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俺のスキル【配信】コメント欄が戦国武将だった~秀吉の教えでどん底から成り上がる~  作者: 清松
第二章 暁は銀色

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石ころの価値

二話投稿してます。

 最初に彼を見つけたのは圧し潰されそうな曇り空の日だった。

 まるで見るべきところのない路傍の石ころ。


『今、世界で彼を見ているのはきっと私だけ』


 何となくそんなことを考えた。

 その時はそれだけ。視線を外し立ち去った。

 二度目に彼を見かけたのはそれからしばらくしてのこと。

 酒場で食事をしている時だ。


『――――お前はちゃんと気持ちを伝えるべきだ』


 あの時よりはマシな顔色をしていた。

 けれども見すぼらしい格好で、とても余裕があるようには思えない。

 なのに出会ったばかりの見ず知らずの女……リゼに心を砕いていた。


『身の程知らずね』


 と思った。

 明日も知れぬ石ころが何をと。

 その夜は眠るまでずっと彼のことを考えていた気がする。

 三度目はギルド。意識して探していたわけではない。


『……ありがとうございます』

『いえそんなお礼なんて』


 自分を気遣う受付嬢、名前はレナだったか? に礼を述べている場面。

 泣きそうなのに、この上なく幸せそうな顔をしていた。

 暇だし、と。そんな理由でその日は彼を観察してみることにした。


『――――いっぱい楽しいことをしましょう』


 一日観察して気付いた。

 理由は分からないがどうやら私はあの石ころに興味を抱いているらしい。

 ならば理由を知るためにも観察を続けよう。

 その日を境に私は意識して彼を追うようになった。

 一ヵ月もする頃には間近で観察出来る状況を整えられた。

 目論見は見事、成功し一時的に私たちはパーティを組むこととなった。


未来(さき)を望めばこそ、俺は戦うんだよ』


 モンスターが組織だった行動をしている。

 多少の驚きはあったが私の興味はそちらより彼に注がれていた。

 リックという村の子供にそう語る彼。


『正直にスキルの内容を吐かないなら協力出来ないと言うならその通りにしよう』


 自らの秘密。その一端に触れられてもまるで揺るがない彼。


『そこ! 突出するな! 複数で一匹を確実に仕留めろ!!』


 今直ぐにでも飛び出して村人と共に剣を振るいたい。

 そんな気持ちを必死で押し殺しながら指示を飛ばす彼。


『皆、助かったんだからそれで良いさ』


 言葉通り、これまでの対応なんかまるで気にしていなさそうな彼。

 ずっとずっと観察を続けていたのに分からないことばかり増えていく。


(私は一体、どうしたいのかしら)


 あの戦いから二日後の夜。村では盛大な宴が開かれていた。

 功労者の一人である私も厚く持て成されているがどうでも良い。

 だがあしらっている内に気付けば彼の姿を見失ってしまった。

 一体どこにと輪を離れ視線を彷徨わせる。


(居た)


 宴の喧騒から少し離れた民家の屋根の上。

 片膝を立てて座りながら宴の様子を――いや、村人たちを嬉しそうに眺めている。


(……この光景を作り出したという誇らしさ、ではない)


 自分が成し遂げたことをまるで誇っていないわけではないだろう。

 ただそんなことが霞むぐらい別のことに心が占有されている。

 村人たちの幸せな顔だ。彼は他人の幸福が嬉しくて嬉しくてしょうがないのだ。


「お、ティアじゃん。どうした?」


 私も屋根の上に赴き彼の隣に腰を下ろす。


「騒がしいのはあまり得意ではないのよ」

「そっか」


 深く問うこともなく彼は素直に私を受け入れた。

 村人たちを見つめる彼と、彼を見つめる私。

 特に会話のないまま時間が流れていく。


「……何故、何も聞かないのかしら?」


 穏やかな沈黙に居心地の悪さを覚え、そう切り出す。

 彼は気付いている。私が昇格試験を利用して接触したことに。

 なのに何故、何も言及しないのか。

 明言はしないが察しの良い彼には私の言いたいことは伝わっているはずだ。

 そこでようやく視線が外れ温かな黒い瞳が私に向けられる。


「それを言うならティアもだろ?」


 スキルのことだろう。けど、私の興味はそんなところにはない。

 じゃあ何なのかと言われれば答えに困ってしまうけれど。


「……」


 何も言わずじっと彼を見つめる。

 降参だと小さく手を挙げ彼は言う。


「俺の何がそんなに興味を引いたのかは知らんけど正直そこはどうでも良い」


 だって、と彼は笑う。


「ティアは俺の馬鹿に最後まで付き合ってくれたじゃないか」

「それは、だから」

「俺は君に助けられた。どんな意図があったとしてもその事実が揺らぐことはない。」


 だから今は何も聞かない。

 話したくなったら話せば良い。

 そう言って彼は少し遠くの喧噪に視線を戻した。緩む頬、優し気な眼差し。

 さっき同じ顔。自分でも理由は分からない。けど、その横顔から目が離せなかった。


「――――」


 今も石ころだという評価は変わらない。

 でも、どうしてか私はその石ころが今まで見たどんなものより美しく思えたのだ。


「ああでも、何か礼はしなきゃだな。助けてもらっといてこれだけじゃあんまりだ」

「別にそんな……いえ、そうね。なら一つ」


 だから、もう少し近くで眺めていたくなった。


「正式にパーティに入れてくださる? 優しい瞳のあなた」

「喜んで」


 知りたくなったのだ。


(真と。あなたの名前を呼ぶ度に胸が熱を帯びる理由を)


 あなたが私の名前を呼ぶ度に胸が弾む理由を。

これにて二章終了。お付き合い頂きありがとうございます<m(__)m>

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― 新着の感想 ―
観察対象がいつの間にか・・・ 良いですねぇ。 その石ころは磨けば磨く程に輝く逸材ですぞ。
うわ、何考えてるんだろこの子って思ってたんだけどベタ惚れやん
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