悪巧み
今回分かった事としては、チマチマやっていたら埒が明かない上、物量で押しきられると、逃げきることができないということだった。
俺は幸せにくらしたいのである。感染したかわいそうな人を見棄ててでも幸せになりたいのである。
今回は感染者を自衛隊の人が引き付けてくれたので助かったが、次もまたいるとは限らないのだから当てにしないのが懸命であろう。
自分で身を守る力を手にしなければならないと言うことである。
この、現代日本というのは、実に危険な薬品が簡単に安く手に入る状況にある。なぜか、それは暮らしを豊かにする上で無くてはならないものであるからである。
特に危険なものに悪魔と天使と呼ばれる物質があって、今回は悪魔の方だった。
非常に気が引ける。
そう、我が家にはガキィちゃんがいて、大変に教育に悪い。俺が想像するに、子供と言うのは親の写し身であって、その言動、行動全てを模倣して自らの行動理念としていくところがある。そして、この家にいる彼女がしていることと言えばご遺体の損壊である。あれはおそらく、俺が、感染の原因を確かめようと解剖していた時の姿を見ていたに違いなかった。
「あの、ですね。もうちょっと普通の人に擬態する方法を學んだ方が良いかもしれないね」
すると、真ん丸な目をさらに丸くして、なにか言いよどんでいるような、モジモジとしたような態度でいたが、やがて
「擬態する方法、ね。そういう人は自分自身がそうやって生きてるってことじゃん」
「ハハハ。そうだね。俺は自分が変なのを自覚していますよ」
そして今は二人っきりなのである。
「心を持たない人間は2万人に1人産まれてくると言います。俺達は1人ではない」
「不快だよね。人じゃない、化物って叫ばれるのもさ」
「悪いことをするので見ないでもらえませんかね?」
「これ以上、何を悪いことするって言うのさ」
そこで、圧力鍋と、爆薬とベアリングの玉と導火線とを持って、部屋の中にどかりと座り込んだ俺は、本当に見せたくないのだがな、と思った。
お互い見た目は違うが、好奇心と言う点で酷く似通った二人であるので、隠しても見られてしまうと言うのもあった。
俺達は揃いも揃って変なやつであった。人が、死にたくないと呻く様が、ありありと、生きることにすがり付く様が、本当の人間のように感じられた。俺達は学校や家庭や社会で、何かの仮面を被ることを教育されて、しかしその仮面は簡単に剥がれ落ちるものなのである。
今その状況にあってこそ、本当の生きている意味を問いかける。




