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星の導きの元に  作者: 音頭
序章

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4/10

やり過ぎた

ドゴォォォォン!!!


爆音を轟かせながら、男の身体が吹っ飛んでいった。

それもとんでもない勢いで。


「え?」


俺は、その場に立ち尽くしていた。


ドガァンッ!!


遥か彼方で男が岩に激突する。

次の瞬間には岩が砕け散り、その破片がこちらまで飛んできた。


「……え?」


俺は、自分の足を見る。

(……俺、そんなに力入れてないはずだけど?)

しかもあの勢い。絶対死んだじゃん。


「やべえ~……。」


冷や汗が流れる。


「殺しちゃったよぉ。どうしよ……」


転生して。地面に埋まって。脱出して。姉ちゃんを見つけて。ドロップキック一発。

そして、人一人死亡。


「……。」


こんなにコミカルに物事が進むことなんてある?


「うそーん……。」


もっとこう……段階を踏むものじゃないの?

すると…


「てめえ!!」

「殺せ!!」

「……。」


声のした方を見る。


うわぁ……。


めっちゃ殺気立ってる。しかも「殺せ」とか言ってる。

怖いわ~。男たちは剣を抜いている。


……マジじゃん。


「……フッ。」


俺は一歩前に出た。

そして手のひらを曲げる。挑発するように指を動かした。


「かかってこい。」


(こうなったら、やけだ。どうとでもなれ。)


「まさ君……」


後ろから姉ちゃんの声が聞こえる。

見ている。俺のことを姉ちゃんが見ている。

なら―


「……いっちょ、やったりますか。」


…これフラグじゃないよな?

そう思った直後だった。


「ふざけやがって!」


男の一人が叫ぶ。


「全裸の変態野郎が!!」

「……。」


ぜ、全裸の変態野郎!?


「おいおい、どこにそんな変質者がいるんだよ!」


俺は周囲を見渡した。

右。左。後ろ。

……いない。いないじゃないか。


「おめえだよ!!」

「え?」


指を向けられる。俺に。


「うっそ!?」


自分の身体を見る。

「……」

「……」

「……ほんまやん。」


何故今まで気づかなかったんだ。


俺は最初、土の中にいた。

土だった。土だった。ずっと土だった。


「なるほど……。」


俺は深く頷いた。


「俺は自然だったんだ」

「何を言ってやがる!?」

「……?」


こいつは何を言っているんだ?

まあ言っている俺自身にもよく分からないけど。


「わけわかんねえことを、しゃあしゃあと……!」


男が剣を構える。


「死ね!」


横薙ぎ。剣が俺の首へ一直線に迫る。


「あ。」


やっべ、ボケを考えるのに必死で見てなかった。


(こりゃあ、終わったな)


やっぱりフラグだったか。慣れないことをするもんじゃないなあ。


それにしても、我ながら死ぬ瞬間なのに何でこんなのんきなんだろう。


「いッ!」


カラン。


何かが地面に落ちる音がした。


「……あれ?」


俺は自分の首を触る。手が赤く染まった。血だ。


「……。??」


でも斬れていない。

正確には表面だけが薄く切れている。


「……え?」


俺は首をさする。


「な、な、な……」


そして男を見る。ここで強気のロールプレイだ。


「何かしたか?」


明らかになが多い。どう見ても動揺を隠しきれていない。

俺だって、なんで首が斬れていないのか分からないんだもん。


「てめえ……」


男が目を見開く。


「蟲融人《インセクトマン》かよ……。」

「は?」


蟲融人?


「誰が蟲人間だ。お前、頭大丈夫か?」


何を言っているんだ。普通に考えて、蟲の人間なんているわけないだろ。

……俺の身体の中には、確かにめちゃくちゃデカいムカデがいるけど。


「俺はどう見ても人間だろ」


幻覚でも見てんのか?

というか――


「俺のロールプレイ、何の意味もなかったじゃん」

「……?」


男が困惑している。その瞬間だった。


スッ――。


男が横へ跳ぶ。


「「ファイアストーム!!」」


「……え?」


次の瞬間。


ゴォォォォォッ!!!


燃え盛る炎の旋風が、俺へと襲いかかった。


「うわああああああ!!」


熱風が全身を包む。


「あづーう!!」


俺は炎の向こうを見る。さっきまで戦っていた男しか見えていなかった。

その後ろには、何人もの女たちがいた。


「……魔法使い!?」


やられた。


「あの男、時間稼ぎしてたのかよ!」


まんまと引っかかった。


「他にも何人かいたよな!?」


くっそー。詰めが甘かった。


「……」

「……」

「……?」


熱い。確かに熱い。

だが――


(……あれ?)


さっきより、熱くない。

むしろ。


(なんか、慣れてきたぞ)


そもそも――

「始めっから、こんなに熱かったか?」


俺が首を傾げている間にも、炎は燃え続けている。


その頃、俺を攻撃した連中はすでに勝利を確信していた。


「何だったんだ、あいつは?」

「さあな。」

「せっかくだし、魔石だけもらいましょ。」


女が楽しそうに笑う。


「外の世界に売ったら高価だし。一生遊んで暮らせるわよ。」

「そうだな。」


彼らは笑っていた。俺が死んだ。そう信じて疑っていない。


一方、その頃の俺は――

(どうやったら面白いかなあ?)

ボケを考えていた。


(せっかくだし、一発芸でもやるか。インパクトのあるやつ、ないかな?)

いくら頭を捻っても。


「……。」


出てくるのは、陳腐なものばかり。


(オルタナティブ!出番だ! 何かプリーズ!)


(了。提案を思案中……。)

(演算中……。)

(演算終了。)


俺は、オルタナティブから提示された案を見る。


「……面白い。」


口元がニヤリと上がる。

(それでいこう!!)


俺は、オルタナティブの案に賛同した。


炎が消えた。そこに残っていたのは、真っ黒に焼け焦げた人の形をした何か。


「見ろよ。」


男が笑う。


「丸焦げになってるぜ。」

「自分の実力も分かってねえのに立ち向かってくるからだ。」

「そんなことより魔石よ、魔石!」


女が目を輝かせる。


「ああ……こんな日が来るなんて夢みたい。」

「焦るな。」


男が笑う。


「死骸は動かないんだからな」


死人に口なし。彼らにとって、ついさっきまで生きていた存在は今やただの宝に過ぎなかった。

男たちは剣を構え、慎重に黒焦げの物体を叩き始める。


「まさ君……。」


その後ろでは巨大な鯨が涙目になっていた。


「そんな……。」


俺が死んだ。そう思っているのだろう。

その姿を見ながら、男たちは黒焦げの身体を調べる。


「あら?」


女が何かを見つけた。


「これかしら?」


それは緋色に輝いていた。

周囲の光を反射し、鮮烈な赤い輝きを放っている。


「綺麗……」


女が手を伸ばす。それは、まるで宝石のようだった。


――緋色の魔石。


「これを取り出せば……。」


その瞬間。


「待て!」


男が叫んだ。


「それは魔石じゃ――」


ドガァァァァン!!!


けたたましい爆発音が、平原を揺るがした。

凄まじい衝撃波が発生する。

大地が震え。土煙が舞い。周囲にあったものが、まとめて吹き飛んでいく。

男の叫び声は、轟音の彼方へ消えた。


爆発の中心に残ったのは一頭の巨大な鯨と黒い何か。


「……。」


ゆっくりと黒い何かが立ち上がる。

全身を覆っていた黒焦げの煤が、ぱらぱらと地面へ落ちていく。

その身体から――


「……ふぅ。」


聞き慣れた声が響いた。


「……これはやり過ぎだなあ。」


男たちが吹き飛んだ光景を見て、ぽつりと言った。

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