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星の導きの元に  作者: 音頭
序章

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8/10

閉話 特例の外来者

「カミシロ。今後の責任は、お前に一任する。」


会議は、デスカル総機関長のその一言で締めくくられた。


「……だるいなぁ。」


会議室には、私一人だけが残っている。椅子に深く腰掛け、天井を見上げる。

これからのことを考えると――正直、気が重かった。

私はカミシロ。この国の治安維持を担う組織――統制機関の長である。

この国は四人の王によって統治されている。法案一つを決めるにも、王の許可が必要だ。

四人全員の許可があって、初めて法案は成立する。


人が裁かれるか。それとも裁かれないか。それすらも、最終的には王の判断に委ねられている。


(……まあ、今まで一度しか問題が起こったことはないわけだが。)

その一度の出来事が原因で、最終決定に王が関わる制度になった。

…この話は長くなるので、今は置いておこう。


(話が逸れたな。)


この国の治安維持を担う機関は、大きく二つ。

――執行機関。

――統制機関。


執行機関には、基本的に誰でも入ることができる。主な仕事は、犯罪者の確保と刑の執行。


一方――

統制機関は、そう簡単には入れない。

適性試験。学力試験。執行機関で五年以上勤務すること。四人の王から印を受けた証明書が必要になる。

その仕事は、情報の精査。執行機関への指示。執行機関が暴走しないよう監督すること。


つまり執行機関を止めるための機関であり、同時に、正しく動かすための機関でもある。


(……そんな場所に、あの二人を入れろとはな。)

クラウン閣下の言い分は、無理難題もいいところだった。

執行機関の仕事をさせるだけなら、まだいい。


問題は――「統制機関に入れる」という部分だ。


これは前例がない。否、前例以前の問題だ。


統制機関に入るまでの過程。試験を突破し。執行機関で五年間以上の経験を積み。王たちから認められる。その全てを、あっさりと飛び越えることになる。


(……そんなことをすれば、今まで努力してきた連中はどう思う?)


しかも――今回の相手は、この国の外から来た者。『外来者』だ。


(国民は納得しないだろうな。)


もし、今回の特例を認めてしまえば。この国は、血筋や権力によって地位が決まる国になってしまう。


それに国家憲章に真っ向から反する。

この国には――身分による格差は存在しない。

そう明記されている。


(裁判にでもなれば、こちらが敗訴するだろうな。)


……まあ。王が「無罪」と言えば、それで終わるのだが。

それでは――法も。制度も。国民の自由も。全てが王の匙加減になってしまう。


「……」


私は窓の外を見る。自由があってこそ、幸福がある。私は、そう思っている。

だからこそ――「預かる」と言った以上。嘘はつけない。


(……仕方ない。)


統制機関であって。統制機関ではない。そんな、矛盾した仕事を彼らにさせるしかない。


検死。諜報。暗殺。粛清。それ以外の仕事。


私はあの時ふと思い出した。

偶然にも――統制機関の誰もが嫌がり、ずっと空いていたポストが一つだけあった。

そこなら。問題は起こらないはずだ。


私は椅子から立ち上がった。


「そうと決まれば……明日、伝えるとするか。」


そして――


「ああ、後は名前もだな。」


この国では、元々名前があったとしても、外来者には身分上の名前が必要になる。

すでに役所には通達済み。身分証も、もう届いている。

私は書類を確認する。


「キラキラネームではないからな。」


誰に言うでもなく呟く。


「気に入らなくても勘弁してくれよ。」


そう言って、私は会議室を後にした。


          ◆


――会議終了後。俺は、ひどく嫌な気分だった。


「空いているポストに入れる……だと?」


拳を握る。


「冗談じゃない。」

「あそこは……」


俺は焦っていた。そして、懐から通信端末を取り出す。

しばらく迷った後、電話をかける。


「……俺だ。」

『なんだ?』

「彼女は無事なんだろうな?」


電話の向こうから、男の声が返ってくる。


『自分の首が心配か?』

「……」

『それとも、統制機関に転入者が入ってくることか?』

「!?」


俺は目を見開いた。


「……なんで知ってる?」


おかしい。これは我々でなければ知り得ない情報だ。


『あんたが俺に連絡してくる時ってのは、大体焦っている時だ。』


男は淡々と答える。


『今日あったことと言えば、クラウンのことだろ?』

「……」

『だったら、統制機関のことじゃないか?』


男は少し間を置いて――


『その反応、本当だったのか。まさか本当に転入してくるとは思っていなかったがな。』

「……」

『まあ、彼女は無事さ。』

「ならいい」

『良くはないぞ。』


男の声が低くなる。


『彼女、水も飲もうとしないし、何も食べようとしない。』

「……」

『このままじゃ餓死するぞ。』

「……」

『俺が彼女を返しておこうか?そのほうが、あんたのためになるんじゃないか?』

「……無理やりにでも食わせろ。」

『あんたが「丁重に扱え」って言ってきたんだろ?』

「……」

『なら追加料金だ。』

「守銭奴め。誰が払うか。」

『そうか。』


男は楽しそうに笑った。


『本当に追加料金なしでいいんだな?』

「……」

『この場所が彼らにバレても、俺は知らんぞ。』

「いい。何度も言わせるな。」


電話の向こうが一瞬静かになる。


『……そうか。』

『俺は金以上の働きはしない。』


声から笑みが消えた。


『もし彼が来ても、傷一つでも付けば俺は撤退する。』

「……」

『それだけだ。』


プツッ。


電話が切れた。


「……」


俺は通信端末を見つめる。


「あんなガキに、何ができるっていうんだ。」


吐き捨てるように呟いた。


          ◆


一方――


「……」


電話を切った男は、静かに通信端末を置いた。


そして――口元を歪める。


「どこまでできるのか……。」


男は、不敵な笑みを浮かべた。


「見ものだな。」


窓の外へ視線を向ける。

その瞳には、明らかな興味が宿っていた。


「見せてもらうぞ。」

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