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現場監督が異世界転生してクリティカルパスで魔王軍を解体する  作者: もしものべりすと


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第十二章 縦深防御の成立

俺の指揮の下、王国の防衛線は、目に見える速さで構築されていった。


 第一線は、街道沿いの森。倒木と土塁で簡易バリケード。エルフ偵察兵が遅滞戦闘で時間を稼ぐ。


 彼らは、姿を見せず、矢だけを撃つ。

 倒れた敵を確認したら、すぐに次の位置へ移動する。

 追いかけてくる敵を、また別の場所から撃つ。


 これを、現代戦の用語で「遅滞戦闘」と呼ぶ。

 時間を稼ぐことだけが、目的。

 勝つことではない。


 エルフたちは、千年の狩猟経験で、この戦術を即座に理解した。


 第二線は、丘陵地帯。ドワーフが石組みの堡塁を急造。


 ガロン親方率いる石工集団が、たった三日で、二箇所の堡塁を組み上げた。


 石垣の前には、簡易の堀。

 堀の底には、尖った木杭。

 城塞建設で学んだすべての知識が、防衛工事に流れ込んでいた。


 第三線は、ヴェスタリア辺境伯領の城塞。完成したばかりの、あの城。


 完成式の喜びも醒めぬうちに、城塞は、本来の役割を、果たすことになった。


 魔王軍は、第一線を突破するのに二日かかった。


 予想は一日。倍の時間をかけさせた。


 第二線で、さらに三日を稼いだ。


 その間に、王都から逃げてきた残党兵たちが、続々と辺境に到着。俺はそれを再編成し、戦線に投入する。


 戦況は、徐々に膠着状態に持ち込まれた。


「信じられん」


 ヴィルヘルム辺境伯は、戦況報告を聞きながら呟いた。


「壊滅寸前だった王国軍が、たった一週間で、こうも持ち直すとは」


 戦況図に駒を動かしていた老書記官が、ぼそりと呟いた。


「閣下……我が王国の歴史上、これほど死者の少ない戦は、ござりませぬ」


「儂の知る限り、ないな」


「敵の進軍は、確かに、止まっておりまする。しかも、我が軍の損害は……」


 書記官は、自分の作った報告書を、もう一度見直した。


「……四十名。それも、ほとんどが、軽傷です」


 四十名。


 通常、この規模の戦では、千人単位の死者が出る。


 それを、二桁に抑えていた。


 ヴィルヘルム辺境伯は、しばらく沈黙した後、深く溜息をついた。


「儂は、四十年、辺境で魔王軍と戦ってきた。その間、儂の指揮下で、三千人の若者を、死なせてきた」


 彼の声が、低かった。


「もし、四十年前に、田所殿が、儂の傍にいたなら――三千人のうち、二千人は、まだ、家族と共に暮らしておったかもしれぬ」


「閣下――」


「いや、貴公を責めるのではない。儂が、儂自身を、許せぬのだ」


 辺境伯は窓の外を見た。


 遠くで、第二線の煙が、薄く昇っている。


 俺はその時、城塞の物見櫓に立っていた。


 遠くで、煙が上がっている。第二線で、ドワーフたちが防衛戦を繰り広げている。


「閣下」


 俺は静かに言った。


「魔王軍の侵攻には、急所があります」


「急所……?」


「彼らの兵站――補給線です。あの規模の軍を維持するには、莫大な物資が必要です。武器、食料、そして魔力供給。それが、どこかに集中している」


「そんなことが分かるのか」


「現代知識の応用です。私の世界には、戦時の兵站を分析する学問があります」


 俺は地図を取り出した。


「魔王軍の進軍経路を、過去一月分、全て地図に落としました。各部隊の動きの規則性を分析すれば、どこから物資が流れてきているか、ある程度予測できます」


 俺は地図の一点を、赤いインクで丸を描いた。


「ここです。死霊回廊の中央。ここに、彼らの『魔力供給拠点』があります。ここを潰せば、魔王軍の不死能力が失われる」


 辺境伯と、王宮魔術師長は、息を呑んだ。


「魔王軍の、クリティカルパスです」

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