首
俺は頭をエコバックに入れて家へ持ち込んだ。
中身は畑に来た女の生首だった。
俺は普通じゃないが、普通じゃないことを認識しているので他人への配慮を心がける。
皆が幸せに生きれるのは、俺のような人間が気を使って生きているからだ。感謝してほしい。
中身を周りから見えないようにし、さらには腰を曲げていつも馬鹿みたいに大きな体を小さく丸めて家へと帰った。
まるで初めてR18本を買って帰った日みたいだった。
それで、どういうわけか、こういう日に限って見つかるのだった。
「あれ、農家さんおかえり」
玲子さんの優しい声で、びくっと背中がひきつった。
口の中に唾液があふれる。
飲み込まないと。
ごくり。
その音が嫌に大きく廊下に響き渡った。
「た、ただいま~」
「なにそれ。あやしい」
女のこういう時の勘というのはなんでこんなに鋭いのだろうか。
その上、やめてと言っているのに俺から手提げを取り上げて中身を覗き込んだ。
なんでだ。誰も幸せにならないのに。
土の中のモグラをわざわざほじくり出して笑いものにしなくてもいいじゃないか。
彼女はバッグの中身をじろじろと見て、目を真ん丸にしていた。
「お医者さんに言わないで」俺の声は震えていた。
「え、言うけど。どういう趣味してんの」
「違うんですよ。こ、これはね、科学的興味であって、変な意味があるわけじゃないんだ。断じてそういうのじゃないから。言わないで」
言い訳すればするほど、俺は小さくなっていく感じがした。
ああ、そんな目で見ないでくれ。人生で経験した恥ずかしい失敗が絵本をめくるみたいに頭の中で再生される。ああ、俺を見ないでくれ!ちゃんと理由があるんだから!!
死を理解したかったから彼女を持ってきた。
彼らの死。感染者の死。
通常、人間の死とは、心臓の停止、呼吸の停止、瞳孔の散大、そして光への反射の消失が規定されている。
感染者はこのどれもが壊れている中で、まるで生きているみたいに動いているのだ。
彼らは死にながら生きている。
俺はこの頭の中に何か秘密があるのではないか、開けてみればその理由が分かるのではないかと思って頭を運んできたのだった。
「最っ低」
それが俺に下された評価である。
もう見られたしどうでもいいやという気持ちで、洗濯機に頭を入れて洗った。
猟奇的殺人鬼になった気分だ。絵面がやばい。とても表現できない。
夜になって妙に生臭い笑顔をしたお医者さんに肩をたたかれて、「わかるよ~」なんて言われた日には、もう涙で枕を濡らすしかねぇって。




