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ユンボ

 重機ってカッコいいよね……。

 男の子ならば誰しも憧れてミニカーを持っていたであろうその車両。我らが糞田舎では高すぎるその買い物をリースすることで使うことができた。

 日本での労働災害で亡くなった方が何で一番亡くなっているかというと、土木作業だった。その中でも重機による労災は全体の40パーセントを占めており、その危険性が数値の上からも明らかだろう。


 なぜそんなに危ないかと言えば油圧にあった。車体重量3トンのユンボが積んでいる油圧ユニットの能力は300キロほど。さらにそこから油圧シリンダを通して最終的な能力は3トンから4トンほどとなる。それだけの力があの車にはあるのだ。車をぶつけたときの衝撃ではなく、あのアームの単純な力でそれだけある。


 それをだな、人なんかに使うとな、人は死ぬ。簡単に死んでしまう。

 簡単に2から3メートルほどの穴を掘ることができ、それは、人が立った状態で頭まで隠れる高さだ。それで法面を崩せば、生き埋めになってしまう。


 それ、ゾンビにやったら一網打尽では?


 俺は、そういうとこ冷静だから、危ない橋は渡らないんだわ。確実に簡単に一方的に倒さないといつまでも死人の相手はできんて笑


 車体重量は3トンを選んだ。単純にこれよりも小さいとバケットのサイズが小さくて仕事にならないし、これよりも大きいと燃料をバカみたいに食うのでこの状況では避けたかった。

 燃料は軽油を使う。だから車との競合はなく、災害時でも比較的手に入りやすい。エンジンは直列3気筒。材質はアルミ合金。


 借りてきた(人がいなかったので借用書を書いた)ユンボのエンジンルームを開けてまずは油の量をチェックする。足りないと容易に焼き付きを起こすエンジンのため大変に気を遣うのだった。


 面白いことにこの建設機械にはクラッチやトランスミッションが存在しない。エンジンから直接油圧ユニットに繋げて油を押し出す形式のためめちゃくちゃ構造が簡単。さらには、気にするべきが、油圧を分配するマニホールドまわりとファンベルトくらいなので、実に良い設計をしてらっしゃる。くやしいが、ここには何年も積み重ねた企業努力があった。それでもなくならない労働災害。ぐぬぬぬ。


 エンジンを確認し終わったら、ユンボの後ろと前を見る。


「後ろ良し!前良し!」


 この一大事に何をと思うだろう。こういう急いでいるときほど基本が大事なのだ。ユンボはとくに死角が多く、人を巻き込む事故が多い車両である。


 運転席に乗り、シードベルトを閉め、安全ロックを下げた状態で2本のジョイスティックと前進後退用のレバーをガチャガチャと動かして固着がないことを確かめ、安全ロックを上げて、エンジンキーを半回転させる。


 すると、作動を知らせるアラームが鳴って(感染者に気がつかれた)メモリが一気に右に振れる。

「計器良し!」

 やっとだ。やっとキーを右にひねってエンジンをスタートさせる。

 そして、安全ロックを下げて動く状態になった。


 その複雑な開始動作は講習を受けてないバカが下手に動かして壊さないように作られた。そのお陰で目の前まで感染者はせまるせまる。


 相手は老人だった。手に使い込まれた杖を持っている。感染前に杖で防御したのか歯形がいくつもついて、所々ひしゃげている。

 目は片方飛び出して顎は外れていて内蔵を引きずっている。もう、マジ死んでるって状態。


 だから右のジョイスティックを引いてアームを持ち上げ、左のジョイスティックを左に倒して左旋回して頭にバケットを固定。そのまま右のジョイスティックを前に倒した。


 アームは倒れる。油圧によって物凄い力のかかったアームは、メリメリメリ!!!と音を立てながらその感染者を視界から消してしまった。


 恐らくだが、立ったまま地面に埋まってしまった。


 ガハハハハ!!!!すごいぞ!!、これは全く疲れない!!!駄目押しで前後レバーを前に倒してキャタピラで前進。金属のキャタピラが感染者の上を走って確実に息の根を止めてしまった。


なんとこのユンボの操作資格は2万円と2日間の簡単な技能講習でとれてしまうのですよ……。こんなのとらない理由がありますか!!???!!

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