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喫茶 停車場  作者: みそのKS


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外伝21 マスターって何者?


日曜日だった。


停車場は静かだった。


店には誰もいない。


マスターだけだった。


カウンターの中でカップを磨いている。


ジャズが静かに流れている。


穏やかな午後だった。


カラン。


ドアベルが鳴る。


「こんにちは」


三人連れだった。


女子高生。


サラリーマン風の男。


そして女性。


マスターは顔を上げる。


「おう」


女子高生が笑う。


「こんにちは」


サラリーマン風の男も会釈する。


「どうも」


女性は少し緊張した様子だった。


三人は席に座る。


マスターが水を運ぶ。


女性は店内を見回した。


「ここなんだ」


「そう」


女子高生が答える。


「文化祭の時にコーヒーを教えてもらった店」


女性はマスターを見る。


「へぇ」


今度は夫を見る。


「あなたも来たことあるの?」


「ある」


「何しに?」


「Excel」


女性が首を傾げる。


「エクセル?」


「関数教えてもらった」


「喫茶店で?」


「喫茶店で」


女性はしばらく黙った。


もうよく分からなかった。


マスターは気にしていない。


注文を聞き、


静かにコーヒーを淹れる。


しばらくして。


女性が言った。


「実は来てみたかったんです」


「そうか」


「家で二人とも、この店の話ばかりするから」


女子高生が笑う。


「お母さん気になってたもんね」


「気になるわよ」


女性はマスターを見る。


「コーヒー教えたり」


夫を見る。


「Excel教えたり」


「うん」


「喫茶店ですよね?」


「そうだ」


マスターが答える。


やっぱり答えになっていなかった。


その時だった。


カラン。


ドアベルが鳴る。


老人だった。


「おう」


「おう」


マスターが答える。


老人は席に座る。


すると。


当然のようにコーヒーが置かれる。


「頼んでないぞ」


「知ってる」


女性が夫を見る。


夫は苦笑いする。


「いつものです」


「いつものなの?」


「いつもの」


女性はますます混乱した。


老人はコーヒーを一口飲む。


そして三人を見る。


「客か」


「娘と夫です」


女性が答えた。


「ほう」


老人は頷く。


そして女性を見る。


「初めてか」


「はい」


「変な店だろ」


「少し」


マスターが老人を見る。


「余計なこと言うな」


「事実だ」


老人は笑った。


女性もつられて笑う。


そして何気なく聞いた。


「お知り合いなんですか?」


老人が頷く。


「長いな」


「どれくらいです?」


「覚えてない」


「そうですか」


老人はコーヒーを飲む。


そして何気なく言った。


「昔はよく運転してもらった」


女性が首を傾げる。


「運転?」


「大型」


女性が固まる。


「大型?」


「大型」


老人は頷く。


「けん引も持ってるぞ」


女性がマスターを見る。


「え?」


マスターは黙ってカップを磨いている。


「本当ですか?」


「本当だ」


老人が答える。


「トレーラーも乗ってた」


「え?」


「大型も乗ってた」


「え?」


「積載車も運転できる」


女性は夫を見る。


夫も娘を見る。


娘も夫を見る。


全員同じ顔だった。


「聞いてない」


女性が言う。


「俺も知らなかった」


夫が言う。


「私も最近知った」


娘が言う。


老人が笑う。


「まだまだあるぞ」


「まだあるんですか?」


「ある」


女性は恐る恐るマスターを見る。


「マスター」


「なんだ」


「マスターって……何者なんですか?」


店内が静かになる。


老人は笑いを堪えている。


夫も興味津々だった。


娘も本を閉じて待っている。


全員の視線が集まる。


マスターは少しだけ考えた。


そして答えた。


「喫茶店だ」


老人が吹き出した。


夫も笑う。


娘も笑う。


女性だけが納得していない。


「絶対違いますよね?」


「喫茶店だ」


マスターはもう一度言った。


結局。


その日も謎は増えただけだった。


帰り道。


女性が夫に言う。


「あなたがExcel教わった話より」


「うん」


「大型とけん引の方が衝撃だった」


夫は苦笑いする。


「俺も最初はそうだった」


娘も笑った。


「次来たら、また何か増えてるかもね」


停車場の謎は、


今日も少しだけ深くなった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


実はここだけの話 このエピソード、外伝18の予定でした。

見直していたら1話飛ばしていました 笑


続きが気になりましたら、ブックマークや評価をいただけると筆者がとても喜びます。

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