔法陣を使えば、一瞬で行けることに気付いたんです。


 で、森を横断して村へ帰って、それからまた学園へ帰り、最後に王都へ転移すれば、何とかなるって思ったら、我ながら、良い考えのように思えて、スレイ翁に相談したんです。


 翁に、研究所の魔法陣の使用許可さえ下りたら、村への往復はツーノに任せるとお墨付きを頂いて、後は、研究所の許可をもらうだけになったんです。



 ソワソワドキドキ、担任のロックフィールド先生に相談してみたら、ちゃんとした理由があれば普通に許可が下りるそうで、『転移魔法陣利用申請書』とやらを魔法研究所へ提出して来ました。



 後は、結果を待つだけです。



                       3月5日


                王都へ行きたい エヴァ 


PS1 ジルドが贈賄で逮捕されたという一報が入ると、あの悪役4人組のマキシムさまたちが食堂で大喜びではしゃいでいるのが目撃されているんです。

 どうやら、借金がウヤムヤになるかもしれないと思ったみたいです。

 でも、残念なことに、彼等のお家の借金の返済先は、キンバリー家に変わってたんです。

 その後の憔悴ぶりは、おかしいほどでした。


PS2 ノートの複製は、ものすごく好評でした。結局、クラスの30人(元々30人だったのが、ジークが増えて31人にになってたのに、ダイアナさまが減って30人になりました)のうち、私以外全員に売れたので、銀貨145枚の儲けになりました。

 でも、前期も思ったんですが、ジークやエリザベートさまは、買う必要ないと思うのに、買うんです。よく分からない人たちです。



 

 


いよいよ、黒い森横断ツアーに向けて、エヴァが始動します。


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