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俺のスキル【配信】コメント欄が戦国武将だった~秀吉の教えでどん底から成り上がる~  作者: 清松
第三章 夏休み

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海へ⑧

 突然の提案にも彼は驚きを示すことはなかった。

 こちらを探るように見つめるだけ。

 ただ探ると言っても怪しんでいるわけではない。


(……何かあるのだろうと察してあたしを、心配してるんだ)


 この子と出会ったのは一ヵ月ぐらい前のこと。

 教会の奉仕作業にやって来た際に初めて顔を合わせた。


『少し安定はして来たけどまだ予断を許さないってとこかな』


 冒険者として僧侶として様々な人間にを見て来た。

 だからこそ身なりや言動を見れば大体の状況に察しはついた。

 そんな状態でも奉仕作業に参加しているのは感心だと褒めれば、


『や、下心ありきです。覚えが良くなるかなって』


 内緒ですよ? と彼は笑った。

 実際そういう面もなくはないのだろう。でもその心を一番占有しているものではない。

 ささやかな善行で誰かが笑顔になることを一番、尊んでいる。


(そこからだ。本格的にこの子を知りたいなと思ったのは)


 色々な人に話を聞いてまず思ったのがよく持ち堪えたなということ。

 彼が以前所属していたパーティの人間にも話を聞く機会があったが、


『……正直どっかで野垂れ死ぬんじゃないかと思ってた』


 決まりが悪そうに言いつつも彼の現状に安堵しているように見えた。

 別れ際に告げられた「ありがとう」の一言がずっと心に残っていたそうだ。

 ないない尽くしでそれでも人として善く在ろうとする心根。


(それはあたしには持ち得なかったもの)


 気付けば何かと世話を焼くようになっていた。

 シルバ―推薦の話もそう。純粋な善意だった。

 教えてくれたスキルの内容と彼が組んでいる女の子の実力。

 それを考えれば十分やっていけると思った。


 ――――その結果がアレだ。


 用事を装って近くまで行き依頼が終わったであろう様子を見に行くつもりだった。

 それがどうだ? あの子は異常事態に巻き込まれていた。

 組織だった行動を取るモンスター。

 現状から逆算して考えられる敵戦力を鑑みれば逃げる以外の手はない。

 逃げたところで一体誰があの子を責める?


(だけどあの子は逃げなかった。“あたし”と違って)


 村に留まり必死で危機を訴え脅威に備えた。

 僅かな時間しかなかったのに出来る限りを尽くした。

 必死に指揮を飛ばすその姿を見つけた瞬間の筆舌に尽くし難い感情は今も覚えている。


(迷惑なのは分かってる。けどもう、我慢が出来なかった)


 ルミエラで人に尽くす彼を見て限界に達してしまった。


「少年もさ。薄々気付いてると思うけど……あたしも、色々あるんだよ」


 思い出すのは村から帰った後のこと。

 教会を訪れた際のやり取りだ。


『……本当にごめん。結果的に君の命を無駄な危険に晒してしまった』


 謝罪の言葉を口にした瞬間、目の色が変わった。

 そこからの彼はさながら聖職者の如き振る舞いだった。


『自分を許さないということは“他人にも”同じだけの責任を求めるということだ』


 何て優しく何て厳しい言葉だろうか。

 困ったことに何一つ反論出来なかった。


『でも過剰な厳しさはそれはもう形の違う甘えでしょう』


 心臓に刃を突き立てられたような気分だった。

 あたし自身、頭では分かっている。あれはどうしようもなかったと。

 だがどうしたって拭えない後ろめたさがあるのも事実。

 だから罪とし抱えて生きて来たがそれを甘えであると一刀両断された。


(この子は何も知らない)


 だが知らぬままあたしの胸の奥深くを刺激したこの子の傍でなら。

 何かしら答えを見つけられるんじゃないか。

 そう思ったからパーティへの加入を願い出たのだ。


「詳しくはその、何も言えないけど」

「……俺たちのパーティに入っていればその“色々”が良い方向に行ける?」

「良い方向かは分かんない。でも、進展はあるんじゃないかなって」


 我ながら舐めたことを言っている自覚はある。

 戦力として貢献出来る自負はあるがそれはそれ。

 訳の分からない私情に無関係の子を付き合わせようとしているのだから。

 自己嫌悪が胸を苛み俯きそうになるが、


「分かりました。じゃあこれからよろしくお願いします」

「……良いの?」

「ええ」

「無理、してない? 迷惑じゃない? だってこんな」


 矢継ぎ早に出て来る言葉を遮るように彼はあたしの唇に指を押しあてた。


「戦闘以外はからっきしで面倒見てくれと言って来たリゼ。

腹に一物抱えて色々利用して俺に接触して来たティア。

んでクソ雑魚の俺――――わぁ、改めて考えると何とも言えねえパーティだあ」


 なら、今更だと彼は笑う。


「まったくそりが合わない相手なら困るけどそんなこともないですしね」

「……じゃあ、お願いして良いかな?」

「喜んで」


 差し出された手を握り締める。

 体温が低いのだろう。冷たい手だ。

 だけど重ねた肌から伝わるその心はとても温かった。


「さて。それじゃ帰ったら四人でバリバリ稼ぎましょうか!!」

「はは、うん。任せてよ。バッチリ稼がせたげる」

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― 新着の感想 ―
手が冷たい人は心が暖かい。 昔からの言葉ですね。 彼女の過去に何があったかは謎ですが。 それでもシスター(叡智な)を続けてきたのはきっとこの為だったんだな。
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