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喫茶 停車場  作者: みそのKS


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外伝27 定休日


水曜日だった。


午後。


若い男は停車場の前で立ち止まる。


「……休み?」


シャッターには一枚の張り紙。


本日休業


若い男は少し笑った。


「珍しいな。」


そのまま家へ帰った。



木曜日。


カラン。


「こんにちは。」


「おう。」


いつもの停車場だった。


高橋は新聞。


マスターはコーヒーを淹れている。


若い男が席に座る。


コトッ。


頼んでもいないコーヒーが置かれた。


「ありがとうございます。」


一口飲んでから聞く。


「昨日どうしたんです?」


「免許更新。」


「ああ。」


「普通免許ですか?」


「大型も。」


若い男は驚く。


「まだ更新してるんですか?」


「けん引もだ。」


「全部ですか?」


「全部。」


「使うことあるんですか?」


マスターは少し考えた。


「ない。」


「じゃあ、なんで更新するんです?」


「もったいない。」


若い男は思わず笑った。


「そんな理由ですか。」


高橋が新聞を畳む。


「今日ここへ来るなり、深視力は嫌いだってぼやいてた。」


「深視力?」


「大型の検査だ。」


マスターが頷く。


「三本の棒。」


「真ん中の棒が前後に動く。」


「並んだと思ったら押す。」


「難しいんですか?」


「難しい。」


「早いとずれる。」


「遅くてもずれる。」


「じゃあ、どうするんです?」


マスターは少し考えた。


「勘。」


若い男が吹き出した。


「勘なんですか。」


「最後は勘だ。」


高橋も笑う。


「毎回そう言う。」


「でも受かる。」


「受かる。」


マスターは静かにコーヒーを飲んだ。


「今年も勘が当たった。」


店の中に笑いが広がる。


若い男が聞く。


「更新終わって、そのまま帰ったんですか?」


「いや。」


「え?」


「ぶらぶらした。」


「どこをです?」


「免許センターの近く。」


「何しに?」


「歩いた。」


「目的は?」


「ない。」


高橋が頷く。


「昔からだ。」


「目的もなく歩く。」


「たまに消える。」


「消えるって。」


マスターはカウンターの下をごそごそ探した。


「ほれ。」


コトッ。


若い男の前に木彫りのキーホルダーが置かれた。


「……何ですか?」


「土産。」


「ありがとうございます。」


若い男は手に取って眺める。


「クマですか?」


マスターも覗き込む。


「多分。」


「多分?」


「店の人も分からんって言ってた。」


「えぇ?」


高橋がポケットからキーホルダーを取り出す。


「俺も。」


若い男は見比べた。


「これは猫ですか?」


「多分。」


「高橋さんももらったんですか。」


「同じ店。」


若い男は二つを並べる。


「……。」


「似てますね。」


「似てるな。」


「どっちがクマなんですかね。」


マスターが答える。


「好きな方でいい。」


「そんな適当でいいんですか。」


「いい。」


また店の中に笑いが広がった。


帰り際。


若い男はバッグにキーホルダーを付けた。


クマなのか。


猫なのか。


結局、分からなかった。


でも。


休みの日に自分のことを思い出して買ってきてくれた。


それだけで、少し嬉しかった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


続きが気になりましたら、ブックマークや評価をいただけると筆者がとても喜びます。

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