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星の導きの元に  作者: 音頭
序章

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5/10

規格外の体と姉の異変

wifiに不具合があり、パソコンを使えない状態で投稿遅れました。

申し訳ないです!

おかしい。こんなはずではなかった。

俺がオルタナティブから聞いていたのは――

(旋風のエネルギーを凝縮して結晶化。その結晶を取り出させることで、凝縮したエネルギーを一気に解放し、同程度のエネルギーを爆発させる……って話だったんだけどな。)


「……どうしてこうなった?」


周囲を見渡す。

どう見てもクレーターができている。大地が大きく抉れている。


「……。」


間違いなく同程度じゃない。というか規模がおかしい。意趣返しとして面白いかなと思っただけなのに。


「……やりすぎたな。」


実際、さっきまでいた男たちは影も形もない。


「死んでないよな?」


そう思いたい。というか、死んでいてほしくない。転生初日に人殺しとか、洒落にならない。


(……俺、もしかしてヤバいのに転生した?)


改めて自分の身体を見下ろす。

剣で斬れないほど硬い身体。

燃え盛る炎を浴びても、効かない。

身体の中には、あの巨大なムカデ――俺自身もまだよく分かっていない力の源が存在している。

そして術式や能力の演算を行い、俺を補助する謎の存在――オルタナティブ。


「……。」


一つずつ考えてみる。


「……これ、普通にヤバくない?」


少し挙げただけで、この有様だ。どう見てもオーバースペック。俺には過ぎた身体だ。

転生させてもらったこと自体はありがたい。ものすごくありがたい。

でも――


「普通の人間でよかったんだけどな……。」


平凡でいい。平和に暮らしたい。目立たず。騒ぎを起こさず。静かに第二の人生を楽しみたい。

……なのに。


「蟲融人《インセクトマン》……だったか?」


さっき男が言っていた言葉を思い出す。


「なんだよ、その馬鹿げた種族は。」


人間でありながら、蟲の性質を使える存在……ということなんだろうか。


「それにしても……。」


俺は自分の身体を見る。


「ワンチャン、世界を滅ぼせるような力まで持ってたりしないよな?」


怖い。こういう規格外の能力を持った奴って、大体ろくな目に遭わない。


「……よし。」


俺は決意した。


「せめて目立たずに生きよう。」


平穏第一。目立たない。争わない。静かに生きる。


「……ただ、服どうしよう。」


今の俺は――全裸だった。


「そうだ!」


俺は手を叩く。


「あの男!」


最初にドロップキックした男がいた。

姉ちゃんには申し訳ないけど…

流石に、この姿で姉ちゃんと話すのは恥ずかしい。というか男のプライドが許さない。


「姉ちゃん! ちょっと待ってて!」

「ええ? うん。分かった。」


姉ちゃんは、何を言われたのかよく分かっていない様子だった。

とりあえず――この場を離れることには成功した。

俺は煤だらけの身体で、そそくさとその場を後にする。


そして――


「……うわあ。」


少し離れたところまで来て、岩場を覗き込む。

そこには岩盤にめり込んだ男がいた。岩には大きな亀裂が走っている。

男の鎧は、見るも無惨にひしゃげていた。


「……。」


俺は引いた。


「これは死んでるな。」


間違いなく死んでる。初日に人殺しをしてしまった。


(やっべ~……どうするよ、これ。)

俺が殺した……よな?

(正当防衛じゃあ……無理だよな。)

十中八九、俺が捕まる。それに正当防衛でホームランを出す奴がどこにいる。

実は先制攻撃だったから正当防衛かも怪しいラインだ。


「……。」


しばらく考える。

(……悪者だったんだ。悪は滅んだ。それだけのことだ)


「……うん。」


俺は自分に言い聞かせるように頷いた。


「どうすりゃいいんだ?」


男の鎧を掴み、引っ張ってみる。


「……。」


びくともしない。


「……。」


もう一度。


「ぬおおおおお!」


動かない。


(どんな力があったら、こんなに岩盤へめり込むんだよ!!誰だよ、こんなことした奴!!)


「……俺だったわ。」


自分でやったことを自分で解決できない。なんという矛盾。

そのときだった。


(鍛冶の手《ハンズ・オブ・ヘパイトス》を使用しますか?)


「……!」


来た。神の一手。


「いいじゃない!」


俺は即答した。


「もちろん使う!」


すると両手から白い蒸気が噴き出した。手の表面が赤熱し、まるで溶鉱炉のような色へ変化していく。


「……おお。」


試しに、岩盤へ軽く触れてみる。


ジュウウウウウ……。


「……。」


岩が溶けた。岩盤がまるで溶岩のようにドロドロと崩れていく。


「……うわぁ。」


思わず引いた。


「えぐ……。」


これなら男を岩盤から取り出せる。

だが――


「……これ、まともじゃないな。」


俺は改めて自分の手を見る。

(俺の身体、どうなってんだ?)

そんな疑問を抱きながらも、作業を続ける。


ボトン。


「うおっ!」


岩盤から男の身体がずり落ちてきた。

だが、溶けた岩が鎧に触れた瞬間――


ジュウウッ!


「……あ。」


鎧が溶け始めた。


「ヤバい!」


男の服まで一緒に溶ける!


「俺の服が!」


慌てて能力を解除する。そして力任せに男を持ち上げ、鎧を剥がした。

溶けかけた鎧は、するすると男の身体から外れていく。


「よし……!」


服は無事だった。


「……。」


俺は服を見る。


「……だっさ!」


思わず声が出た。

上は、どろどろした生物が描かれたプリントTシャツ。下は、ぼろぼろのズボン。


趣味が悪い。だが、背に腹は代えられない。


「……仕方ないか。」


俺は渋々服を着る。普通なら絶対に着たくない。破って捨てたいレベルだ。


「……まあ、裸よりはマシか。」


そう自分に言い聞かせる。そのときだった。


「……!」


遠くから足音が聞こえてきた。しかも姉ちゃんがいる方向から。


「……姉ちゃん?」


胸騒ぎがした。嫌な予感がする。俺は急いで服を着終えると、姉ちゃんのもとへ走った。


「……え?」


そこには何人もの人間がいた。

しかも、さっきの連中とは比べものにならない。武装した冒険者たちが、姉ちゃんを取り囲んでいる。

俺は思わず足を止めた。


特に目を引いたのは――先頭に立っている、青髪の男。


「……ただ者じゃない。」


男からビリビリと肌を刺激するようなプレッシャーを感じる。

まだ何かをされたわけではない。だが不穏だった。


そのとき。


「てめえ! その服!」


青髪の男の近くにいた男が、俺に気づいた。バンダナを巻いた男だった。指をこちらへ向けている。


「……?」

「その服だよ!」


俺は自分の服を見る。


「自慢の服装ですが何か?」


もちろん。俺があの男をどうしたのか悟られるわけにはいかない。ここは堂々としておこう。


「そんなわけあるか!」


バンダナの男が叫ぶ。


「そんなスライムのシャツを着てる人間が二人もいるか!」

「……。」


ひどい言われようである。死人に口なし…ではない。これは完全に死体撃ちだ。


「これ、スライムなんだ……」


マスコットにしては、えらくドロドロしている。


「人気出なさそうだな。」

「あん?」

「いや、何でもない。」


危ない。つい本音が出た。

その刹那ー


ビュッ!


「――ッ!」


男が風を切って距離を詰めてきた。速い。しかも、片手にはナイフ。


「速っ!」


やられる!(たぶんやられないけど。)

俺は武器を持っていない。これは中々にピンチ?


「うおっ!」


ドンッ!


勢いのまま押し倒される。背中が地面に叩きつけられた。


「……!」


喉元に、ナイフが突きつけられる。


「あいつをどうした!?」

「……。」


答えられない。というか答えても、絶対信じてもらえない。

ドロップキックしたら飛んでいきましたなんて…そんな話誰が信じる?


「だんまりか。」


男が笑う。


「まあいい。身体に聞けばいいからな。」


ギラリ。


ナイフが不気味に光る。


(ほら、やっぱり、ろくなことにならないでしょ。)


俺は心の中でため息をつく。この後の展開は何となく分かる。

このナイフ。たぶん無駄な努力だ。俺の身体に刺そうとした瞬間にナイフが折れる。


とはいえ。

(……何とか穏便に済ませる方法はないものか。)


そのときだった。


「ウェルス!」


青髪の男が怒鳴った。


「それ以上はやめろ!」

「……!」


俺は胸を撫で下ろしかける。

(お、これは穏便に済みそうだ)

――そう思った。その直後。


「まさくん……。」

「……?」


姉ちゃんの声が聞こえた。


「大丈夫……。」


姉ちゃんは、ぶつぶつと呟いている。


「私が……私が付いてるから……。」

「姉ちゃん?」


様子がおかしい。


「私が……守るから……。」


その瞬間。俺はさっきから感じていた胸騒ぎの理由が分かった気がした。


「ウェルス!」


青髪の男が叫ぶ。


「下がれ!」

「は?」


次の瞬間――


ドォン!!


ウェルスと呼ばれた男の身体が、水の塊に包まれた。


「ぐっ!?」


包まれたままどこかに飛ばされる。


「ごぼぼぼぼ!!!!」


男はどこかに消えていった。


「……!」


その場にいた全員が凍りついた。


「……ゥゥゥ……」


低いうなり声が、辺りに響き渡る。


「……。」


俺は、ゆっくりと姉ちゃんを見る。


巨大な鯨。

その巨体が、ゆっくりと動く。


「……あ、あ……」


俺は驚きのあまり、その場から動けなかった。

姉ちゃんが俺を守るために、明らかな敵意をその身にまとっていた。

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