戦支度
気取られぬよう何でもない風を装い下山。
その足で村長宅に向かい主要な人間を寄り合い所に集めてもらう。
どこかで見ているにしても人の細かな機微までは分かるまい。
>@Super_monkey
む。それが出来るならもっと状況は最悪に近かったであろうよ。
今は時間が惜しい。
全員が集まったところで即座に俺の危惧を打ち明けた。
だが、
「ううむ……モンスターが人間のような行動を取るなど」
村長の反応が全員の代弁だろう。
疑わしいのは百も承知。外れていたら本当に申し訳ない。
だが当たっていれば大惨事だ。せめて一晩だけでも臨戦態勢を。
必死に訴えかけるが反応は芳しくない。
>@Six-Tenmaou
であろうさ。備えるにも物を使う。体力も使う。ただでさえモンスターどものお陰で窮しておるのだ。
脅威も消えてこれから立て直そうという時に無駄なことはしておられん。
息遣いすら聞こえる“最悪”を並べ立てこ奴らの危機感を煽り立てるしかあるまいて。
そうするしかないのか。さっきも述べたが今は一分一秒でも時間が惜しい。
苦いものを感じながら口を開こうとしたところで意外なところから助け船が出された。
「……村長、備えるべきだと思うぜ」
「リック!?」
リックだ。
驚きに思わず視線をやると彼はキッと俺を睨み付け言った。
「別にお前らに気を許したわけじゃねえ!」
ただ、と渋い顔で続ける。
「コイツらがわざわざそんな話をするメリットがどこにもないだろ。
俺らはしっかりと巣穴が潰されたのを確認した。後は村長がサインするだけ。
さっさと帰って金を貰えば良い。仮に推測が当たってたとしてもコイツらには関係ない」
……実際村が壊滅した情報が後から届いても咎められることはないだろう。
俺がギルドに何も報告しなければ別件でそうなっただけと処理される。
いや仮に報告しても戯言と受け取られるか、進言を受け入れなかった村に責があると判断される。
「……甘いわ。こ奴が儂らから余計に金を毟ろうとしておるかもしれんじゃろう」
即座に村長が反論して直ぐにしまったという顔で俺たちを見た。
(まあそんな気はしてた)
表面上は友好的でも根っこの部分の排他性は変わるまい。
リックを見ればそれが分かる。子供がそういう態度を取るのは大人の影響以外にないだろう。
「それは」
リックが言葉に詰まるが俺からすれば良い流れだ。
「なら血判つきの誓約書を書きましょう。内容は俺たちが受け取る報酬の返還。
誓約書を提出すればギルドに手数料は返って来ませんがそれでも半分以上は返って来る計算だ。
これならあなた方に損はない。だって既に巣穴は潰されてるんですからね」
最初からこれを言い出しても通らなかった。
あっちが明確に俺たちの前で疑義を表に出してくれたからこそだ。
>@Super_monkey
今のは良かった。現状まだ恩人であるおみゃあらを目の前で疑ったという負い目。金が浮くという欲目。
この二つが絡み合えば一日ぐらいはという方向に流れは変わろうぞ。
モンキーさんの言葉通りの流れで話し合いはまとまった。
決定した内容を箇条書きにするとこう。
一、村の物資を使わない備えなら俺たちが好きにして良いこと。
二、使う場合は金を払うこと。
三、今日は早めに晩飯を済ませ女子供ら非戦闘員を一か所に避難させること。
四、戦える者は飯を済ませたら夜明けまで武装し警戒に当たること。
五、いざ事が起きたのなら俺の指揮に従って動くこと。
>@Six-Tenmaou
まあまあの成果よ。甘くはあるがな。
>@Super_monkey
素直に褒めればええじゃろうに……。
そうと決まれば早速、行動だ。
村長らが出て行き残されたのはリゼとティアと……え、リックも?
「……やれることがあるなら手伝う。勘違いするなよ。村を守るためだ」
「それで良い。ありがとう」
「だから!」
「じゃあ早速頼む」
指示したのは散策を装った周辺の調査。
敵が攻めて来ると仮定した上で山から来る以外でどこが臭そうか。
リゼの感覚頼りで当たるかどうかは分からないが参考にはなる。
「任せなさい。ほら、行くわよ!!」
「……ああ」
リゼがリックらを伴い残されたのは俺とティアだけ。
彼女にも当然、仕事はある。
「ティア、土魔法で壁を作り村を覆うことは出来るか?」
確か陣を刻み設置式で発動するタイプがあったはず。
中身はなくて良い。そうと見せかけるだけで十分だ。
俺の言葉にティアは不思議そうに首を傾げる。
「何の意味が?」
「敵の襲撃ルートを絞る」
統率者以外の知能は恐らく通常のモンスターと遜色ない。
であれば壁を壊すより分かり易く開いている道に突っ込む可能性が高い。
外れてもそれはそれで良い。二の矢、三の矢がある。
下山中にモンキーさんとシックスさんにたっぷり策を出してもらったからな。
「なるほど。ええ、見せかけだけというなら私でも可能よ」
「なら」
「けどあなたの助力があればしっかりとした壁も築けるわ」
「え?」
そこでティアは薄く笑みを浮かべた。
「気付いていらっしゃらないようだけどあなたのスキル“魔法も強化される”のよ」
「――――」
通常の強化魔法と同じで肉体だけだと思っていた。
魔法が使えないリゼにしか使ったことがないから分からなかった。
これも知られればマズイ情報だが、
「そうか。ならスキルで手伝うよ」
今はどうでも良い。
「……何か、ないのかしら?」
「正直にスキルの内容を吐かないなら協力出来ないと言うならその通りにしよう」
ティアの目が僅かに見開かれた。困惑、だろうか?
「いえ、今は良いわ。じゃあ早速作業に取り掛かりましょう」
「ああ」




