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(3月1日付けの手紙)

おかげさまで、アクセス数が25000超えました。コロナのせいで、ネット小説を読む方が増えているのかもしれませんが、数多い作品の中で、私の作品を読んでくださって、ありがとうございます。

これからも、よろしくお願いします。m(__)m


後期テストの準備です。

お母さん


 

 3月になったのに、まだ雪が降ってます。


 さすがに、積もる雪じゃなく、すぐに融けそうなボタン雪です。

 暗い空から次々と地面に吸い込まれて行くのを見ていると、落ちていくのは雪じゃなく、自分の方かもしれないって気分になります。


 森の奥のあの小屋の周りは、一年中春のような陽気ですが、その周りの黒い森は、雪に埋もれて森閑と静まりかえっています。

 虫も鳥も獣も、小屋の周りで活動してても、一歩外へ出ると、深い眠りについているのです。


 毎日のように、スレイ翁やツーノと会って、あの小屋で過ごしていると、寮の私室は、小屋への入り口でしかないように思えます。


 


 ところで、私は翁たちと毎日会ってるんですが、毎週土曜の夜、男爵令嬢ズが私の部屋へ来て、スレイ翁やジークとおしゃべりすることになりました。


 男爵令嬢ズは、私が、まだ何か隠していると感じているんでしょうが、これ以上聞き出すのは無理だと考えたようです。

 それで、とりあえず、毎週土曜に翁やツーノと会うことで良しとしたようです。


 

 やれやれです。


 

 だって、いくら男爵令嬢ズでも、森の小屋のことまで教えることはできないんです。

 お父さんの服の秘密も以下同文です。



 ジークは、私が文化祭で着たあの服が、敬愛するウイリアム殿下からうちのお父さんが譲り受けたものだと知ったら、返せって言うかもしれません。


 でも、今現在、あの小屋は私のものですし、お父さんが着ていた服や、小屋にあったローブも私のものです。



 ジークがウイリアム殿下の正当な後継者であったとしても、それは領地や屋敷や爵位のことあって、森の中のことについては譲るつもりはありません。



 スレイ翁は、ジークがウイリアム殿下のやったことに憧れていて、自分も同じことをしたいと思っていることを知っています。

 でも、それを許すかどうかは、今後のジークの行動で決めると言ってます。


 つまり、ジークの今後の行動が、翁にとって好ましくないならば、いくらウイリアム殿下の直系だといっても、翁は相手にしないのです。


 もともと、ジークは、ツーノの道案内がないと翁のところへ行けない人です。

 ツーノが迎えに行かなければ、翁との付き合いも終わるでしょう。



 そもそも、ジークがおかしくなったのは、ケント会長がエリザベートさまと仲良くなってからのことです。


 ジークは、ケント会長が好きなのかもしれません。


 

 恋愛が人をダメにすることがあるって、本当なんですね。






 って、呑気なことを言ってる場合じゃないんです。



 3月10日から後期のテストが始まるんです。


 それで、前期、私のノートに味を占めた男爵令嬢ズが、後期もノートを複製して欲しいって、言って来たんです。(男爵令嬢ズは、遊んでばかりいるんじゃありません。このように、勉強のことも、ちゃんと気に掛けてるんです)


 でも、私としては、あの3つの魔法陣のおかげで、ギルドから定期的にまとまったお金が入って来るので、フォード先生の薬草園の仕事が減ってる(水撒きは月単位の契約ですが、新種の苗や種の採取ができないので収入は減ってるんです)冬でも、お小遣いに不自由しないんです。


 だから、そんなに必死に金儲けに頑張る必要ないんです。


 それで、そう言ったら、


「これは、金儲けじゃない。慈善事業だと思って欲しい」ってテレサが、


「そうですわ。ノートをとるのが苦手な可哀そうな生徒を助ける善意の行為ですわ」ってマーサが、


「お金のことは考えないで。要は、みんなに求められる行いをしたら、後からお金が付いて来るだけなんだから」ってスーザンが、


「お願い、エヴァ。ここで、ベンジャミンさまたちに負けたら、ものすごく馬鹿にされるのが目に見えてるわ。そんなの、我慢できない!

 私たちを助けると思って、ノートの写しを頂戴!」


って、パメラが言ったら、声が大きかったからでしょうか、周りのお貴族さまたちが、目の色を変えて集まって来たんです。



 お母さん、貴族って、大したものです。


 いつもは、足の引っ張り合いをしてるのに、こういうときだけ団結するんです。


 実際、私のノートがなかったら、文化祭やなんかもあって、まともに授業を聞いてなかった皆さまは、単位が取れない可能性が高いのです。


 そして、そのことに気付いた皆さまは、必殺技『掌返し』を使ったんです。

 

 いつもの、あの、馬鹿にした態度を忘れたように(一瞬で、そんなことあった?って顔を作るんです)、猫なで声ですり寄って来たんです。


「前期は銀貨2枚だったけど、後期は3枚、いや5枚出す。だから、何としても、あなたのノートの複製をいただきたい」

 ここで、「もう一声!」って言ったら、あんた、金貨1枚出す?


「そうよ。補習や留年なんてことになったら、恥ずかしくて生きていけませんわ」

 そんなに恥ずかしいなら、最初から勉強すれば良かったでしょ?


「今までのことは、水に流すから、是非ともノートの写しを」

 水に流すのはこっちの台詞で、あんたは、許してもらう方なの!


「身分を弁えずに、ジークフリートさまやケント会長とお付き合いしてたこと、許して差し上げますわ。だから、ノートをよろしく」

 それって、あんたが許す筋合いじゃないでしょ?



ってな感じでキリがないんです。

 

 で、いい加減面倒になったので、諦めて今回もノート(複製)を売ることにしました。

 

 でも、今回は、銀貨5枚もらうことにします。

 だって、そんなことする気はなかったんですから。やる以上、徹底的にやるのが私です。


 



 ところが、生徒会室の魔法陣を使って複製しようとノートを手に歩いていたら、担任のロックフィールド先生に出会ったんです。


 何というタイミングの悪さ。己の運のなさを呪いました。


 先生は、私が手にしているノートを見て、いつのも穏やかな声で言ったんです。


「エヴァ、今期もノートの複製を売るのか?」って。


 

 心臓が止まるかと思いました。


 何にも言わない私に、先生は薄く笑って、


「君みたいな生徒がいると助かる。

 例年、4割とれなくて補習を受けても身に付かなくて、留年する生徒が出るんだ。

 前期のテストは、君のおかげで、全員クリアできた。悪いが後期も他の生徒を助けてやってくれ」


って言ったんです。



 えええええええええっ???



 今度こそ、本当に心臓が止まるかと思いました。いや、5秒ぐらいは止まってたと思います。

 それほど、ビックリしたんです。



 ロックフィールド先生は、私がクラスのみんなにノートの複製を売っているのを知っていて、それで生徒が勉強するならと、放置してくれていたんです。



 先生って、すごいって、思いました。


                       3月1日


               再びノートを売る エヴァ 






何が起きても、金儲けになってしまうエヴァです。

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